小説 | ナノ


  灰被り姫に幸福を U



「あーあ…結局誰だったのかしら」


「リヴァイ王子が追いかけたお姫様…顔は見えなかったけど、あんなに無関心だった彼が逃げ出した彼女を追いかけるまでするなんて」


「見つからなければお前たちにもチャンスはあるよ」


大丈夫、きっと見つからない、と笑う継母に、はあい、と返事を返す姉たち。
今日も激身に励む名前は、彼女らの会話を小耳にはさみながら、大理石の廊下を曇り一つなく完璧に磨き上げた。
今日はいつも以上に体を動かすからと、スカートではなくパンツで作業をしている。
歌のお稽古だと遠ざかっていく彼女らの気配をなんとなく感じながら、名前はあの夜と同じように窓から外を眺めた。
あの夢のような夜から、今日で1ヶ月が経とうとしている。
噂では、あの王子が、“ガラスの靴と同じ足のサイズの娘”を探しているらしい。
けれど不思議にも、あのガラスの靴にぴったり合うサイズの足を持つ娘は見つからないという。
同じ大きさの足の子がいてもおかしくはないだろうに、と名前はぼんやりとそんなことを考えながら、バケツと雑巾を持って、窓の多い廊下を歩いていく。
庭に王族のエンブレムを掲げた馬車が止まったことに、そこから2つの双眼が彼女を空えていたことに気付かぬまま…。


「名前!」


『、はい、お義母様』


「王子たちが来た。いいかい、お前は絶対出てきちゃならないよ」


『…承知しております』


バタバタと急に騒がしくなったのでなんだと思えば、継母がそう言い捨てるように彼女に言いつけていった。
王子、という言葉に、手にしていたバケツの取っ手を握っていた力が強まったことに気付いた名前は、苦笑を浮かべ、歩いていく継母とは逆方向に歩いていく。
初恋は実らないって、本当なんだなあ、と、ぼんやり、そんなことを考えながら。


「…女は全員出せ」


低く唸るようなリヴァイの声に、びくりと肩を震わせた姉たちと、冷や汗を流した継母。


「何をおっしゃいますか王子、女はここに居る3人だけですわ」


にこにこと笑顔を張り付けた継母。
チッ、と舌打ちをしたリヴァイは、ミケに目くばせをした。
コクリ、と頷いたミケは立ち上がり、応接室を後にしようとすれば、慌てて止めに入る継母や姉たち。
リヴァイは凶悪な笑みを浮かべながら言い放った。


「ここに女はてめえらしかいねえんだろ?だったら探したって問題ねぇじゃねえか」


動きを止めた継母たちを一瞥したミケは、そのまま無言で応接室から出ていく。
その後数10分と重苦しい空気が流れていたが、不意に扉の向こうから聞こえてくる聞き覚えのある声に、リヴァイは立ち上がった。
がちゃり、と開かれた扉。
そこには、雑巾を両手に抱えたままぽかん、としている名前を横抱きにしているミケがいつもと変わらぬ表情で立っている。
継母たちはなぜ、と疑問に思いつつ、ガラスの靴を手に名前たちに近づくリヴァイの姿を只見つめていることだけしかできなくて。


『、リヴァイ、王子…』


名前の言葉には答えず、彼女の履いていた靴を脱がせ、自身の手にしていたガラスの靴を履かせれば。
この国のすべての女に試しても、履けなかったり、脱げてしまったりしていた靴は、履けないことも脱げることもなく、ぴったりと彼女の足に履かれていた。
呆然としている名前をミケはようやくおろし、その直後、目の前に立っていたリヴァイに荒々しく抱き寄せられる。


「やっと、見つけた…っ!」


『、リ、ヴァ…』


つう、と流れる涙。
その涙を優しく拭ったリヴァイは、名前を横抱きにするとさっさと出口に向かって歩き出す。
え、え、と困惑する一同に、リヴァイは言い放った。


「妃は見つかった。帰るぞ」


「おっ、お待ちください王子!その子は召使でっ」


「召使いだろうが何だろうが関係ねえ」


俺はこいつを選んだ、と再び歩きだろうとしたリヴァイを引き留めたのはハンジだった。
いい加減に城を言わんばかりのリヴァイではなく、彼の腕に抱かれている名前に声をかける。


『…魔法使い、さん…?』


「え?」


『あっ、いえ、知り合いに似ていたもので…』


「そう?あ、それでさ、もう片方のガラスの靴ってどこにある?どうせなら両方揃えたほうがいいでしょ?」


『私の部屋…屋根裏部屋に…』


「ん、分かった、屋根裏部屋ね」


そう言って応接室を出て言ったハンジ。
恐らくそのガラスの靴を取りに行ったのだろう。
もう用はない、と言わんばかりに出ていくリヴァイ達を継母たちは止めることができず、ただ見送ることしかできなかった。


その後、王宮では盛大な結婚式が開かれた。
リヴァイは、白を基調とした正装で、名前は美しいウェディングドレスと、彼らを繋いでくれた、ガラスの靴を履いて。



(リヴァイも召使の子を妃にするとは…ん?)
(いかがなされました、国王)
(名前…名前じゃないか?)
(、ダリス様…?)
(おぉ、随分大きくなって…綺麗になったな)
(そんな、お恥ずかしい…)
(ジジイ、知り合いか)
(知り合いも何も、この子の父親は前国王直轄騎士団の団長だったんだ。父親が生きていたころはよく会っていたものだ)
(召使いじゃないじゃんこの子!!立派な令嬢じゃん!!)


…長い、です…まさかこんなに長くなるとは思ってもいませんでした←
パロディの類ってお話の流れが大体決まっているので一気に書いていくと滅茶苦茶長くなっちゃうんですよね…!
だらだらと長いお話すみません!
50000hit企画参加ありがとうございました!
これからも嘘花をよろしくお願いします^^*

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