いつもいつも俺が優秀なはずなのに。

売り上げ1位は毎回俺だった。
それなのにどうしてあいつは俺よりも信用され周りに人が沢山いるのだろう。
別に嫉妬している訳じゃない。ただ、納得がいかない。
・・・・いや、少し嘘をついた。本当は羨ましいと思っている。
あいつの笑顔は周りを巻き込み柔らかい雰囲気をその場に作り出す。

「土方くん」
「ん?どうした?」

パソコンに向かいカタカタとタイピングしている土方に話しかける。

「この資料君が打ったのかい?ここが間違っている」
「あ、すまん!ほんとだ・・・」
「最近間違いが多くないか?しっかりしてくれ」
「あぁ・・・悪い・・・」
「おいおい、ちょっと伊東言い過ぎなんじゃないか?」

・・・・ほらまた。
こうやって間違いを指摘すると、誰かが俺に言い方がキツイだのなんだの言われる。
俺は間違っていないはずなのに。

「伊東は悪くないよ、俺の失敗だからさ」
「にしても言い方が・・・」
「伊東を悪く言うな!」

土方の叫び声が仕事場に響き渡る。
あまり大声をだしたり怒ったりしない土方が珍しく大声を出して怒ったため、シーンと静まり返った。

「俺、伊東のこと尊敬してるんだ。毎月売り上げ1位だし、俺も伊東みたいになりたいなって・・・」

少し恥ずかしがりながら俺に話す。

俺は・・・俺もお前と同じだ。
お前のようにあんな風に笑ったり出来ない。
ただ俺は人形のように、ひたすら上に従い働く。
俺はお前が羨ましい。

「なぁ伊東」
「なんだ」
「今度飲みに行かないか?俺にどうすれば売り上げが上がるか教えてくれよ」

土方から飲みの誘いなんて初めてだった、というよりこいつはあまり飲みなどには参加しないと聞いていたのだが。
そのことは本当だったのか、他の社員もびっくりしながら土方を見ていた。
俺に持っていないものが沢山ある土方にいつしか惹かれ、好きになっていたように、土方も俺のことを・・・いや、こいつはかなり天然だ。ただ純粋に俺の技術を応用したいだけかもしれない。
けど初めて自分の成績をこんなにも喜んだことはないだろう。

「あぁ。とことん教えてやる」

仕事のことだけじゃなく、な。






END


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