小説 | ナノ


  肌を滑る指先



東亜と2人並んでソファに座ってテレビを見る。
とはいえ、見ているのは私だけで、東亜自身はテレビをぼんやり見やっているだけのようにだった。


「…時々お前の趣味が分かんなくなるよ」


『そう?』


「ホラーは駄目なのになんで拷問器具のドキュメンタリー見てんだ」


『…なんでだろう』


特に理由はない。
ドキュメンタリー番組の中でも、歴史に関するものが好きだからだろうか。
因みに宇宙とかそういう小難しいものはあまり好きではない。
そこで私たちの会話は途切れ、私の意識は再びテレビに向けられる。
自分の体重を利用したもの、熱を利用したものなど様々なものが登場するのを見ていると。


する、


『ひゃっ』


東亜の回された手で腰からわき腹を下から上へと撫でられた。
最初は軽く触れていたのに、何かを確かめるように動くその長い指にいちいち反応する体が恨めしい。
東亜のほうに視線を向ければ、どこか考えているような表情を浮かべていて。
いつもならば人の悪い笑みを浮かべているはずなのに一体どうしたのだろうか、と首を傾げてしまう。


「…やっぱり、お前痩せすぎじゃねーか?」


『え?』


「いや、軽い分には持ち上げたりしやすいから助かるんだけどさ」


俺力ねーから、という東亜の腕は、児島さんや出口さんに比べたら一回りも細い。
元々スポーツマンというわけではなかったから当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
それでも、女がうらやむほど細いその腕で私はいつも持ち上げられたり抱えられたりしている。


つつー、


『ひぁっ』


「ほら、肋骨浮き出てるし」


『ちょっ、捲くらないでってばっ』


いつの間にか東亜の両手は服の中に侵入し、さわさわと肋骨のあたりを行ったり来たり。
時々不意打ちで腰骨にも指を這わせてくるから心臓に悪い。
はっきり言ってくすぐったいの半分、ゾク、と妙な感覚に陥るの半分だから直ぐに止めて欲しいのに。
ぐいぐいと東亜の両手を掴んで押し返しても、逆に東亜は手の力を強めてきて。
我慢できなくて変な声が上がるのを我慢できなかった。


『ちょっ、あっ』


「…ブラ、小さくなったんじゃねーの?」


『っ』


かああ、と顔が熱くなるのが分かる。
確かに最近きつくなってきたなとは思っていたけれど、なかなか時間がなくてその機会を逃していた。
しかし、何故東亜がそれに気付けたのか。


「ほら、あんまり体ねじると」


ふに、とブラの下部分からはみ出してしまった部分に東亜の指が当てられ、ふにふに、といじられる。
あぁもう!、と捲くれあがったシャツを掴んで無理やり下ろせば、それ以上弄るのを諦めたらしい東亜の手が離れた。
それに安堵のため息を漏らせば、今度は東亜の両手で彼の膝の上に乗せられる。
身体を固くしていれば、ぽす、と頭を撫でられた。


「変なことしねーからそんな固くなんなよ」


『(変な事してたって自覚あるんだ)』


内心そう考えているが、ここからなら東亜に私の顔を見られることはないからそう考えられているとは分からないはず。
テレビのほうに視線を向ければ、


≪次回は――…≫


『……』


「終わったな」


平然と言ってのけた東亜に少しムカついたから。
けしっ、弱い力で東亜の足を蹴った。



(ちっせー反抗)
(…怪我させたいわけじゃないもの)
(くくっ、)
(?)
(何でもねーよ(ぎゅ))
((知ってるよ、そんなこと))
((お前は、優しすぎるから))


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