小説 | ナノ


  知らぬが仏



※R15


「ねえねえペトラちゃん聞いたー?」


「もちのろんですよハンジさん!!」


「(この子って時々若いのかそうじゃないのかわかんなくなるなー…)」


リヴァイの根城である古城に何故かやってきたハンジ。
そんな彼女の手にはチラシのようなものが握られていて。
ハンジの言葉は”何を”とは明言していなかったが、ペトラには彼女が一体何を言いたいのかが伝わったようだ。
そんな興奮気味の彼女らに疑問符を浮かべるのは、兵士長のリヴァイに新兵のエレン、そしてまた何故かここにいるエルヴィンとハンジに先に行っているように言われたリョウだった。
リヴァイは自分から聞き出そうとはせず、ただ静かにエレンに視線を向ける。
自分から声をかけるのは面倒なのだろうと理解したエレンは、「俺も声かけたくないのに…」と想いながら渋々ハンジに声をかける。


「あの…ハンジさんにペトラさん、さっきからいったい何を…」


「よくぞ聞いてくれたエレン!!」


エレンの言葉に勢いよく振り返ったハンジは、彼の眼前に手に握っていたチラシを突き出す。
驚きながらもとっさに受け取ったそれは彼女が握っていたせいかくしゃくしゃで。
ぱんっ、と簡単に伸ばしたエレンは、そこに書いてあった文字を読み上げる。


「副兵長総受けプチオンリー…?」


エレンの言葉に同じように疑問符を浮かべたリヴァイとエルヴィンもそのチラシをのぞき込むが、そこには文章しか書いておらず。
開催日やら、ブースを示している図形が簡単に書かれ、エレンが読み上げた文字はとくに強調されているのか、カラフルに彩られていた。
男3人は一体なんなんだと依然覗き込み続けるが、たった一人、リョウだけが絶望したかのような表情を浮かべ、近くにいたハンジに掴み掛った。


「いいいいいいいい一体いつの間に!!!?」


「つい最近かな!いやあね、前まではリヴァエレとかエルリヴァとか、そういうのばっかりだったんだけどさ」


「名前さんが副兵長になってからは皆こっちにチェンジしたんですよ!」


「こっちって…名前さん総受け…?」


「「はい/うん」」


「こ こ で も か こ ん ち く ち ょ う ぉ ぉ ぉ お お お お お お お お !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ずるり、とハンジの肩から手を放し、地面に手を叩き付けるように嘆き続けるリョウ。
それはまるで、「この世界が終わります」と真面目に宣告されて嘆いている人間そのもので。
その尋常ではない様子に眉間に皺を寄せたまま、リヴァイが口を開いた。


「だからなんだ、その”そううけ”っていうのは」


「もー、リヴァイったら、意味が分からないからイントネーション可笑しい!!」


げらげらと笑い始めるハンジの鳩尾を容赦なく蹴り倒したリヴァイは、床にはいつくばり痙攣している彼女を放置してペトラのほうに視線を向けた。
その鋭すぎる視線に、先ほどまで興奮気味だった彼女は顔を青くしながら、リヴァイから視線を外した。


「その、そ、総受けっていうのは…」


誰が相手でも完全受け身、ってことだよ☆


結局言い淀んだペトラの代わりに、這いつくばったままハンジが答えた。
その一瞬の隙にペトラは仕事を思い出したといい逃げするように部屋から逃亡。
静寂に包まれたその部屋には、リョウが鼻水をすする音と、ハンジが咳き込む声が響いた。


「…結局、どういうことなんですかね」


ハンジの言葉も理解できなかったらしいエレンは、泣きすするリョウと視線を合わせるようにその場にしゃがみ込む。
それに気づいたリョウは顔を上げ、つまりな、とエレンに解説した。


