小説 | ナノ


  今はまだ、



※僕は君だから選んだの続き

お母さんに三成君のことを報告して暫く、学園に業者が入るということで一週間の休校となった。
何でもこの間政宗と幸村君が暴れたのが原因らしい。
原因の2人は学園長直々にお叱りを受け、今回の修繕の人員として借り出されている。
と、いうわけで。


『今回は政宗いないよ』


「ふふっ、相変わらずやんちゃねぇ」


「でもまぁ、元気そうで何よりだ」


一週間も休みがある、とお母さんに連絡すれば「じゃあ一回帰ってきなさいな。三成君にも会いたいし」と返され。
あれよあれよと言ううちに家についてしまった。
家は政宗の実家に近いところにあってそれなりに賑わってはいるが、学園は首都圏に近い。
必然的に離れ離れになってしまい、実家に帰ってくるのは久しぶりだった。
私の隣にいる三成君はガチガチに緊張していて、いつもよりも表情が険しい。
これがただの初対面だったらいつもと同じ調子でいられるのだろうけれど、生憎今回は私の両親。
二人が三成君に会いたいといっている、ということを告げれば素直に頷いてくれた。
元々直接挨拶に行く、というようなことを言っていたからそのつもりではあったのだろうけれど。
ごくり、と生唾を飲み込んだ三成君に思わず苦笑が浮かぶ。
暴君や凶王と恐れられている三成君でもこんなに緊張することがあるのか。


『紹介するね、眷族になってくれた石田三成君』


「石田三成です、はじめまして」


「はじめまして、名前の母です」


そんなに緊張しなくていいのよ、と笑うお母さんに対して、お父さんは無表情で三成君のことを見ている。
どうかしたのかと不安になったけど、お母さんがなんでもないと笑ったから、とりあえず二人を見守ることにした。
リビングで二人の睨み合い(?)が続くこと数分。
お父さんの無表情が解け、漸く朗らかな表情が浮かんだ。


「…うん、いい人を選んだな、名前」


『お父さん…』


「挨拶が送れてすまないね。名前の父だ」


「いえ…こちらこそご報告が送れて申し訳ありませんでした」


「いいんだよ気にしなくて。それよりも名前は無理しがちだから、どうかよろしく頼むよ」


お父さんの言葉に、「この命に代えても」、と頭を下げる三成君。
そんな大袈裟な、と私がわたわたしているとテーブルをはさんだ向こう側からお父さんの手が伸びてきて。
わしわし、という効果音がしそうな勢いで頭を撫でられる。
もともとセットだなんてそんな大袈裟なことはしていないけれど、珍しく髪をおろしていたから少し乱れた。


「いいんだよ。名前みたいな存在は守られるためにあるようなものなんだからな」


「私も同じだったのよ?女吸血鬼は希少価値が高いから、常に誰かが守るように一緒だったしね」


『そう、なんだ…』


でも私は、そんな誰かに守られて、平然としていられるような性格じゃない。
自分のせいで誰かが傷つくのは耐えられない。


「私は怪我などしない」


お前がそう、望むのなら


三成君の言葉に頬が緩む。
あぁ、そうだ、三成君はそう簡単に怪我をするような軟な眷属じゃない。
二人で笑い合っていると、向こう側のお父さんが口を開いた。


「三成君、君が名前の眷族になることは認めるが…」


『「、?」』


どこか含みのある父さんの言葉に首を傾げる私と三成君。
お母さんが「あら可愛い」といっていたけどそんなことは私たちには届かなかった。
ただ、お父さんがなんと言うかを待ち構えていた。


「まだ、名前との結婚を認めたわけじゃないからな!」


『!?何言ってるのお父さん!?』


けけけけ結婚だなんて!
私達まだ高校生なのに一体何を言ってるんだこの父親は!
なんて慌てている私に対して、隣に座っている三成君は黙ったままで。
…三成君がこうも冷静なのに、私が一人だけ慌てて…恥ずかしい…
思わず膝立ちになった体制を戻して、すとん、と正座する。


「まだ、今はそれで構いません」


『ん…?』


「…ほう」


『?、??』


なんだかお父さんと三成君だけで会話が成立しているような…?
真正面に座っているお母さんに視線を向ければ、まぁ見てなさいと目で言われる。
見てなさいといわれても、それで一体どうすればいいのか分からない。
小さく息を吐いて、とりあえず二人の動向を見守ることにした。


「いずれ認めてもらいます」


「……」


「だから、」


だから今は


「名前の周りにいる邪魔な奴らを排除することに徹します」


『何言ってるの』


「期待してるよ三成君」


同 調 し ち ゃ っ た
ぽかん、と二人を見やる私、お母さんは楽しそうな表情を浮かべていて。
はっきり言って状況が上手くつかめない私に、三成君が語る。


「いいんだ分からなくて。私が名前の傍に居ればどうとでもなる」


「そうだ名前、とりあえずお前は三成君に守られていなさい」


「認めてもらえたようで良かったわねぇ!さ、お昼ご飯にしましょ」


一緒に作るわよ!と意気込んでいるお母さんに言われるままリビングを後にする。
残されたお父さんと三成君がどんな会話をしているのかは、分からなかった。



(…とりあえず良かったのかな)
(ふふ、お父さん、気に入らない眷属だったら突き返すつもりだったのよ?)
(つ、突き返すって…)
(でも気に入られたみたいで良かったわぁ)
(……(何もないといいけど))

(そうだ三成君、後でアルバム見ないかい?)
(アルバム、ですか)
(小さい頃の名前の写真があるんだ。どうかな?)
(!!是非!)
夢主のお父さんは親バカですが同じくらい奥さんとラブラブです


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