別に、成績が悪い訳じゃなかった。
自分でいうのもなんだが、上・中・下で分けると、上の分類に入ると思う。
ただ近かったから。先生にはもっと上の高校を薦められたけど勉強が好きな訳でもない。だからそれを押し切ってこの銀魂高校に入学した。

入学式も終わり1-Z教室に入り黒板に貼られている座席表を確認し自分の席へと座る。
各々期待と不安が交差している。自分も例外ではない。
不人気なのかこの学校にはあまり中学の友人がいないのだ。
かといって話しかけるような積極的なタイプでもないし、急いで友達を作ろうとも思わない。
先生を待つ間することもなくぼーっと座っていると、ふいに声をかけられた。

「土方くんでいいのかな?」

声をした方を向く。
すると眼前にはゴリラが立っていた。
あれここってゴリラも入れる高校だっけ?
一瞬焦ったが、よく見るとゴリラに似た人間だ。
ゴリラじゃなかったことに一安心し、俺は「そうだけど」と返した。

「そーかそーか!俺は近藤!座席表見たんだけど土方くんの前の席なんだ!宜しくな!」
「あ、はい・・・よろしくお願いします・・・」

ニカッと笑う近藤という男。その顔に似つかない爽やかな姿に先ほどまでの緊張が溶け、安心感を覚える。

「なんで敬語なの〜?同い年じゃないか!」
「いや、だって・・・」

どう見ても同い年には見えない。と言おうとしたが思いとどまる。
なんというかこの男には貫禄があるというか。どうしてもタメ口では話しにくいオーラが出ている。

「土方君の下の名前は?」
「十四郎です」
「十四郎か〜、じゃぁトシって呼んでもい〜い?」
「あ、はい良いですよ」
「だからタメ口でいいって〜」

そう言ってはっはっはっと笑う近藤さんはどうやっても同じ高校生には見えなかった。

「ちなみにトシの後ろの席で寝てる総悟は俺と中学一緒だったんだ。仲良くしてやってくれ。」
「はぁ・・・」

後ろを振り向くと、腕組をし顔を少し上にあげ、アイマスクをして涎を垂らしながら寝ている栗毛頭の男。
そのアイマスクには目が描いてありなんだかバカにされているような、腹の立つアイマスクだった。

「俺、トシとはなんだか気が合いそうな気がするなぁ〜!」

腹の立つアイマスクを眺めていると、近藤さんがそう言う。俺は向き直り近藤さんの顔を見るとまたしてもニカッと笑う。何故か近藤さんの笑顔は安心感が増幅する。
いつの間にか自分も笑顔になっていることに気付いた。もしかしたら本当に気が合うのかもしれない。
新しい学校生活に光を見つけたように思えた。

「あ!!!お妙さああああんんんんん!!!!!」

急に大きな声に驚きつつ叫ばれた相手を見る。相手はどうやら同じクラスの女子。
女は顔はニッコリとしていたが顔と言葉のギャップに驚いた。

「あらー?何故ゴリラが学校にいるのかしら?先生を呼んで駆除してもらわなくちゃ」
「お妙さん!俺はゴリラじゃありません!!近藤勲というれっきとした漢です!!」

そう言いながら近藤さんが女に抱きつこうとした途端、女のこめかみから血管が浮き出た。

「ウザイんじゃこの糞ゴリラがあああああああ!!!!」
「あばぶあああああ!!!」
「近藤さん!?」

股間を思い切り蹴られ吹き飛んだ近藤さんに駆け寄る。

「そのゴリラの面倒、後は宜しく」

ニッコリと笑い俺に言う女は、女とは思えない恐ろしさを感じた。

「近藤さん大丈夫ですか?」
「えへへー、大丈夫大丈夫。愛するお妙さんの為ならこれしき!」
「・・・あの女のことが好きなんですか?」
「うん、大好き!愛してます!」


ズキン。
胸の奥が傷んだ。

でも別に気にしなかった。
その時はまだ、この胸の痛みがなんなのか知るよしもなかったから――。




END
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4月ということで近土の出会いを。
後々近藤が「あれもしかして俺トシのこと好き?」とかなったらいいじゃないか!

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