小説 | ナノ


  その小さな手を握りしめる



俺は今、猛烈にムラムラしている。


「…リヴァイ、それ変態発g「うるせぇクソメガネ」ぶごあっ!」


いつものように蹴り倒されたハンジ。
リヴァイのハンジに対する扱いがワンパターン化しているような気がしなくもないが、まぁ仕方ないこととする。
いてて、と蹴られた部分を摩りながら立ち上がったハンジは、大体予想つくけど、なんのこと?と敢えて聞く。


「何のこと?名前のことに決まってんだろうが」


「あーうんやっぱり…っていうかさ、君たちが付き合い始めたころから思ってたんだけど、」


あの子、リヴァイが今まで買ってた女と全然違うよね。


ギンッと向けられる視線に「いいいいや悪い意味じゃなくって!!」と弁解するハンジに、続きを促したリヴァイ。
安堵のため息を吐き出したハンジは続ける。


「まぁ、確かに可愛い部類には入るんだろうけど、そんなに目立つ風貌じゃあないし。何よりリヴァイに寄ってきてた女って、いっつもぼんきゅっぼん、っていうの?まあ私からすればあんな女たちよりもずっと巨人たちの方が魅力的「話はそれだけかハンジ」ごめん逸れた」


握りしめられたリヴァイの拳がハンジの視界に入れられる。
巨人の話に脱線し始めていた話の流れを戻し、まあ要するに、と続ける。


「あぁいう子って、同年代とさえきゃっきゃうふふ出来なさそうなイメージで全然リヴァイとくっつく過程が謎なんだよね」


「お前がきゃっきゃうふふとか気持ち悪いな」


「いやあリヴァイほどじゃあだだだだだだ!!!」


わかっ、わかった!ごめんってば!!


悲痛な叫びをあげるハンジの頭を締め付けていた手を放したリヴァイは、確かに、と自分の彼女を考える。


「あいつはシャイだからな…」


「あ、それは分かってるんだね。まぁ、この際どうやってくっついたかなんて野暮なことは聞かないけどさ、どうしてそれがムラムラの方向に行くのか甚だ疑問なんだけど」


てかまだキスもしてないんでしょ?というハンジの声。
リヴァイは図星でありながらもその言葉は耳に入っていないのか、完全スルーだった。


「何だハンジ、羨ましいのか」


「うん、リヴァイって名前と付き合い始めてから頭がハッピーになったよね」


「何時も巨人で頭ン中が花畑の奴に言われたかねえな」


「え!?いやあそれほどでもぉー」


「褒めてねえ」


イライラすんなこのクソメガネ…と、ゆらり、と再び制裁を加えようとしたリヴァイの気配を察知したハンジは、もうこれ以上はと言わんばかりの勢いで走り、リヴァイの目の前から逃亡する。
逃げられれば追いたくもなるが、リヴァイにハンジを追いかけまわす趣味はない(ハンジがそれなりの事をしたらそれなりに追いかけるが)。
名前、と呼ばれた少女が逃げ出したら存分に追いかけまわすのだろう。
無駄な体力を使った、と小さく息を吐き出したリヴァイは、そよそよと風になびいている、中庭の草を見下ろす。
あぁ、エレンに庭掃除をさせねえと、と考えていると、コツコツ、と控えめな足音がリヴァイのもとに近づいてきた。


『あの、兵長』


「、名前か」


『はい、エレンに兵長が呼んでいたと…』


遅くなって申し訳ありません、と頭を下げた彼女こそ、名前と呼ばれ、先ほどの会話に登場していた、正真正銘リヴァイの彼女。
何かご用でしょうか?、と尋ねてくる名前は礼儀正しく、上司に取るべき態度を全うしているが、リヴァイはそれが気に入らないのか、僅かに表情を歪める。
そんな怖い顔をしたら名前が逃げちゃうよ、と言えるハンジは残念ながら先程逃亡してしまったのでここにはおらず、名前は機嫌が悪くなってしまったリヴァイにおろおろとするばかりで、リヴァイの目線がそんな彼女の表情に向けられているとは気づいていない。
うろうろ、と彷徨う目線、大きいその眸には涙の膜が張っており、うるうるとしていて。
リヴァイも(認めがたくも)小柄ではあるが、そんな彼に抱き込まれたらすっぽりと腕に収まってしまうサイズの名前は、シャイであったり、少々自信が無いこともあり、周りからよく小動物扱いを受けている。
別に貶されているわけでもないので(言い返す自信が無いのもあるのだが)反論することなくその扱いを享受している名前。
どうやらリヴァイは、そんな名前に当初の発言のようにムラムラしているのだという。


「(虐めてぇ…)」


庇護欲を煽りながらも、嗜虐癖を持ち合わせる男を惹きつけてしまう名前。
そんな彼女は、言ってしまえばリヴァイの好みドストライクだったらしい。
リヴァイがドS属性の人間であるということは周知の事実だし、本人も否定はしない。
何より持論が「躾に一番効くのは痛みだと思う」なのだ。
そんな人間がドSでないわけがない。


