小説 | ナノ


  師匠襲来!?



夢を見た。


『ちょっ、落ち着いてください師匠!!』


「あ?ブローカーは殺してもいいんだろ?」


『殺してもいいとは言われてません!教団に引き渡すんです!』


「いいじゃねえか、最近殺してねえんだよ」


「ひっ、ひぃぃいい!!」


…あまりいいものではなかったけど。


『…元気かな…師匠』


もぞ、と起き上がった名前は小さな欠伸を一つ零し、未だ眠さを訴える体を叱咤して行動を開始する。
いつも通りの仕事を進めて、いつも通りリヴァイのもとにコーヒーを入れに行って、ハンジに書類を届けて、エレンにハグされて。
そしていつも通り、エルヴィンの執務室に足を運んだそこには、ミケやハンジ、リヴァイ、エルヴィンというそうそうたるメンバーと。


『…、師匠?』


鉄の仮面をした、筋骨隆々とした大柄な男。
背の高いエルヴィンさえも超えているであろうその人物は、名前にとっては見慣れた人物で。
当然それは向こうも同じで、男はキィィィイ、と不吉な音を響かせる。
思わず手に持っていた書類をばさあ、と落とし。


「こ、の…馬鹿弟子があああああ!!!」


『わぁぁあああああ!!』


ギュルルルルッ、と飛んできた神狂い―マドネス―をとっさに発動させた影の壁で受け止める。
渾身の力で投げたのか、普通の攻撃なら弾き返してしまう硬度を誇る壁に食い込んでいた。
…これは食らったら速攻で死ぬだろうな、こう、胴体が見事にスパーンッと。
相手に動きが見られないのを確認して、恐る恐る壁から顔をのぞかせれば、そこにはぽかん、と呆気にとられた表情をするリヴァイ達、ふんっ、と腕を組んで再びソファに座り込んだ名前の師匠、ウィンターズ・ソカロの姿がそこにあった。
どうやら気は収まったらしい、と小さく息を吐き出した名前は、散らばってしまった書類を拾い上げ、最後に発動の解かれた神狂いを手に彼らのもとへ。


『エルヴィンさん、書類置いときますね』


「あ、あぁ…」


『師匠、いきなり投げないでください。下手したら死んでました』


「ハッ、死んでたらてめえもその程度だったってことだろう?」


『相変わらずひどい人ですね』


言葉でいうほどあまりひどいとは思っていないような声色で笑う。
そんな2人をただ傍観していた彼らは意識を取り戻し、動き出す。
一番最初に動き出したのはもちろん、人類最強だった。
訓練中にいきなり呼び出されたらしい彼は腰に装着したままの立体機動装置からブレードを抜き去り、それを素早くソカロの首に当てる。
使い慣れない人には使いにくい、くねくねとした刃だが、これで数えきれないほどの巨人の項を削いできた彼なら、この刃を以て、ソカロの太い首だって綺麗に削げるだろう。
リヴァイのいきなりの行動に目を見開いた名前は何をしてるんだと止めようと口を開こうとするが、ソカロが先に口を開いた。


「…ほぉ、良い目をしてやがる」


殺意に満ちた目。
自分が弟子である名前に、彼女が咄嗟に壁を作らなければ間違いなく死んでいたであろう攻撃を仕掛けたために向けられたその目は、死刑囚であるソカロを恐れおののかせるわけもなく、ただ彼の本能に火をつけようとするだけだった。
あぁ不味い、と名前が遠い目をした瞬間、鉄の仮面をかぶったままのソカロは楽しそうな声色を発する。


「久しぶりに楽しめそうじゃねえか!!」


そうして始まった取っ組み合い(またの名を殺し合い)。
元ゴロツキな人類最強と元死刑囚なエクソシスト元帥の戦いは目も当てられないもので、その場にいたエルヴィン、ハンジ、ミケの顔色は悪かった。
バキッやドゴォという何とも形容しがたい破壊音を響かせながら暴れまわる二人。
名前がイノセンスの能力で彼らの動きを止めていなければ間違いなくエルヴィンの執務室は大破、塵と化していただろう。
どうにか二人を落ち着かせた後、突如現れたというソカロから事情を聴けば、どうやらクロスの実験とやらにいきなり巻き込まれたらしく、気付いたらここに居たらしい。
突然現れたなら突然帰るのだろうということで、その間、この傍若無人な男の面倒を名前が見ることになったのだ。


『えぇと、そういうわけで…今は部屋に居ますけど、出来たら師匠の神経を逆なでするようなことは言わないでください』


「へぇ、名前副兵長の師匠ですか」


リヴァイとソカロの殺し合いを知らぬ調査兵団の面々は、素晴らしい名前の師匠という男なら、彼女と同じように素晴らしい人間なのだろうと想像を膨らませる。
が、名前の言葉にあった“神経を逆なでするようなことは言うな”という単語に首を傾げる。
既にソカロがどんな人物かを知っているリヴァイは盛大に舌打ちをし、まさに不機嫌だと物語っていた。


『師匠はちょっと…まぁ言っちゃえば元死刑囚なんだ』


あはは、と笑いながらさらっという名前の言葉に、先ほどまで頭の中に描いでいた人物像は見事に消え去った。
え…と、固まっていたエレンは復唱する。


「死刑囚、ですか…?」


『うん。収監されてたんだけど、私たちと同じ適合者ってことが分かったから、特別にね。エクソシストになる代わりに死刑は取り消し、エクソシストと活動してる間は一般人と同じように拘束は受けないんだ』


まあ、殺せれば何でもいいって考えてる人だから怖かったらあんまり近づかないでね?


