小説 | ナノ


  この手は君を守るために



※彼女の隣にいるのはの続き

「名前、そろそろお前にも眷族をつけようか」


『眷属?』


「そう。悪いやつから名前を守ってくれるパートナーよ」


『じゃあ、私よりも強いの?』


「…確かに、そうじゃないと勤まらないよな」


「あら貴方、そしたら小早川さんちの金吾君じゃ…」


お父さんとお母さんが私の頭上で話し始める。
何について話しているのか、ということは分かっている。
金吾君を私の眷属にするかどうかを話し合っているのだろうけれど、私の意見では彼を眷族にして欲しくない。
純血種の眷属になるということは、高い地位を手に入れるとともに、それ相応のリスクを負うことになる。
けれどはっきり言って、金吾君に眷族が成し得るとは考えられなかった。
…だって、


ずべしゃ


「ふっ、ぅえぇえええぇえ」


『泣かないで、金吾君』


「うぅ、名前ちゃん…」


はっきり言って、彼は誰かを守るような部類ではないから。
今こうして遊んでいても、金吾君は何もないところで転んでしまっている。
一緒に遊んでいた政宗なんて呆れ顔でその場に佇んでいた。


「おいおい、そんなんじゃ眷属になれねーぞ」


「う゛っ、そ、それは…」


嫌なのだろうか、口ごもりつつ俯いてしまった金吾君の頭をポスポスと叩く。
カブトムシみたいな変な帽子を被っている金吾君が顔を上げれば、彼は瞳に涙を浮かべていた。


『いいよ、金吾君は。眷族にならなくても友達のままでいてくれれば』


「ふっうええぇえぅ、名前ちゃぁぁあぁん!」


「(裏っ返しに眷族にするの拒んだな…)」


私の言葉をきいた政宗は、何故か仕方なさそうな表情を浮かべていて私は首を傾げる。
でも、誰だって自分よりも弱い子を眷属にするなんてことはないと思うし、私もその一人だ。
ぐすぐすとぐずっていた金吾君を彼の両親が引き取りに来て、ぺこぺこと申し訳なさそうな顔を浮かべながら帰っていった。
その後に、輝宗さんとお父さんに見てもらいながら吸血鬼の力の使い方を学んでいく。
金吾君がいなくなってからやるのは、金吾君が暇しないようにと、万が一で怪我をさせてしまうことがないようにするため。
とはいえ、2人は付きっ切りで教えるのではなく、私たちが分からないことがあったら聞きに行くという方法を取っていて。
2人に会話の内容を聞かれないことをいいことに、金吾君の話をしていた。


「にしてもついてねーなぁ。あんなやつが名前の眷属になる予定なんだろう?」


『ううん、金吾君を眷族にはしないよ?』


『What?』


『自分の眷属は、自分で好きに決めなさいってお父さんとお母さんが言ってくれたから』


「…ま、longな付き合いになるんだしな」


逆に守ってやるような眷属じゃ世話ねーよ、と疲れたような顔を浮かべる政宗に苦笑を浮かべる。
政宗には小十郎さんという眷族がいるけれど、このままでは私には眷族がいないままになってしまう。
とはいえ、金吾君を眷属には出来ないし、他の眷族の一族からもらうにしても、幸村君のところは佐助君しかいないし、元就君だって女の子みたいな子(あれ、男の子だっけ、?)しかいない。
他にも候補はいるけれど、どうもしっくり来ないから、契約もしていない。


「ふふ、貴方の眷属は一体何時出来るのかしらねぇ」


お母さんが、困ったように笑った。


「名前、」


『ぅ、ん…?』


あぁ、どうやら眠ってしまっていたらしい。
ゆさ、と肩を軽く揺らされる感覚に目を醒ませば、目の前にはいつもと変わらぬ表情を浮かべている三成君がいて。
私が目を醒ましたことを確認した彼は、私の隣に腰掛けた。
ソファを背もたれにしたふわふわのラグの上にいる私たちに座布団は必要ない。


『…懐かしい夢、見たよ』


「?なんだ」


『んー、昔、政宗と金吾君とで遊んだ夢…』


「…そうか、貴様らは幼馴染だったな」


『うん…それでね、最後、お母さんが「貴方には何時眷属が出来るのかしら」って、困ったように笑ってたの…』


あぁ、そういえばまだお父さんとお母さんに、三成君のことを紹介していなかった。
ことあるごとに心配してくる両親は、きっと私に眷属がいないことも起因しているのだろう。
だったら彼を両親に紹介して、安心させなければ。
私には強くて、優しくて、素敵な眷族が出来たよ、って。


「、なんだ、また寝るのか」


ふ、と小さく笑った三成に凭れ掛れば、細いながらも筋肉のついた腕で私の身体を抱える。
そうしてそのまま、私を抱き枕のように抱いて、2人でラグに倒れ込んだ。


「私も寝る。名前が寝ていてはつまらないからな」


『ふふ…みつなりくん、すき…』


「私は愛してる」


少し私よりも冷たい優しい体温に包まれたまま。
私は再び、眠りに落ちていく。



(愛しい私の主)
((金吾などに渡すものか))
((名前は、ずっと私が守っていくのだから))


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