小説 | ナノ


  Happy Birthday SANJI!



※ローと夢主は既に付き合ってます。同棲済み。


「名前ー!」


ローと二人で大学構内を歩いていると、背後から自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきて振り返る名前。
高いヒールを鳴らしながらこちらに駆け寄ってくるのは、オレンジ色の長い髪をなびかせるナミ。
その後ろからは気だるそうに歩くキッドがこちらへと近づいてきていた。


「トラファルガー!ちょっとこの子借りるわよ!」


「は?」


「行くわよ名前!」


『えっ、え?』


ぐいっ、と腕を引っ張られてそのままナミに引きずられるように走る名前。
後ろを振り返れば、ぽかん、としたままその場に立ち尽くしているローにキッドが何かを言っている。
ローにはキッドが何事かを説明してくれるらしい。
まぁいいや、と名前はナミの後ろをついていくことにした。


「こりゃ一体どういうことだ、ユースタス屋」


「…おい、分かった、話すからとりあえずその殺気をしまえ…」


「こっちはいきなり邪魔されたかと思えばそのまま連れ去られたんだぞ…?」


「(あぁくっそ!!ナミの奴トラファルガーも連れてけよ!!)」


名前が一緒に居た先ほどまでは柔らかな表情をしていたというのに、彼女が居なくなった途端これだ。
しかもナミが問答無用で連れ去ってしまったから余計に機嫌が悪い。
元々鋭い目をしているが、その目をさらに鋭くし、周囲にいる人間が息苦しくなるくらいの威圧感と殺気を滲ませているこの男を目の前に、キッドは今すぐここから立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。
しかしこんな彼を放置するわけにもいかず、キッドは「俺って優しい…」と自画自賛した。


「…名前の手が必要なんだってよ」


「名前の…?今日何かあったか?」


「サンジの誕生日らしい」


「黒足屋の?」


そういや…、と記憶を振り返るロー。



「?なんだそれ、」


『あ…サンジ、そろそろ誕生日だから、』


「ふーん…黒足屋の…」


『うん。いつも貰ってるし、お世話になってるから』



「…アイツ、黒足屋のプレゼント買ってたぞ」


「あー…律儀だもんな。そりゃあ買ってるだろ」


「ならアイツは何をするために引っ張られていったんだ?」


サンジを含めるルフィたちとは幼馴染のようなものらしく、自分よりも圧倒的に付き合いが長い。
後から来た自分がそんな彼らのやり取りを邪魔しようだなんて考えてはいないが、自分以外の男にプレゼントを渡すのはやはり気分はよくない。
まぁ、プレゼントならば渡したらさっさと帰ればいいと安易に考えていたのだが、彼女が連れて行かれてしまった時点でそうもいっていられなくなった。
ローの機嫌は再び悪くなっていく。


「…アイツぐらいなんだと、サンジが満足できるようなメシが作れるの」


「あ?アイツなら女が作った料理なら何でもイケんだろ」


「…まぁ、そうかもしんねぇけど。やっぱり相手はコックだしな…美味いもの食わせてやりてぇんじゃねぇの」


確かに名前の料理は美味い。
それは彼女の料理を頻繁に食べるローが保証する。
家庭的な料理を作ることもあれば、美味しい店の料理を食べれば、その味を家で再現しようとまでする。
コックになろうと思えばなれるんじゃないかという手際の良さは、サンジに負けず劣らずだろう。


「…はぁ…くそ、なんてこった」


「名前はもうプレゼントを渡したのか?」


「これから渡しに行くとこだったんだよ…そんで、そのまま家に帰る予定だった」


「…場所はバラティエだってよ」


「なんの」


「なんのって…この流れから行けばサンジの誕生日パーティーの会場に決まってんだろうが」


「……不本意だが行くか…」


「…そんな嫌っそうな顔すんなよ…」


誕生日ということもあり、大目に見てくれたのだろうか。
キッドは何とか歩き出したローに深いため息を吐き出した。


『――…っ、よし』


「あ、できたー?」


『うん、会場は?』


「あとちょっとー!」


「腹減った」


『ゾロ…つまみ食い、ダメ』


ゼフさんに言って、夕方から貸し切りにしてもらったレストラン、バラティエ。
これまたゼフさんにお願いして、サンジには名前たちが準備している間はここに近づかないようにしてもらっている。
因みにルフィは料理を摘まみ食いされたら堪ったものではないので、サンジと共に遊びに行ってもらっている。
こうなると必然的にサンジがルフィのお世話役となってしまうのだが…まぁ、そこには目を瞑ってもらうことにしよう。
名前が腹が減ったとキッチンをのぞき込んできたゾロの口元に生春巻きを持っていけば、あーん、とそのまま食べてしまったゾロと、再び作業に戻った名前。
そんな2人を少し離れたところから見ていたウソップが、呆れたような表情を浮かべる。


