小説 | ナノ


  まだ知らぬ子供達



※変化した呼び名の続き


「今日は特別臨時講師として名前副兵長に来ていただいた!各自彼女から吸収できるものはすべて吸収しろ!そこでお前たちの生死が分かれることもある!!いいな!?」


「「「はい!!」」」


あぁ、元気だなとそんなことをぼんやりを考えながら、名前は訓練兵団、第104期生の面々を見下ろす。
それなりの期間を経ているため生産者に回されるような者はいないが、その瞳の中に、いずれ巨人と戦わなくてはならないことへの恐怖や、畏怖、自身に向けられている尊敬のまなざしなど、いろんなものがあることが分かる。
教官からの紹介を終え、一言どうぞ、と場所を開けられる。
特にないんだけれど…と心中で溜息をつきながら口を開いた。


『初めまして、副兵長の名前です。皆さんには体術や剣術をいったものを中心に指導していくことになります。何かわからないことや質問したいことがあれば何でも聞いてください』


無難な挨拶を終えたところで、訓練が始まる。
2人一組でペアになって訓練に勤しんでいる彼らを見て回る。
自分がいるかせいかどうかは分からないが、とりあえず皆一様に訓練にちゃんと集中しているようだ。


『(とりあえず見る限りサボっている人間はいない、が…)』


おそらく自分た教官が見ていないところでサボっている人間はいるのだろう、とそんなことを内心思いながら見て回る。


『あ、君』


「は、はいっ!」


『そこはさっきみたいにじゃなくて…君、ちょっと掛かってきてくれる?』


「あ、はい!」


名前に声をかけられた2人はぼふ、と顔を赤くした。
彼女は首を傾げながらも彼らに指示を飛ばせば、2人組の体の大柄な方は先ほどと変わらない勢いで名前に突っ込んでいく。
周りはその姿に目を奪われ動きを止めたが、当の本人はどこ吹く風。
自身に向かってきた、彼女よりも一回りも二回りも大きい男を呆気なくとらえ、彼の所持していた短刀を奪い取ってしまう。
挙句の果てに彼は倒され、その鍛えられた体を地面に叩き付けた。


『大切なのは自分の力を使うことじゃなくて、相手の無駄な力を使うこと』


「無駄な力…」


『勢い、のほうが分かりやすいかな。相手の流れに合わせて体を使うようにしてね』


「はい!!」


きらきらと尊敬のまなざしを向けてくる彼に苦笑を浮かべながら、倒れてしまった彼に手を差し伸べる。
ぐい、とその体に似合わない力で彼を引き起こした名前は少し申し訳なさそうに笑った。


『ごめん、痛くなかった?』


「あ、だ、大丈夫です…」


『ん、良かった』


じゃあ、頑張ってね、と再び見回りを始めた彼女に倣って、動きを止めていた周りも慌てて動き出す。
そんな彼女を見て居た教官は緩く笑みを浮かべ、懐かしそうにその目を細めた。


「相変わらず優秀だな、あいつは」


その後まもなく体術の訓練が終わり、昼食となった。
本部に戻ろうとした名前を教官が引き止め、訓練兵たちと一緒にとっては、と提案してきた。
今すぐ戻って何かしなければならないという急ぎの用もないし、と、本部で機嫌を悪くしているリヴァイのことなど知らぬ彼女は彼の言葉にうなずき、食堂へ移動する。
昼食の間に何か聞きたいことがあれば質問するといい、と教官が言えば、すでに席についていた名前の周りに訓練兵たちが集まって来た。
彼らの動きに呆気にとられた名前は、その大きな目をぱちくり、と動かした後、はは、と苦笑した。
いくつか技術的な質問が飛び交っていたがその質問が尽きたのか、少しずつ彼女の私情へと。


「あの、名前さんは東洋人ですか」


『、完全なじゃなけど、東洋の血は入ってるよ。君もかな?』


名前がそう答えれば、質問してきた彼女は表情こそ変えないものの嬉しそうな色を浮かべる。
ここの東洋人はもうほとんどが絶滅したと聞いた。
向こうも日本人は稀だ…ここもか、と少し悲しくなる。


「彼氏はいるんですか!?」


「な、おま!!」


『居ないよ?』


質問してきた男子に「お前なんてことを聞くんだ!」と言わんばかりの視線が向けられたが、その質問にあっさりと答えた名前の言葉に、隣に座っていた男子がずい、と迫った。


「いないんですか!?」


『あ、うん…』


「(うおおおまじか!居るかもって諦めてたのに…!)」


彼のその向こうにいた先ほどの黒髪の女の子が、彼の肩をつかんで名前から引きはがす。
そしてその耳元で、ぼそ、と宣戦布告をした。


「エレンでも名前さんは渡さない…」


「なっ、何言ってるんだよミカサ!」


彼らの一連の行動を見ていた名前は、黒髪の彼女に小さく笑いながら声をかけた。


『ミカサちゃん、ていうんだね』


「…はい」


あ、ミカサ嬉しそう、とミカサの隣に座っていた金髪の男子がほんわかと言葉にする。
名前は、あぁ、そういえば彼らの名前を知らないな、とスープを一口飲んだ。
目の前の器に視線を落とした名前にわずかに頬を染めた隣に座った彼が声をかける。


「あ、あの、俺、エレン・イェーガーって言います」


『、イェーガー…?』


「?はい!」


ぴたっ、と動きを止めて自分の名字だけを復唱した名前に疑問を抱きながらも、名字でもなんでも呼んでくれたことがうれしかったのか、彼はうれしそうな声色で返事をする。
名前の視線は隣の彼にくぎ付けになったが、残念ながら名前の脳裏には彼の姿ではなく、彼と同じ苗字だった、すでに死んでしまった仲間が浮かんでいた。


『(イェーガー、元帥…)』


会うたびに自分を娘のように扱ってくれた彼を思い出し、少しの間ぼんやりとしてしまったため、次々に挨拶をしてくれた彼らの一部を聞き逃してしまった。
何とか笑ってその場をしのいだ名前の脳裏に残った名前は結局、後にトップ10で訓練生を卒業する彼らと金髪の少年アルミン、そしてユミルのものだけだった。



(この中から一体何人が)
(調査兵団を志望し)
(何人が)
((生き残るのだろうか))


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