「あ、雨…」
雨が降り始めたのは、丁度5時間目の授業が始まった頃だった。
最初は小雨だったから直ぐに止むかな、とかあんまり真剣には捉えてなかった雨…しかしこれはどうだろう。
空を見上げればバケツをひっくり返した様な雨と、時々薄暗くなった周りを照らすと同時に爆音を耳へ届ける雷。
所謂、雷雨なのだけど。
私はこんなときに限って傘を持ってきていない。
委員会もあったからみんなの下校時刻とずれて、今は6時過ぎ…
友達はみんな今頃家に居る頃だろう。
「お母さんもお父さんも仕事だしなあ…」
頼みの兄も『今駅なんだけど電車動かない!』って当分は無理そうだったから諦めた。
「はぁ…どうしようかなー」
「あれ、朝倉さん?」
途方に暮れていた時ふと聞こえた声。
たしかこの声は同じ委員会の
「不破君?」
「あ、良かった。合ってた」
ふわっと笑って胸を撫で下ろした不破君を見て、あれ?って思った。
確かに委員会はあったけど、今日の当番は私のクラスだし…何故にここに不破君が居るんだろう?
そんな疑問を抱えた私は顔に出やすかったらしい。
不破君は苦笑いしながら実は、と話出した。
「進路の話で先生と話してたら悩みすぎて今の時間になっちゃったんだ」
あー、そういえば不破君は悩み癖有るんだったっけ?
そうだったんだ、と私は言葉を返してからまた空を仰いだ。
あ、雷止んだみたい。あとは雨、か…
「雨、止まないかな」
「朝倉さん、傘忘れちゃったの?」
「うん、そうなんだよね…」
肩をすくめながら言えば何やら悩み出した不破君。
え?なんで???
しばらく様子をうかがっていれば、よし!と言って私に向き直った不破君。
少し頬が赤い気がする、のはただの気のせい?
「あ、あの!朝倉さん良かったら、なんだけどね」
「う、うん?」
「僕の傘、入ってく?」
その言葉に私は少し間を置いてから「え?いいの?」と聞けば「うん、いいよ」と少し照れながら柔らかく微笑んでくれた不破君。
そんな不破君の言葉に甘えて私は大雨の中、不破君と共に下校した。
雨と追撃
後日、この時の相合い傘が原因で不破君と付き合っている、と言う噂が流れて、私と不破君の顔が赤くなる出来事があったが…
それはまた別のお話。
提出:乃木 楓さん