―最悪だ。

俺はあいつを悲しませることしかしてない。
今朝目が覚めたらあいつはいなかった。
食卓には朝食がきちんと並べられていて。
いらねぇっつったのにと思いながらもあいつの料理を口に運んだ。

「美味い・・・」

俺はなんて子供なんだろう。
最初はただの好奇心。
でもいつの間にか、あいつにもっと触れていたいと思っていた。
そしたらあのざま。
きついことばっか言って、行為を理解できていないのを利用して無理矢理犯して。
あいつは只のロボットじゃねぇか。人間とは違う。

けど、あいつの悲しむ顔を見るとこっちまで胸が締め付けられるような思いだ。
嫌なことを一つも口にせず、笑顔を絶やさず頑張っている姿を見て癒されてた自分がいた。
しかし反面ムカついていたのも事実だ。なんでも出来てしまうあいつを見てると、今までの自分が否定されているようで。
けど、完璧な筈なのにあいつの笑顔はいつも”偽りの”笑顔だった。
心の底から笑っていない。ロボットだからとかじゃなくて、なんか・・・違うんだ。どう言えばいいのか分からないけど。
本当の笑顔で笑っていて欲しい。そう思うようになっていて。

それは、何故?

答えの道は一つしかなかった。
その道のゴールにたどり着いてしまった俺は頭を抱えて「ほんと最悪」と呟いた。



***

「あ、・・・おおおおはよう、ございます・・・」
「ん・・・」

先に署に着いていた土方は高杉を見るなり慌てて挨拶をする。
かなり動揺している様子で、高杉もなんとなく気まずく挨拶を交わす。

「おい、依頼だ。今回はかなり危険だから気をつけろ」

二人に渡された依頼は廃墟を拠点としている謎の暴力団の逮捕。
その廃墟の場所をつきとめた為その場所へ行ってほしいとの依頼だった。

「おいおいこれまじでめんどくせぇ依頼頼まれちまったな」

暴力団の逮捕は何度か経験したことがある。
どの時も命がけだった。
相手は拳銃を必ずと言っていいほど持ち歩いている。こちらも持ってはいるが、日本で拳銃の発砲は警察だとしても進められていない。本当に命の危機に面していないと発砲すれば後々面倒になるのだ。

―ほんと面倒な国だぜ

舌打ちすると、後ろにいた土方が口を開いた。

「何かあれば俺を使ってください。盾にでも何にでもなります」

凛とした表情で高杉を見つめる。

「別にお前がいなくたって、一人で出来る」
「高杉さっ・・!」

高杉は土方の言葉を最後まで聞かず、足早に記されている廃墟へと向かっていった。

―俺は、何をしているんだろう。

素直になれない自分に苛立つ。
本当はこういう会話をしたい訳じゃない。
謝りたいはずなのに、口から出てくる言葉はどうしても相手を傷つけてしまう言葉ばかりだ。



「ここか・・・」

着いた場所は人気の無い森の中にあると言っていいような廃墟だった。
気付かれないようゆっくりと足音をたてないように歩く。
廃墟の中に入ると拳銃を取り出し顔の近くに拳銃を持っていき神経を研ぎ澄ませる。
奥へ奥へと入って行くと大きな扉が一つ。

―この部屋にいるのか・・?

ゆっくりと扉を開けると―

「誰も・・・いない・・・?」

そこはガランとして人の気配は全く無かった。

「・・ち、なんだよ、デマだったのか?」

そう思った瞬間だった。

「!?!?」

複数の爆発音が高杉の周りから木魂する。
一体何個の爆弾が爆発しているのだろうか。確実に数十個はあるだろう。
その爆発の衝撃で部屋の壁や天井が高杉に向かって落ちてくる。

「くそ、嵌められたか!!!」

警察に感づかれたのを気付いた犯人達は、廃墟に無数の爆弾をしかけていたのだ。
もはや高杉は逃げられる状態ではなかった。

―あぁ、俺死ぬのか。
―まだ土方に謝ってもいえねぇのに。
―つか一人で出来るなんて行って飛び出して死ぬなんてほんとかっこ悪。

死を前にしているというのにいやに冷静になってしまっていた。

―死ぬ前に過去の出来事がフラッシュバックするっていうのは本当なんだな。
―ククッ。あいつしか浮かんでこねぇじゃねぇか。

「高杉さん!」

―やべぇ、幻聴まで聞こえてきた。

「高杉!!!!!」

―え?

幻聴ではなかった。
声をする方を向くと土方が物凄い勢いでこちらへ走ってきている。

「な・・・っ!!」

壁や天井が高杉に向かって落ちてくるほんの数秒間の出来事。
彼にとっては長くスローモーションのように時間が流れた。




Continue.......




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