小説 | ナノ


  鳴門×海賊 02



「ベポー!!」


ドタバタと慌ただしい音を立てて食堂に入って来た、キャスケットを被り、サングラスをかけた男、シャチ。
続いて、PENGUINと書かれた帽子を被った男も続いて入ってくる。
コーヒーを飲んでいた船長、ローはその慌ただしさに顔を顰め、ベポは「?」と首を傾げた。


「…あれ、思ってたよりも元気、か?」


「どうしたのー?シャチ」


「あ、いや…元気なら全然いいんだけどよ」


自身に向けられているローの険しい視線に気づいたのか、ギクシャク、と不審な動きをしながらも落ち着きを取り戻した彼は、ぽりぽり、と首の後ろを掻く。
ペンギンが、シャチに怪訝な視線を向けているローに言う。


「この島、どうもシロクマに対してひどく怯えているようで…」


そう言ったペンギンが、数日前の事件を語る。
話が進むにつれてローの顔がさらに顰められていくのに気付いたシャチもペンギンも顔色が悪くなるが、そこではた、とローの視線がベポに向けられた。


「…に、しては、ちゃんと買い物を済ませてたな」


「うん!名前が付き合ってくれたんだー」


「「名前?」」


聞き覚えのない名前、この島の住民だろうか。
そう首を傾げた彼らに、ベポが語る。
自分の分のアイスも代わりに買ってくれたこと、数日前のシロクマを故郷に返したのが彼女であるということ、買い物にも最後まで付き合ってくれたこと、自分に全く怯えを見せなかったこと…。
シャチが語る女へは一切の興味を示さないローだが、ベポは違うらしい。
ほぉ、と楽し気な声色のローは、ベポに彼女のことを質問していく。


「見た目は?」


「えっとね、銀髪?よりも白かったかなあ…あと目が金色で、綺麗な子だったよ」


「名前は名前だったか…どこで何をしてるかは聞いたか」


「あ…聞いてない」


しょぼん、と肩を落とすベポ。
彼に質問をしてもさほど情報は得られなかったが…ベポが綺麗な女だというのなら相当なのだろう。
ローの周りに寄ってくる女のレベルが高いせいで、彼と一緒に居るベポの中の女のレベルも必然的に高くなる。
綺麗な子かあ、と期待を膨らませるシャチに対して、会えると決まったわけじゃないんだぞとペンギンが諌める。


「でもね!キャプテン!」


「あ?」


「名前が言ってたんだ!近いうちにまた会えるって!」


「んだそりゃ」


それはしょんぼりとしているベポに対して慰めの意味を孕んで向けられたものだったのか、それとも、何かしらの意図があってそう言ったのか。
もし一般人ならば前者なのだろうが、シロクマを故郷に返したということと言い、島民がベポに対して向けた怯えを一切見せなかったことと言い、その線は消えるだろう。
ニヤリ、とローの口角が上がる。
あ、なんか悪だくみしてる…とクルーたちの心が一つに成った時、ハートの海賊団、船長は言い放った。


「興味がある…会ってみるか」


ゾクリッ


『っ!』


トントントン、と材料を切りながら明日の仕込みをしていた名前の背筋を駆けあがる悪寒。
…?、と顔を顰め乍ら背後に何もないことを確認した彼女に、店主が首を傾げた。


「どうした?」


『…いえ、』


「ならいいが…にしても、随分量が多いなあ」


いつもの3〜4倍はあるんじゃないか?と不思議そうに首を傾げる店主。
2人がいるのは厨房で、ここから壁一枚を隔てた向こうが、客の座るスペース。
女の高い声と楽しげな男たちの声は、時間も時間だからか、徐々に少なくなってきているが分かる。
ここはこの島一番の喫茶店であり、酒屋。
昼は喫茶店として、夜は酒屋として営業している。
出てくる料理も酒も、そして女も一級品と名高い此処は、連日大賑わいで繁盛している。
名前は、そんな店の厨房を担当していた。
朝早くから夜遅くまで、女ならば音を上げそうな仕事だが、彼女は平然とした表情でそれらをこなしていく。
そしてもう一つ、彼女には重大な仕事があるのだが…


「何かあるのか?」


『…海賊がこの島に。恐らく明日の夜…』


「!そりゃほんとか!?」


こくん、と驚いている店主に頷いた名前。
慌ててバタバタし始めた彼は、酒が足りるか、と在庫を確認している。
念のために明日届けてもらう酒の量をいつもの数倍にしていると言えば、準備がいいなあと感心したような声を漏らしていた。


「にしても、海賊か…明日は久々の別の仕事をしなきゃならないかもしれんな!」


だはは!と楽しそうに笑う店主に溜息をついた名前は、ちらり、と食器云々が仕舞われている戸棚に視線を向ける、


『…お盆と食器、』


「分かってる、壊しても怒りゃしねえよ」


そう苦笑を浮かべた店主は、そろそろ閉めるか、と表へ出ていった。
自分以外居なくなった厨房で、最後に肉の仕込みを終えた名前も手を洗い、カツンカツンとハイヒールを鳴らして厨房から出て行った。


***
夢主ちゃんの忍者の雰囲気が全く出せていない…ハイヒールの中に千本が仕込まれているという裏設定を晒してみる←

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