一週間ほど前に、この僕に世間でいう彼女というものが出来た。相手は、一ヶ月前まで話したこともなかったような隣のクラスの女子。
勉強にしか興味の無かった僕が恋愛に目覚めるなんて。信じられないことだったが、でも彼女を想う気持ちは紛れもなく恋だった。

彼女を最初に意識したのはある日の休み時間。教科書を見ていたために俯かせていた顔を上げて、こった肩を軽く回しながらふと何気なく窓の外に顔を向けたのが始まりだった。
そこからは運動場が見渡せて、アホの三組たちがアホ面を下げてサッカーをしているのが見えた。
さすがはアホの三組。能天気に遊んでるなんて、などと思っていると、その中に一人だけ女子が混ざっているのに気付いた。それが彼女だった。
男子に負けずにボールを追いかける彼女はこんな遠くからでも分かるほど笑顔で、その眩しいほどの笑顔に何故だか僕の胸は高鳴ったのだ。
それから僕はずっと彼女が気になって、アホの三組にも兵太夫に用事があると偽って行ったし、その時に姿を見れるだけで嬉しかった。
全くと言っていいほど接点が無かった僕と彼女が、今付き合うことになったのはこの努力が実ったからなのだろうか。


そうして今日。付き合ってから初めての休日を迎えた僕たちは街に出かけることになった。
僕も彼女もこういうことは初めてなので何をしたらいいのか分からない。こういう時は男がリードするものなのだと聞いたことがあるので、僕は前日からインターネットでおすすめスポットなんかを調べた。
そして昨日考えたプランを頭の中で思い返しながら、待ち合わせ場所まで行く。そこには彼女が居て、僕は見慣れない彼女の私服姿にさっきまで頭にあった今日の予定は全て吹っ飛んでしまった。
服には何も触れられずに僕たちは待ち合わせの常套句を二言三言交わして歩きだした。あぁ、かっこ悪い。こういう時はさらりと「その服可愛いね」って言うのがかっこいい男なのに。

そんな失敗から始まったデートは、結果から 言えば散々だった。この後の予定もすっかり忘れてしまったので全体的にぐだぐだだった。
かっこよくエスコートしようと一歩先を歩けば何かに躓いてこけてしまうし、隣の彼女に気を取られすぎて目の前のガラスに気付かずにおでこを強かに打ってしまうし、かっこ悪いことこの上なかった。
もう帰るという時には膨らんでいた気持ちは萎んでしまい、彼女に呆れられて別れを切り出されるのではないかとすら思った。
「じゃあ、また明日ね」
「あぁ、また明日」
大きく手を振る彼女に頷いて、踵を返した瞬間。
「黒門!」
名前を呼ばれて振り返る。
彼女は初めて見た時と同じような眩しい笑顔で言った。

カッコつけんなよカッコ悪いよ


僕はその言葉に、かあっと頬が熱くなったのが分かった。


提出:那佳さん



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