そのセリフを苦笑ながらも笑顔で言い切れる名前も十分恐ろしい、という心の声が調査兵団の中で一致した。
それから数日間…


『あー…師匠我慢してください!殺しなら壁外に出たら巨人相手に好きなだけやっていいですから!』


「なら今すぐ」


『壁外調査は2日後ですからもうちょっとだけ我慢してください』


「チッ…しょうがねぇな…」


傍若無人なのは言葉だけでなく勿論行動にも表れており。
そんな彼を制御するのは、副兵士長であり彼の弟子でもある名前の役割としてすっかり定着していた。
いつ何時彼の導火線に火がつくか分からないと、名前はエルヴィンに頼み仕事を減らしてもらい、ソカロにつきっきりでいることに徹した。
ソカロ自身も名前のことは気に入っているため、そのことには文句ひとつ言わず、寧ろ機嫌がいいようにも見えたらしい(調査兵団兵士談)。
逆に、自身の補佐役であるはずの名前を奪われたような形であるリヴァイは青筋を立てていたが…どうやらそれも我慢の限界らしい。
食堂にて、名前の淹れる食後のコーヒーを待つソカロとリヴァイは、何故か向かい合わせに座って互いの顔を突き合わせていた。
ソカロに至ってはいつも被っているはずの鉄の仮面を外しており、その凶悪な顔面をさらしている。


「おい、いい加減名前を返せ」


「あ?それはこっちの台詞だ」


こいつはエクソシストだ、いつまでも巨人相手に戦っていられるほど暇じゃねえ


ぴりり、とした張りつめた空気に息をのむ一同は「(頼むから食堂の外でやってくれ…!)」とひたすら懇願していたが、どうやら彼らにその願いは届かなかったらしい。
まさに一触即発、リヴァイが立体機動装置のブレードに、ソカロがイノセンスに手を掛けたところで、ばぁんっ!と勢いよく扉が開けられ、一人の変人が駆け込んで来た。


「ソカロソカロソカロ!!イノセンス見せてええええ!!!!」


はあはあはあはあと鼻息荒く現れたハンジに呆気にとられる一同だったが、そんなことは露知らず、ハンジはソカロが手を掛けているイノセンスに手を伸ばす。
他人と話をするだけなら何ともないのだが、触れ合いはあまり好きではないソカロは、ハンジの手が自身に触れる前に殴り飛ばそうとしたのだが。


『師匠!あなたが女性に手を上げたら間違いなく死んじゃいます!』


いつの間にか背後に迫っていた名前がハンジに振り下ろされそうになった腕を抑える。
抑えるとはいっても、ソカロは名前よりずっと大きく、その腕の太さも何倍もあり、とても名前の手で掴めるようなものではない。
したがって、掴み抑えるというよりは抱きかかえるようにして静止した。
自分の弟子をこのまま投げ飛ばしてしまえば、教団に帰った瞬間教団のメンバーから一斉攻撃を食らうことは簡単に想像できたし、何より彼女を傷つける気は毛頭ない。
じいいい、と自分を見つめる翡翠に、ソカロは何とも言えない表情を浮かべ。
はあ、とため息をついたソカロは名前に抑えられていないほうの手で神狂いを外すと、それをハンジに乱雑に投げ渡す。
それなりに重かったためか、何とか受け取ったハンジから不吉な音がしたような気がするのには目をつぶることにした。


「ううう…いいなあ副兵長に腕ぎゅってされて…!!」


「なんか…凄い人だね、名前副兵長の師匠」


「チビだけじゃなくあんな大男まで…!待ってて名前さん、今すぐ助けに…!」


どかっ、と再び腰かけたソカロ。
ハンジは神狂いを受け取り、わーわー言いながら食堂を後にする。
名前はソカロに再び『暴れないように!』と言って再びコーヒーを入れに厨房に駆け足で戻っていき、リヴァイはそれを追いかけていた。
彼女に好意を向けているであろうエレンたちからは羨ましいと言わんばかりの表情を向けられ、ミカサからはリヴァイと同じように殺意を向けられる。
向こうのように常に戦争状態、という訳ではないが、ここも中々、


「退屈しなくてすみそうじゃねえの」


にた、とその口角を釣り上げた。



(もー、師匠、皆怯えてますから殺気しまってください)
(あ?出してたか?)
(無意識のうちに出す癖なんとかしろってティエドール元帥に言われてるでしょう…)


ソカロorクロスということだったので…名前と師弟関係にあるソカロに来ていただきました!、ら…予想以上に動かしにくい←
出来るだけリクエストに沿えるようにとは考えたのですが…沿えているかどうか…←
まだまだ精進致します…何かありましたら何なりとお申し付けください!
50000hit企画参加ありがとうございました!
これからも嘘花をよろしくお願いします^^*

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