「あの二人は相変わらずだなァ…」


「だからトラファルガー連れてこなかったのよ」


「あー…アイツが見たら乱闘が始まるからな…」


想像に容易かったのだろう、ぶるっ、と体を震わせたウソップ。
名前はルフィたちと知り合ったころから既に両親は海外にいたため、一人暮らし状態。
元々料理は好きだったため、腹を空かせることが多かったルフィやゾロのためにちょっとしたものを作ってくることが多かった。
その頃から定着したあの動作…ローが見たらなんていうか。
事前に予想していたナミは、あの時ローをキッドに丸投げしたのだ。


「美味いな。もうちょっとくれ」


『余分に作った分だけね』


「わーってるよ」


再びあーん、とやり始めてしまった2人に、ナミとウソップは深いため息を吐き出した。
それからしばらく、仕事帰りに酒を買いに行ったロビンとブルックが加わり、なにやらスーパーな出し物のための準備を終えたらしいフランキーも加わる。
白いテーブルクロスが敷かれたテーブルの上に料理を並べていると、突然何かが後ろから抱き付いてくる。


『!?』


「美味そうだな」


『あ、ロー』


すり、と頬をすり合わせてきたローに、くすぐったい、と笑う名前。
背後からはキッドとナミの声が聞こえてきた。


「おいなんでトラファルガー置いてったんだ!大変だったんだぞ!」


「それをなんとかするのがアンタの仕事でしょ?」


「馬鹿言え!名前のことになるとアイツが何するか分かんねぇって知ってるだろうが!」


「知ってるけど別に何かあったわけじゃないし、そもそもちゃんと連れて来れたんだからよかったじゃない」


ぐぅ…!という唸り声と共に終息した口喧嘩。
首を少し動かして、視線で『キッドくんに何したの?』と尋ねれば、気まずい顔をした後、大したことじゃねぇよ、と誤魔化す様に頬にキスをして、頬を離した。
大したことじゃないとは言われたが、先程のキッドの怒りようは一体…。
今度お昼おごってあげよう、とここまでローを抑えてくれていたであろうキッドを心中で労り、未だに抱き締めてくるローに声を見上げる。


『料理運ぶの、手伝って…?』


「くく、はいはい」


そのまま抱き締めたまま歩くものだから、歩きにくいことこの上ない。


『歩きにくいよ、』


「ん」


『…もう』


そのままキッチンに消えていった二人。
幼馴染たちとキッドは呆れたように笑いながらも、せっせと会場設営を進めていく。
ローとキッドも加わったことで思ったよりも早く終わりそうだった為、料理が冷めないようにとナミがルフィの携帯に二人ともバラティエに来るように連絡を入れた。
何やら食べているようで電話の向こうのルフィの声はくぐもっていたが…まぁいつものことなので気にしない。
そんなに遠くには行っていなかったらしく、料理を全て並び終えて暫くした後に、来客用の扉が開かれた。
パンパンッ、と軽やかに鳴り響き、紙吹雪を舞わせるクラッカー。
扉の向こう側に立っていたサンジは驚いたような表情をした後、くしゃり、と破顔する。


「「「ハッピーバースデー!サンジ!!」」」


未だ肌寒い空気におさらばして。
暖かな空気で包んであげよう。



(この料理、名前ちゃんが…?)
(うん、どうかな、?)
(すごく美味しいよ!このヴィシソワーズ、もしかして)
(お母さんが今、フランスにいるからね、現地の材料、送ってもらってたの)
(っ、名前ちゅわぁあぁぁああん(メロメロリン))

(チッ…)
(くおらトラファルガー!生春巻き一人で食い尽くすんじゃ)
(ユースタス屋)
(ね…あ?)
(テメェの分は俺が食ってやる、帰れ)
(ハァァァアン!!?)

(サンジ、これ、)
(!、プレゼントまで!)
(ふふ、おめでと。これからも、よろしくね)
(〜〜っ、大好きd((ゴッチン))ダッ!)
(どさくさに紛れて名前に抱き付こうとしてんじゃないわよ!)
(バラすぞ、黒足屋)
(な、ナミすわぁ〜んっ!テメェトラファルガー!!)
(フン)
(あう…)


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