初めて彼とあったのは、暑い夏の日。
照りつける太陽の中に浮かぶ真っ白な風魔の制服は、私には眩しすぎた。
白に似合った太陽のような笑顔にも、目を細めるしかなくて。
初めて言葉を交わした時。
君の話す言葉は難しくてわからない、そう言えばすぐに標準語に直してくれた。
普通に喋れるね、そう返せば、しょうがあんべって、分からない言葉でからかってきたよね。
その時君の名を、錫高野与四郎だと知った。
あんがとな、なんて頭をガシガシ撫でられたときには、心臓が爆発するんじゃないかと思ったよ。
ドキドキと高鳴る胸、締め付けられる心臓。
人はこれを恋と呼ぶ。
私の初恋は与四郎くんに奪われてた。
だけど私は、この恋を諦める。
初恋は実らないじゃない。
ジンクスさえ憎い。
それからというと、彼は学園に来る度に私に優しくする。
そのせいで恋心は増すばかり。
実らないなら、会いたくないのに。
そして今日も与四郎くんは忍術学園にやって来た。
「お、南じゃんか!」
「あ…どうも」
「今日はおめーにつつっこ持ってきてやっただーよ」
「つつっこって?」
与四郎くんに会えるのは嬉しいけど、知らない言葉をかけられるのは辛い。
彼の言葉が私に届かないから。
それに、この胸の高鳴り怖いから。
だから今日は言ってしまおう。
「あの、お願いがあるの。もう難しい言葉は止めて、嫌いになる」
彼に悪気はないし、理不尽な事を押し付けているのは分かってる。
けどこれで彼が離れてくれれるなら、きっと諦められるはず。
恐る恐る顔をあげると、酷く悲しい顔をした与四郎くんがいた。
「南はオラのこときれーか?」
「…え?」
「オラはおめーのことこんだけ好いとーのに。
しょうがあんべ、おめーがあんせっても、好いとーよ…」
わからない、あなたの言葉が。
怒っていってしまえば、呆れて去ってしまえばいいのに、なんでそんなに悲しい顔をするの…
「なんか言ったらどうだ。」
「分かんないよ、全部。与四郎くんの言葉が伝わらないの、すごく辛いの…」
私の心を抉って帰るの?
最後まで言えなかった。
勝手に涙が流れてきたから。
「だからもう私には…」
「ごめん」
「謝らないで…」
「南には作った言葉を聞かせたくなかった。今度は普通に喋るからさ、だから嫌わないで…」
彼もまた、泣き出しそうな目をしている。
そんな顔しないで、私が悪いの。
彼を否定したのは私だから。
「…私も、ごめん。与四郎くんの言葉が知りたいよ。与四郎くんの言葉の意味が知りたい」
叶わなくったって、優しすぎる与四郎くんを諦められるわけない。
でも、聞きたい。
「どうしても?」
「ダメかな」
困ったように笑われれば、また跳ねる心臓。
聞きたいよ、君の言葉。
「ひとつだけだからな」
「うん」
「俺は、お前の事が…」
"好きだよ"
大好きな笑顔が、太陽のように咲いた。
ひとつだけおしえてあげる
提出:直哉さん