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  首輪の代わりに噛み痕を



今年もこの時期がやって来た。
調査兵団のエルヴィンと俺、憲兵団と駐屯兵団のお偉い共、そして内地の豚どもや商会の野郎どもが集まって行われるパーティー。
商会の連中にとっては商売相手を探す機会、貴族やらの若いもんにとっては結婚相手を探す機会。
そんなんだったら参加しなくたっていいじゃねえかという俺の意見は通用しないらしく、毎年参加したくもないそれにほぼ強制的に参加してたんだが。
今年は悪くねぇ、そう思った。


『、リヴァイさん?』


「あ?」


『ぼうっとしてましたけど…大丈夫ですか?』


そう眉尻を下げて心配そうに俺を見る名前が一緒に居るから。
いつもはしない化粧を(嬉々としたペトラに)され、艶やかな黒髪をパーティー用に纏め、それを自由の翼の色と同じ、青と白で染められた薔薇のコサージュでとめている。
白い肢体は漆黒のAラインのドレスに包まれ、細い腕もレースのあしらわれた黒い手袋に包まれている。
首にはアクアマリンの宝石のついたネックレスがかけられ、動くたびに照明を反射させて眩しく光る。
パーティーはいつも憂鬱だったが、こうして俺の選んだものを身に纏っている名前が見られるのなら悪くない。
こいつは物欲というものがないらしく、何か欲しいものはないかと言ってもいつも『リヴァイさんが一緒に居てくれればそれでいいです』なんて可愛いことしか言いやがらねぇから、こういう時ぐらいにしか何かを贈るという機会がない。


「なんでもねぇよ」


未だに心配そうな面をして俺を見る名前の頬に指を滑らせれば、いつもより少し粉っぽい。
…パウダーがついた。
指先についたそれを拭う俺の仕草で理解したらしく、名前が申し訳なさそうな表情を浮かべる。


『あ、化粧が…』


「ペトラが張り切ってたからな」


『ペトラさんお上手で。髪も彼女が纏めてくれました』


名前をパーティーに連れて行くと言った時のペトラの行動は素早かった。
壁外調査でもそんな素早かったかと問いたくなるぐらいのスピードで、周りにいた俺の班員もハンジもエルヴィンも、勿論名前もただポカンと呆然としていたくらいだ。
そのあと速攻で戻って来たペトラに連れていかれた名前はされるがままで、俺達が再び名前を見るころには今と同じ状態になっていた、という経緯がある。
まあ、化粧とかそういうのに詳しいのがペトラぐらいしかいなかったから、助かったと言えばそうなるんだろうな。
テーブルの上に並べられている、いつもの食堂なら決して出てくることのないような料理を取り分け食べている名前は唇に塗られているルージュが気になっているのか、少々食べにくそうだ。


『リヴァイさんも食べますか?』


美味しいですよ、と小さく笑った名前はトングと皿を両手に俺を振り返る。


「あぁ、貰う」


何品かを皿に載せ、フォークとともに渡される。
名前の性格を現したかのように綺麗に載せられたそれらをフォークでつついていると、ほんの少し距離を開けて食事をとっていた名前が身を寄せてくる。
その表情は若干不安そうに、怪訝そうなものが浮かべられていた。


「、どうした」


スキンシップで触れられたりすることにさほど抵抗は感じていないようだが、名前自身からこうした行動に出るのは珍しい。
俺の問いかけに俺に視線を向けた名前はもぐもぐ、と小さな口を動かして口の中を咀嚼、嚥下し、周りをちら、と一瞥した。


『…なんだか、見られているような気がして』


気のせいならいいんですけど、という名前。
はっきり言ってしまえば名前が入った時から野郎どもの視線は名前に向けられていたが…こいつは鋭いんだか鈍いんだか時々わからなくなるな…。
不安そうなその表情も可愛いと不謹慎にそんなことを思いながら、名前に倣ってこいつに視線を向けている野郎どもを一瞥する。
殆どが若い男、憲兵団や貴族が多かったが、中には中年、酷いと老人なんて奴もいた。
…おい、老人とかなにするつもりだ、介護でもさせるのか。
その視線には熱がこもっているもの、厭らしいもの、ねっとりと粘着質なものと様々ある。
鈍感な人間でもそりゃあ気付くだろうな。


