小説 | ナノ


  くっつかないでください移ります変態が



対人格闘術の訓練の時も。


「名前、俺と一緒にやるぞ」


『え?でも今日はエルドさんと…』


「エルドは腹痛で医務室に行った」


『そうなんですか…後でお見舞いでm「見舞いならグンタが行く。そっとしておいてやれ」あぁ…まぁ、そうですね。最近忙しそうでしたし』


ひそひそ


「…なぁ、エルド、兵長との訓練で医務室に行ったんだよな」


「流石兵長、副兵長は誰にも触れさせないって算段ね…」


「感心してる場合じゃないですよペトラさん!いつ兵長の牙が俺たちに向けられるかっていうより兵長の毒牙に名前副兵長が…!」


「諦めろエレン、お前じゃ兵長には敵わない」


書類整理の時も。


『あ、リヴァイさん、これ…』


「ん?あぁ、これの資料は…奥だな」


『じゃあとってきますね。えと、場所は…』


「俺も一緒に行く」


『?、そうですか?』


ひそひそ


「ねえモブリット」


「…何ですか、ハンジ分隊長」


「リヴァイさ、名前と一緒に行きたくて態と資料の場所言わなかったよね」


「…い、いや…きっと親切心だと…」


『高いですね…梯子作ります?』


「態々イノセンス使うまでもねえだろ」


『え?、っきゃっ』


「っと…相変わらず軽いな」


『りっリヴァイさんっ』


「ほら、早く探せ」


『す、すみません…えっと、Sの15ですよね』


「あぁ」


「……」


「ぶっは!下心丸見えっていうより丸出し!ちょっとどんな体勢か見てくる!」


「ぶっ、分隊長!(生き急ぎすぎです!)」


数分後


「……(分隊長も兵長も副兵長も出て来ない…そんなに資料多いのかな…)」


「おいモブリット」


「うおおっ!!」


「うるせぇ」


「すっ、すみません!」


『ハンジさん、本が当たって倒れちゃって…奥のソファに寝かせてるから、目が覚めたら一応医務室に連れてってもらえるかな』


「りょ、了解です…」


コツンコツン…ぱたん。


「…二人行った?」


「うわあああ分隊長!?倒れてたんじゃ!」


「まあね…いってて、リヴァイ、本気で本投げたな…」


「(あ、やっぱり兵長)」


「それより聞いてよモブリット!リヴァイったら名前を肩車してたんだよ!名前の太腿に挟まれてるリヴァイの顔すんげー幸せそうっていうか締り無くて気持ち悪くて思わず吹き出したら本がね!」


「え…(へ、兵長…!)」


食事の時も。


「あ!名前副兵、ちょ…くそ、リヴァイ兵長と一緒だと…!」


「いつも一緒だよね、兵長と副兵長」


「ちがう、チビが名前さんにくっついてるだけ」


「…確かに、2人の距離近すぎだよね、ねえライナー」


「俺に振るのか…まぁ、確かにな…距離っつう距離ねえんじゃねえか?」


「ぴっとり密着…いいな…僕も副兵長と密着したい…」


「おいおい、落ち着けベルトルト…」


一方張本人たちは。


『…リヴァイさん』


「なんだ」


『…食べにくくないですか?』


「「「(聞くとこそこ!?)」」」


「問題ない」


『そうですか。ならいいです』


「「「(いいの!?)」」」


『あ、コーヒー淹れますね?』


「俺の部屋で淹れればいい」


『じゃあそろそろ戻りましょうか』


「あぁ」


その他にも、エレンの巨人化の実験の時も、立体機動装置を使用した実践訓練の時も、エルヴィンに書類を届けに行くときも、街に必要な物を買いに行くときもエトセトラエトセトラ…。
誰かがどちらか二人の姿を見かける時、と言うより名前を見かけるとき、その隣にはリヴァイが必ずいるという光景が異常なほどに目撃される。
そしてそんなリヴァイの表情が、どことなく幸せで締りのないものだということは、彼と付き合いの長いハンジやエルヴィン、ミケと言った面々には筒抜け状態だった。


