「ほっんとかっこいいー!」
「まーた言ってんの?」

幸せそうに女の顔をする友人の顔を見つめて、私は苦笑する。あっはっは、口を開けばやれかっこいいだ、やれ勇ましいだ、などという言葉が鎮座する彼女の頭のなかは俗にいう恋する乙女で、言動うんぬんは苦笑する私の反応は正しいだろうが、女の私から見ても可愛い女の子で、なんだか羨ましい。
だけど、そのかっこいいと言っている相手が、幼なじみだからか私はあんまり気が乗らないのだ。

「おーい!おばさんに饅頭のお礼言っといてくれー」

噂をすればなんとやら。
目があい、少しだけ遠くから投げ掛けられた声に片手をあげることで応えた。途端にさっと顔を隠して、どうしようどうしよう!と狼狽えだす乙女な彼女に呆れながら、話してみなよ、と耳打ちしてもむりむりむり!と顔を真っ赤にして否定する様で。

「そんなんじゃ、誰かにとられちゃうよ?」



そういって、カラカラと笑って言えたあの日の自分に今では拍手を送りたい。彼女は私の言葉に火が点いたのかなんなのか、あれよあれよという間に友達になり、親密になり、それから、
それから。

「本当にいい子だな!まさかお前の友達とは!」
「やめてください、清八さんー!」

目の前でラブラブチュチュ。なんだそれ。急激に冷えていく心の奥と指先。あれ、どうしてこんなことに。キャッキャ!と楽しげに話している2人にを見つめながら寂しい気持ちと嬉しい気持ちとそして侘しさと切なさ。

だから、気付いてしまったのだ。彼女を祝福している自分と、彼女の好いた人、清八を私も好きだった自分がいたことに。

「結婚しちゃえばいいいのに、」

実らない恋なんかに気付きたくはなかった。実らない恋なんかに振り回されたくはない。実らない恋は確実になってしまえ。

私の初恋は気付いた瞬間なくなって、私の言葉に2人は微笑んだ。
はいはい、お幸せに。


提出:ごみの人さん



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