『喉乾いたので、飲み物とってきます』


空になった皿を近くのテーブルに置き、俺にそう声をかけてきた名前。
飲み物の乗っているテーブルはそう遠くないから、ここで様子を見ていれば問題ないだろうが…


「あぁ。すぐ戻れよ」


『はい。リヴァイさんは何か飲みますか?』


「ワインでいい」


『分かりました』


こつん、こつん、と響く名前の靴音。
他にも女はいるというのに、男どもの視線はほとんどが名前に注がれていて。
本人もそれに気付いているのか、テーブルの向かう足取りが若干早くなる。
…素直についてきてほしいって言えばいいだろうがと悪態をつきてぇとこだが、あいつはそんな柄じゃねぇしな。
自分でやれると判断したことはたいてい自分で何とかしようとする。
今回も似たようなもんだろう、たかが飲み物を取りに行くだけだから、俺の手を借りる必要なんざねぇと考えただなんてことは簡単に分かる。
テーブルに到着したらしく、赤いワインの入ったグラスと、炭酸らしい蜂蜜色のグラスを手に手を掛けた名前に近づく一つの影。


「お嬢さん」


『、ぇっ、』


「よろしければ、少しお話をしませんか」


『、いえ、人を待たせているので、』


「そんなことを言わず」


名前の両手が塞がっているのをいいことに、剥き出しの肩に触れる男の手。
その触り方が普通に手を置くものではなく、まるで撫でるように触れていて。
いつの間にか俺の足は、ガツガツと足音荒く名前のもとに向かっていて。


「おい」


「っ、」


いつも以上にドスの効いた声だと自分でも分かった。
名前に触れていた男はビクつきこちらを振り返り、名前は困ったような表情を浮かべていた。


「人のツレに手ぇ出してんじゃねぇぞ」


名前に触れている手を叩き落とせば、少し嫌な音がしたがそんなことは気にせず、両手の塞がっている名前の腰に手を回して引っ張っていく。
『わっ、』と小さな声を漏らしたものの、グラスから液体をこぼさないように器用に持ちながら歩く名前を、そのままカーテンの向こうにあるテラスに連れ出す。
誰もいないそこは静寂に包まれ、月が整えられた庭園を照らしている。
夜遅いということも手伝ってか、吹く風は冷たい。


『リヴァイさん…』


「大丈夫か」


『すみません…何もないと思ったんですが…』


もう少し警戒すべきでした、と言う名前の手から2つともグラスを取り、テラスの手すりに載せる。
名前の細い腰を両手でつかみ引き寄せ、男が触れたほうの肩に顔を寄せた。


『あ、あのっ、』


「うるせぇ、ちょっと黙ってろ」


あぁ、汚ぇ、あの男の触れた部分が気に入らねぇ…
肩に唇を落とし、ぴちゃり、と俺の舌が名前の細い肩に触れる。
感触で俺が一体何をしているかもわかっているらしく、びくりと肩を揺らして逃れようとしている名前を今度は動かないように抱き締め、その肩に噛みついた。


『いっ、』


解放すれば、血は滲んでいないもののくっきりと残っている歯型。
白い肌は俺の唾液で濡れ、さらに歯形がついている。
肩に埋めていた顔を上げれば、顔を真っ赤にし、眸には涙を浮かべて泣きそうな顔をした名前が俺を見ていて。


「そんな顔で見んな」


食らいたくなるだろうが


そのまま、ルージュでいやらしく光る唇に噛みついた。




(ん、っふ…)
(俺から離れんな、いいな)
(、はい…)
((虫が寄らないよう、恥ずかしがる名前を抑えて首筋にも噛みついた))


王都のパーティー編でした!
こういうお話は私も書きたいと思ってたので、リクエストを頂いたとき嬉しかったです^^* 
今回はリヴァイ視点で行ってみました、が…キャラ視線というのはなかなか難しいですね…こういう書き方でとてもうまい方が一杯いらっしゃるのでもっと精進したいと思います。
もっとリヴァイにどろどろと嫉妬してもらおうと思ったのですがあんまり書けませんでした…もっとドロドロしたのが書けるようになりたいです←
50000hit企画参加ありがとうございました!
これからも嘘花をよろしくお願いします^^*

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