「エルヴィン、リヴァイがああいう締りのない顔をしているときは大抵良からぬことを妄想しているときって決まってるんだよ!」


ついに我慢ならない!と言わんばかりに団長室に乗り込んできたハンジ。
それに続いたのは最近名前と全く二人きりに慣れなくて不満を爆殺させたエレン。
ついでと言わんばかりに連れて来られたミケは、2人がエルヴィンに抗議している様子をソファに座っていつもの読めない眸で眺めていた。


「そうは言われてもな…名前はやめてと言わないし、2人ともいつも通りしっかり仕事もこなしてる。駄目だという理由が無いんだ」


確かに、リヴァイがいくら名前に密着していても、仕事はしっかりこなしているし、密着されている張本人である名前が文句を言わない分には何とも言えない。
そう言って困ったような表情を浮かべているエルヴィンに、なら!と今度はエレンが声を張り上げた。


「名前副兵長にリヴァイ兵長がずっとくっついてるせいで挨拶一つできないんですよ!?兵団内の士気もいい加減下がり始めます!」


「そーそ!名前に挨拶するために毎日生きようとしている兵士だっているんだからね!?」


「…まぁ、確かに兵団内の士気が下がるのは問題だが…」


とはいえ、自分の忠告をリヴァイが素直に聞き入れるかどうか…。
作戦云々に関しては全幅の信頼を寄せてくれるリヴァイだが、名前のこととなると、彼女に恋するがゆえに自制が聞かず、暴走気味なのだ。
かと言って、団長命令で2人に別行動を強制すればリヴァイの怒りの矛先が兵士たちに向けられるのは明白で、そうなってしまえばどれほどの被害が出るか…。
ううん、と頭を悩ませるエルヴィン、エレンとハンジは何かいい策が出るのではないかと期待を込めた視線でエルヴィンを見遣るが、そう簡単に出てくる筈もない。
長い唸りの最中、コンコンコンとノックの後、エルヴィンの返事を待つことなく扉が開けられた、


「何唸ってやがる、エルヴィン」


「「あんたのことに関してだよ!」」


「あぁ?」


声をそろえたハンジとエレンをギッと睨んだリヴァイのそれに負けて、2人は情けなくもエルヴィンの椅子の後ろに避難する。
何をやっているんだ、と呆れた様子のエルヴィンはリヴァイの差し出した書類を受け取り、さっさと戻ろうとする彼と呼び止める。


「チッ…大した用事じゃなかったら承知しねえぞ」


「あー…何と言えばいいかな…リヴァイ、少し名前から離れて生活できないか?」


「…なんだと?」


よく言った!と言わんばかりの2人を背後に据えるエルヴィンと、そんな彼に嫌だと言わんばかりの視線を向けるリヴァイ、一人ソファに座っているミケは、スンスン、と鼻を鳴らしていた。


「君が名前にべったりだから、挨拶の一つもできないと兵士たちから不満の声が挙がってるんだ」


「あ?俺は別に話しかけちゃならねえと命令を出してるわけじゃねえ」


「確かにそうかもしれないが…君が名前と一緒に居るだけで一般兵は近寄りがたいんだよ」


「?、其れの何が悪い」


「「「え?」」」


「名前を良からぬ野郎から守るのは俺の役目だ」


どーん、とどこか誇らしげにふんっ、とそう言い放ったリヴァイ。
まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかった3人は呆けたような声を出してしまったが、意識を取り戻した後にエルヴィンは頭を抱え、ハンジはぶっは!と笑いだし、エレンは怒りに顔を歪めた。


「良からぬ野郎は兵長のことでしょうが!」


直後、エレンが吹っ飛んだのは言うまでもない。


くっつかないでください移ります変態が
(スンスン、スンスン、)
(何だミケ、やけに鼻を鳴らして…)
(…いや、リヴァイから)
(俺から、なんだ)
(…名前の匂いがするな、と思っただけだ)
(((!)))
(…そうか)
((あ、リヴァイ(兵長)嬉しそう…))


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