「名前さんが仮想の話の中で誰かと付き合ったりして、その時彼女は完全な受け身になるって話だ」


「…そういう意味だったんですか!?」


「そ…ま、所詮は二次創作だから、すべて妄想の産物だけど」


ぐすぐすと泣き続けるリョウの心を砕くかのように、リヴァイの鳩尾への蹴りから復活したハンジは、今回のプチオンリーの人気を興奮気味に語りだす。


「今回はねー、やっぱりリヴァイ×名前が人気みたいだね!団長×名前もあるしエレンの年下攻めも、私×名前もあるんだよー!!」


「…ずいぶん嬉しそうじゃねえか、ハンジ」


「そりゃ嬉しいよ!だって現実にはならなくても私と同じことを夢見ている人はいるってわかったんだから!!」


これそのサンプル!と差し出したハンジの手にあった数枚の紙は、どうやら文章の原稿だったらしい。
握られていた訳ではなかったようでくしゃくしゃではない読みやすいそれを、リヴァイとエルヴィン、エレンの三人で読んでいく(ちなみにリョウは既に原稿の一部が完成していることに再び絶望していた)。


『は、んじ、さん…?』
「あぁ、可愛いよ、名前!とてもかわいい!」
『い、嫌だっ、放せ!私はモルモットじゃないっ!!』
がちゃがちゃと無機質に揺れる鎖は、彼女の細腕に似合わず太く、決して壊れることはない。彼女の白い体には白いYシャツが申し訳程度に引っ掛けてあるが、それ以外は何もかもがはぎ取られていて。代わりに両手、両足首、さらに首に鎖に拘束具が嵌められていた。
嫌だと抵抗する名前の白い腕に注射針を刺し、薬品を注入してその自由を奪う。
『ぅ、ぁあっ…』
「苦しい?それとも気持ちいい?ふふ、最近開発した麻酔と媚薬の混合薬品なんだ…これを巨人たちにやる前に、名前でどうしても試したくって…!」
『ふっあぁ、あつ、いっ』
「うんうん、今楽にしてあげるからね!」
そう笑ったハンジは、抵抗できずぐったりと拘束具に体を預けている名前の体に触れる。初めは触れるか触れていないかわからない程度に、焦らし続けた。
『やぁっああんっ!』
「うーん、ちょっと媚薬が多すぎたかな」
『ふっうぅん…あっ』
「あぁでも、やっぱり可愛い、試して正解だったよ」
ハンジの手が触れるたびにひっきりなしに甘い声を上げ続け涙を流す名前に、彼女の口角も上がる。焦らすように上半身に触れ続けていたハンジの片手は、ツンと桜色が主張している白くやわらかなふくらみへ、そしてもう一つは、温かく甘くとろけ、刺激を求め続けている恥丘へと、


ビリッ、バリッ、


「あぁっ!何てことするんだいリヴァイ!!」


ハンジの声も聞こえぬと言わんばかりに破り続けるリヴァイ。
エレンには刺激が強すぎたのか顔を真っ赤にしており、エルヴィンに至っては「…これほどまでに追いつめていたのか…」と兵団の改革案を模索していた。
潔癖症であるリヴァイらしからず、まさに木っ端微塵にバラバラにしたそれを何の躊躇いもなく床に落としたのち、今まで聞いたことがないくらい低い声を唸りだす。


「誰だ…」


「えっ?」


「こいつを書いたのは誰だって聞いてんだ…!」


今にも人を殺しに行きそうなリヴァイはハンジの顔面をつかみすさまじい力で握ったため、掴まれた本人はいだだだだだとただ悲痛な声を出すしかなかった。


ガチャ


『リヴァイさん、書類を持って…何してるんですか?』


ひらひら、と書類を風になびかせながら入ってきたのは、渦中の人物である名前で。
部屋の中のただならぬ雰囲気に、ただ首を傾げるしかなかった。



(/////)
(?エレン、どうしたの?顔紅いけど…)
(なななっ、なんでもありません!(うぅっ、恥ずかしくて顔を合わせられない…!))
(おい、名前)
(、なんですか?)
(誰にもなにもされてねぇな?)
(?えぇ、何も…)
(…ならいい)
(?)
((ハンジ?エルヴィン?エレン?ふざけんな))
((こいつに目を付けたのは、俺だ))
後日、プチオンリーが無事開催されたかどうかは当事者のみぞ知る


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