「名前、俺の部屋に行くぞ」


『あっ、はい、』


ぐい、と名前の細腕を掴み、廊下にブーツの音を響かせながら足早に歩くリヴァイ。
大きな身長差があるわけではないが、名前の歩幅に比べたらリヴァイの歩幅の方が大きいのは当たり前なので、彼女は早歩きにならざるをえない。
転ばないようにと視線を落として歩いていると、いつの間にかリヴァイの部屋の前に辿り着き、そのまま部屋の中に押し込まれる。
へ、兵長の部屋に、2人きり…!?と内心テンパって仕方がない名前は、リヴァイに腕をひかれるまま、部屋の中にあるソファに腰掛け、その隣にリヴァイも座った。
名前は何もリヴァイを嫌っているわけではない。
リヴァイのことはちゃんと好いているし、そうでなければ彼と付き合うだなんてことにも発展しなかっただろう。
それなのにこの態度、多少は怖がってはいるが、一番の大きい原因は、彼女が恥ずかしがりや、シャイであるということに起因していた。
自覚はあるがどうしようもできないそれのせいで、リヴァイに会ったら顔は赤くなるし、視界はうるんで涙を零さないように必死にならざるを得ない。
隣に座っているだけで、どきどき、とうるさい音を立てる心臓を何とか抑えようと深呼吸をしようとしたとき、リヴァイの腕が名前に絡みついた。


『ふあ!?』


「いい加減少し慣れたらどうだ」


『むっ、無理ですー!降ろしてくださいー!』


ひーん!と言わんばかりに顔を真っ赤にしている名前は、リヴァイの腕によって、横抱きにするように膝の上に抱えられている。
この早業も人類最強ゆえか、などと現実逃避をしている名前の顔は、リヴァイから背けられており。
どうやらそれが気に入らなかったのだろう、彼女の顎に指を掛け、こちらを見ようとしないその小さな顔を向けさせようとするが、名前はいやいやと顔を背けるばかり。
無理やり向かせるのも一興だが、と考えたリヴァイは、顎にかけていた指で、耳を隠していた髪を耳に引っ掛ける。
その際、その柔らかな耳に触れる指先の動きは艶めかしく、つつぅ、とわざとらしくその淵をなぞるいやらしい動きに、名前の体がビクつかないわけがなかった。
既に真っ赤に染まっている耳から指を外し、今度はリヴァイ自身の薄い唇をぎりぎりまで近づけて、低いその声で甘く囁く。


「俺を見ろ、名前」


『っぁ』


喋るたびにわずかに触れる唇に意識が持って行かれそうになりながらも、それまで頑なに向けられることのなかった首を、リヴァイの方へ回す。
両手は何かを耐えるように、ギュっと、胸のところで握りしめられているのをなんとなく視界に入れていたリヴァイは、そろそろ、と向けられるその顔に、ぞくり、とした。
今にも零れ落ちてしまいそうな涙で潤んだ眸、困ったように下がった眉、羞恥で赤く染まった頬、緊張からか、震える淡い桜色の唇、加えて、微かに震える小さな体。
はう…と消え入りそうな小さな声をあげながら、上目づかいにリヴァイを見上げ、もう苛めないでと言っているようなその小動物の持っていた破壊力は絶大だったらしい。


「(何だこの小動物は…誘ってんのか?煽ってんのか?苛めてほしいのか、可愛がって欲しいのかどっちなんだはっきりしやがれどっちでもいいぞ飴と鞭の扱いだって俺にかかれば問題ないまあ飴に関しては名前限定だがな嗚呼でもまだ【自主規制】は早いかそうだよなまだキスもしてねえんだったなじゃあとりあえず)」


『ひゃああっ』


「…ふごふごふご(何のつもりだ)」


『むむむっ、無理なんですー!』


「ふごご、ふごふごごふごふごふごごご(てめえ、生殺しにするつもりかそうなのか)」


『何を言ってるか分かりませんけどふやあああ近いいいいい!』


「ふごご、ふごごふごふごふふごごごふふごふごごふごふごごごふご(駄目だ、てめえに焦らしはまだ早い。焦らすのは俺の仕事だいい加減手を放せ)」


一人で随分長い台詞を心中で吐いたリヴァイは、ずいっ、と名前の顔に自身の顔を近づけてそのままキスをしようとしたが、恥ずかしがり屋の彼女がそんないきなりの行動についていけるはずもなく。
ぺちんっ、と情けない音を立てながらも、胸の前で握りしめていた両手でリヴァイの口を塞ぎ、キスを防ぐが、そのせいで彼が一体何を言っているのかが分からない。
ふごふご言いながらも名前の細い手を剥がそうともせず喋り続けるその光景はまさに異様。
平然とふごふごと喋りつづけているリヴァイだが、抑えている張本人の名前の顔はさらに赤くなっていく。
それはそうだろう、リヴァイが喋るたびに、その掌にリヴァイの唇やらと息が触れているのだから。
それでも手を引かずに押さえ続けているのはある意味根性と言うかなんというか。
誰か助けて、と心の中で祈った瞬間、名前の手のひらに、ヌルリ、と濡れた何かが滑っていく感触が伝わり、驚いた彼女は思わず両手を離してしまった。


『いっ、いいいい今っ!』


「あぁ、舐めた」


『っ!っ!!』


舐められた方の手に残る、生々しい感触。
きゅううう…とショートしてしまいそうな名前の無防備なその唇に、今だと言わんばかりにリヴァイが噛みついた。



(ふ、んんっ)
(ん…)
((ひぃぃ兵長の顔が目の前にいいい))
((…苛め甲斐がある))
title:識別
シャイな夢主にムラムラする兵長…ムラムラっていうより弄んでいるような感じになってしまったガッテム←
でも満足…元帥主はスキンシップ激しい中にいたから平気だもんね…神経図太いわけじゃないよ!
ここまでビビりな小動物って何でしょうか…怯えすぎとかそういうことは言わないお約束
50000hit企画参加ありがとうございました!
これからも嘘花をよろしくお願いします^^*

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