毎日毎日、怪我を作って医務室に来るくのたまがいる。今日もまたぼくは彼女の手当てをしなければいけない。
今では学年と名前を聞かずとももうすらすらと書けてしまうほど慣れっこだ。
訪問者欄にくのいち教室二年朝倉南と綴り、わざと音をたてて朝倉を振り返る。音に驚いたようでびくり、と肩を震わせた。…ぼくが苛めたみたいじゃないか。


「で、今日は何の傷なの」
「あ、うん。今日は手裏剣で指を切っちゃって」


これ、と右手を出されて見てみると、見事にぱっくりと指先が切れていた。いったいどういう使い方をしたら手裏剣でこんなふうに指を切ることができるんだ。
えへへ、と困ったように笑う朝倉の額を指で弾く。
痛い、と左手で額を押さえて涙目でぼくを見つめてきた。…もしかして、睨んでるの?それで?
呆れて溜息が自然に出る。


「まったく、朝倉はどうしてこんなに鈍臭いんだ」
「鈍臭っ…!?わ、わたしそこまで鈍くないよ!ひどいのは、その、手裏剣くらいだもん」
「じゃあその捻った足は何」
「気づいてた、の?」


塗り薬を朝倉の指に塗りながら呆れて文句を言う。白くやわらかな手に触れた瞬間、何故か胸の奥が弾けるような感覚に襲われる。最近、いつもこうだ。
ぼうっとしていると、朝倉は少し怒ったように言い返してきた。でも鈍臭くないならどうして何もないところで転ぶんだろうか。
朝倉がここに頻繁に来るようになってから、彼女から目が離せなくなった。気がつけばどこかにぶつかってたんこぶを作ったり、まったく忙しい奴だよ。
しかも足を捻挫したくせに今黙ってたし。ぼくが気がつかないわけないじゃないか。


「いつも見てるんだから、気がつくに決まってるだろ」


ぽかん、と朝倉がぼくを見つめてきた。何。…ぼく、何か今とてつもなく恥ずかしいことを言った気がする。
朝倉の手を握る自分の手がばくばくと脈打った。
お互いに顔を真っ赤にして見つめあっていると、朝倉が目をそらして小さく呟いた。


「わたしが毎日この時間に医務室にくるのは、川西くんがいるからだよ」
「…は?」


川西くんに手当てしてほしいから、毎日怪我して来るんだからね。
忍び装束と同じ桃色に染まった朝倉の顔から、ぼくは目が離せないでいた。


きみしかいないんじゃなくてきみじゃなきゃダメ



提出:如月アスカさん



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -