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  タイバニ転生 03



と、言うわけで完成したヒーロースーツを見に纏って高層ビルの屋上からカーチェイスを見下ろすブラックキャットです。
イメージが黒猫だからって…なんのひねりも無い…。
因みにヒーロースーツはライダースーツみたいなやつです。
これ結構恥ずかしい、だって体のラインがまんま出てるから!
それなりに鍛えてるからお腹ぽっこりなんてことはないけどさ!一応基準体重下回ってはいるけどさ!
腰のあたりにはご丁寧に尻尾がついていて、こっちも感情に連動して動くようになっているらしい。
…妙なところに力を入れてるなんてことはケイハムさんの笑顔が怖いから言わないでおこう。
せめてもの救いは肌の露出が殆ど無いことだろうか。
手は黒の手袋だけれど、それをしてしまえば出ているところは顔ぐらい。
この顔だってマスクをフルフェイスにしちゃえば見えなくなってしまうし。
因みに今はフルフェイス状態、いつでも飛び出していける。
渡されたPDA以外に、この猫耳カチューシャ(?)にはラミアさんと直接通信できる通信機もついている。
随時周波数が変化するから盗聴される心配も周りに聞かれる心配も無いらしいけれど…だからなんでそんなに力入れてるのか謎ですケイハムさん。
はぁ、とため息をつけばラミアさんの声が聞こえてきた。


≪ハァイ#name#、準備はいいかしら?≫


『キャラ作りとか面倒です』


≪敬語!あとあんまり喋っちゃ駄目よ。クールアンドビューティーを狙ってるんだから!≫


『はぁ、』


≪口で語らない分目で語りなさい≫


『そんな無茶な…』


そうこうしているうちにどんどん逃げていく逃走車両。
見失わないように追いつつ、ラミアさんとの通信を続ける。


≪武器は何を使っても構わないわ…それじゃあブラックキャット、GO!≫


『Si.』


ラミアさんとの指示と同時にビルの屋上から飛び降りる。
このまま車が走行を続ければちょうどボンネットの上に降り立てる計算だが、万一間違ってても問題は無い。


『(何度も修羅場を抜けたてきたのだから)』


上から迫る私に気付いたのは逃げ続ける逃走車両でも、それを追うHEROたちでもなく、


「おぉーっと!?上から迫る黒い影!一体何者だーぁっ!?」


テレビ中継をしているヘリに乗り込んでいるリポーターだった。


「なっ、上から!?」


「見たことない子ねぇ」


車の中の気配を探れば気配は一つ。
あれ、確か人質を一人連れてるんじゃ…?


『ラミアさん、人質って救助したんですか』


≪ちょっ…はぁ、救助なんてしてないわよ?車の中にいるはずだけど≫


『犯人のNEXTは?』


≪え?相手の五感のうち一つを惑わせる、だったかしら≫


『成る程、』


おそらく犯人はNEXT能力で彼らに幻覚を見せたのだろう、人質という実在しない人間を。
人質がいないのなら思いっきりやれる。
車まであと少しというところで日本刀を作り出し、


「、ぇ」


すぱんっ、とエンジン部分を含む前部と、犯人が乗っている部分を切り離す。
綺麗に切り離された前部は慣性の法則に従って前に転がり、だいぶ離れたところで爆発。
犯人が呆然としている間に他の車両部分も切り刻み、犯人に刀の切っ先を突きつけた。


「ヒッ!」


『…終わり』


「おぉーっと!なんという早業!あっという間に犯人確保!だが人質がいない!?」


「そ、そう、だ!こっちには人質が!」


『…幻覚』


「なっ、」


『視覚は騙せても、』


気配までは、騙せない


そう呟けば、犯人は完全に戦意喪失。
刀を消して手錠を作り出し、それをちらつかせれば犯人は素直に両手を差し出した。


「どうやら人質は初めから居なかった模様!見事に見抜き鮮やかに犯人確保に至ったHEROは…今入った情報によると!新しいHEROの"ブラックキャット"だ!」


≪名前!マスク外しなさい!≫


『(え゛)』


≪カメラ回ってるんだから当たり前でしょ!?≫


ラミアさんの言葉にはもうため息しか出てこない。
まぁ、化粧してるし、目の色は金色、ウィッグも前髪ぱっつんでショートだからいつもとだいぶ違う。
早く早くと急かしてくる彼女の声にため息を飲み込んで、犯人を警官に引き渡してからマスクをいじる。
しゅ、と小さく音がして視界がクリアになると、カメラとか色々回ってるのがわかって思わず視線をそらしてしまった。
逸らした先には先ほど捕らえた犯人と警官がいて、目があってしまう。


『(うわ、気まず…)』


「っ、」


ひゅ、と息を呑んで顔を赤くした彼等に首を傾げつつ、手を犯人の頬に添える。
あぁ、なんだ、結構格好いい顔してるじゃないか。
こんなことしなければ普通に家庭を持って、幸せに暮らしていけそうなのに。


『もう、』


こんなこと、したら


『だめ、ね?』


「――〜〜っ、はいぃ」


ぼろぼろぐすぐすと泣き始めてしまった犯人の頭を優しく撫でる。
なんか…可愛い…いや年上って分かってるんだけれど…。
なでなでしているとラミアさんから通信が入った。


≪和んでないで!ほらカメラ!≫


『(はぁい)…』


ベスター撫でてるみたいで可愛かったのにな…と思いながらしぶしぶ手を放す。
無表情だから多分分かんないだろうけれど。
そらしていた視線からカメラ目線に戻せば、リポーターから質問の嵐。
え、え、と何から応えていいのか惑っていると、ラミアさんの声がする。


≪カメラ目線で!微笑んで!≫


『(はい!?)』


≪悩殺スマイルよ!ほら早く!≫


『(…ラミアさんそれ古≪ は や く ! ≫


笑顔って…苦手なんだけれどな…
大きくため息を飲み込んで、何も語らないままふにゃ、と笑う。
うわ…なんか気の抜けた笑顔になっちゃったけど…まぁいいか、なんか回りの皆動き止ったし。


≪そのままジャンプで退場!≫


え、放置?
まぁいいかとラミアさんの指示に従って飛び上がってその場から去る。
報道車とかトランスポーターとか看板とか色々足場にしちゃったけど…大丈夫だよね、壊れてないよね。
途中、青いヒーロースーツのHEROと目が合った。


『(なんて意志の強い目…)』


眩しくて懐かしくて守りたくなるようなその目を何時までも見ていたかったけれど、さっさと戻らないとラミアさんが煩い。
大きく跳躍してビルの隙間に消えるように、彼等から姿をくらませた。


黒猫の参入


『ワイルド、タイガー…か』


ボンゴレに、似てるね
(でも、やっぱり違う)

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