「・・・・」
『あ、もしもし土方くん?』
「・・・・こんな遅くになんの用だ」
『・・月、今日満月だね』
「月・・・・?」

携帯ごしから聞こえる声に導かれ、ふと空を見上げる。そこには大きな満月がこちらを照らしていた。

『土方くんも見てる?』
「あぁ」
『今何処にいるか分からないのに、見てるものが同じってなんだか嬉しい。近くにいるみたい』
「・・・急にどうした」

いつもと様子がおかしい。
それは直ぐに分かった事だったが、一体どうしたというのだろう。
何かあったのかなんて直球に言ってもいいものか迷ったが遠まわしに聞いてみる。

『怖い夢みちゃった。とってもとっても怖い夢』
「・・・・」

声が、震えている気がした。

『仲間や大事な先生が皆死んじゃうの』

誰のことを言っているのかは分からなかった。
その先のことを深く聞くことはしなかった。
けど、あいつの過去があいつを縛り付けているのなら。

「手を月に向かって伸ばしてみろ」
『手・・・?』
「したか?」
『うん』
「俺も同じことしてる」
『・・・・』
「俺がどこにいようと、地球上にいるかぎり、お前と同じものに手を伸ばすことが出来る」
『・・・・・・』
「安心しろ、俺はここにいる」
『・・・・!・・・・うん』
「お前から離れたりしねぇから」
『うん・・・』

その縛り付けているものを壊すことは出来ないかもしれない。
けどその手伝いぐらいは俺にだって出来るかもしれない。


『じゃぁね、バイバイ』
「銀時・・・・?」

電話が切れる。唐突に。
手助けすらできないのか俺は・・・っ!

気付けば、走ってた。









「銀時!!」
「土方・・・・くん?」

久々の全力疾走。煙草の吸いすぎか・・・・息切れがする。
あいつは玄関の前で空を見上げていた。俺の声にびっくりしたのかこちらを目を丸くして見ている。
急いで階段を上ってあいつに近づいて抱きしめた。

「いなくなっちまうのかと・・・思った・・・・」
「・・どうして・・・?」
「お前の、声が・・・」

寂しそうで、今にも消えそうで。もうあのまま会えなくなるんじゃないかって。
離したくなくて、抱きしめる腕に力が入る。
そんな俺を銀時は優しく頭を撫でた。

「土方くんの声を聞いてるとね、安心して泣きそうになるんだ。だから恥ずかしくてさ、切っちゃった。ごめんね」

そう言った銀時の目からは透明な光るものが見えて。

「馬鹿・・・心配させやがって・・・」

俺もそれと同じものが目に浮かんでくるのが分かった。

「しょうがねぇから今日はずっとお前といてやる」
「え・・・」
「安心するまでずっといてやるって言ってんだよ!」
「土方くん・・・良いの?銀さん襲っちゃうかもよ?」
「・・・・今日だけは許してやるよ」

手と手が絡み合い、自然と唇を重ねる。
きっと二人の糸は切れることはない。そう信じて。










END
---------------------------------------
余裕のない銀ちゃんを久々に書いてみたかった!!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -