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  不安定で無粋でたまらなく愛しい



「ねーベルトルト、暑いんだけど…」
「んー………」


んー、じゃないよ。と突っ込みたくなった。
心の中でどうにか留めたそれを、溜息として口から吐き出す。
それにもベルトルトは無反応だった。
今の私の状況はと言うと、簡潔に言えば後ろからベルトルトにがっちりとホールドされている状態だ。
しかも私の体は彼の足の間にある。そして此処は、人通りのある談話室。
そろそろみんなの視線がいたい。
季節は初夏。そろそろ水浴びが恋しくなる時期だった。
それにも関わらず後ろから抱き付いてくるこの男の存在は、正直言って暑苦しい。
おろおろと、所在無さげに視線を彷徨わせる。みんなは目も合わせてくれない。


「…離して?」
「え、やだ」


即答される。
終いに困り果てた私は、ちょうど傍に居たライナーへと視線を向ける。
「助けて」と目線で訴えられた彼は、気まずそうに目を逸らした。
てっきり助けてくれると思っていた私は、思わず立ち上がろうと足を動かす。
が、ベルトルトの腕に遮られ少し浮いた腰はまたベルトルトの足の間へと鎮座する事となった。
ライナーが気の毒そうに呟く。


「…悪い、俺にはどうにもできない」


そこを何とか、と言おうとした瞬間、私を抱き締める腕の力が強くなる。
ライナーと話した事でご機嫌斜めになってしまったようだ。
彼の腕が鳩尾に入ってしまったのか、一瞬悲鳴をあげそうになった。
「ベルトルト、」彼の名前を呼ぶと、腕の力は弱まる。

…どうやら離す気は毛頭ないようだった。

諦めて(開き直ってともいう)、彼の肩に自分の後頭部の体重をかける。
すると彼は待ってましたと言わんばかりに私の頭へと頬をすり寄せた。犬みたい。
機嫌が回復したのか、ベルトルトは私にしか聞こえない声でぽつり、囁く。


「……名前は人気者で、すぐ色んな人に囲まれちゃうから、今日はこうして僕がずっと一緒に居るんだ」


「ねえ、いいでしょ?」と。小首を傾げていうものだから、もうどうしようもなかった。苦笑いした。
そういえば最近、色んな人と絡みまくりで彼にはあまり構ってあげられなかったかもしれない。
彼は人並み以上に嫉妬だってするし、何より寂しがり屋だった。
彼なりに今まで我慢してきてたのかな、と思うと熱苦しいのも周りの視線も、我慢できるものへと変わっていく。


「…甘えんぼ」
「うん、名前限定の」


しっぽがあればぶんぶんと振っているんだろう。
ふにゃふにゃと緩みきった表情でベルトルトは笑った。





不安定で無粋でたまらなく愛しい




20130530 title by「確かに恋だった」

***
ふおおおおおおおうわあああああああ(ゴロゴロバッタンバッタン)
可愛すぎるベルトルト…私にはかけないベルトルトに大変感激しております…!
窓様大変ありがとうございました!一生の宝物にします!!
窓様のサイトへはlinkから飛べますのでどうぞ!
本当にありがとうございました^^*

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