はじめに。

「犬、洗脳。」の続きになりますので先に「犬、洗脳。」を読むことをおすすめします。
死ネタですのでご注意ください。


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「くそっ!なんでいないんだ!!」

バンッと机に手を叩きつけ大声で叫ぶ。
周りの隊士も見つけられない苛立ちや不安、それぞれ胸になにかを込めているようだった。

「逃げ出したかもしれやせんって何度も言ってるでしょう」
「トシに限ってそんなことするはずが無い!トシの真選組を思う気持ちは人一倍だ・・総悟だって分かってるはずだろ?」
「・・・じゃぁなんで見つからないんですか!!!・・・どうして・・・・っ!」
「総悟・・・・」

逃げ出した。その方がまだよかった。何ヶ月探しても土方をみつけることが出来ない。考えられる答えは一つしかない。沖田は泣きながら近藤に訴えた。

「生きてる」

隊士たちの後ろから自信をもった声が聞こえてきた。

「きっと生きてる。アイツはくたばるような奴じゃねぇよ」

皆が声のした方を向く。そこには銀時の姿があった。土方の姿が消え、銀時も真選組と一緒に捜索していたのだ。
誰かが否定も肯定もする訳ではなく。ただ皆銀時を見つめる、その時。
ダダダダダと廊下を走る音が聞こえ。

「局長おおおおお!!!!土方さんがいました!!!!」

興奮気味の山崎がそう叫ぶ。
みな目を丸くし山崎の方を見る。近藤は山崎に飛びつき胸ぐらを掴むとわさわさと激しく揺らす。

「どどどどどどどこ!?!?どこに!?!?」
「おおお落ち着いてください局長っ苦しいっっ・・・」
「す、すまん」

慌てて手を離すと山崎は咳き込みながら話した。

「もう、すぐそこに・・・でもなんか様子がおかしくて・・・」

「様子がおかしい」その言葉を聞いた途端銀時は部屋から飛び出した。
隊士たちも後を追うように外へと急ぐ。

「土方!!!!」

目の前から歩いてくるのはずっと探し続けていた男。
土方の下へと駆け寄る。

「ひじ・・・かた・・・?」

目の前に立つが土方は俯いていた。不思議に思い顔を覗き込むと感じたことのないような殺気。
その殺気に身が引け一歩後ろに下がった瞬間。
腰から刀を引き抜き、そのまま銀時に切りかかった。

「っ!?」

間一髪木刀で刀を受け止める。
土方の異様な様子に後から追ってきた隊士たちも気付く。

「トシ!?」

叫び声にピクリと動きを止め近藤の方を見ると、今度は近藤に刀を向け切りかかる。

「殺ス」
「と・・・し・・・?」
「近藤さん!!」

沖田が名前を呼ぶが今起こっていることに理解できない近藤は反応することができない。
ただ呆然と動けないまま土方を見つめ―

―キンッ

刀と刀が重なり独特な金属音が鳴る。
沖田が近藤の前に走りこみ土方の刀を受け止めたのだ。

「土方あああ!!頭おかしくなっちまいやしたかあああ!!」

怒りを込め土方に叫ぶ。
たが土方は何も言わず刀に力を込めている。その瞳は濁り、まるで何かに取り付かれているようだった。

「あ〜あ〜、気が早いんだから十四郎は」

その声を背中から聞いた土方は刀をおろし、そちらの方に体を向ける。銀時の横に並びニッコリとした目で土方に話す神威。

「なんでお前が・・・・?」

驚きを隠せない銀時は瞳孔を開きながら神威の方を見る。それは銀時だけではなく隊士たちも例外ではなかった。
隊士に限っては神威という存在を知らない人が多い。
それなのに「十四郎」と名前で呼ぶ姿にどうやら混乱しているようだった。
どうしていいのか分からない状況に一人、土方は神威の下へと歩み寄る。

「十四郎は俺のものになったから、今から一緒にお侍さんを倒そうと思ってね」

見上げるように顔をあげ土方の頬に手で触れる。土方は嫌がる様子もなく神威を受け止めていた。

「俺はね、真選組なんかに用はないんだよ。阿伏兎」

名前を呼ぶと後ろにいた阿伏兎が真選組に向かって走り出す。一人の隊士が阿伏兎によって倒される。
今置かれている状況に気付いた隊士たちは刀を振りぬき、一斉に切りかかって行った。

「さて。今から楽しいショーの始まりだ。十四郎、憎い相手が目の前にいるよ、殺しな」
「あぁ」

土方は銀時の方を振り向くとゆっくり銀時に近づいていく。

「土方・・・お前、何かされたのか・・・?」

そう問うが返事は無い。土方は飛び上がり銀時を目掛け刀を振り下ろしながら飛び込んでいく。
銀時は戸惑いながらもそれを木刀で受け止める。木刀はミシミシという音を立てながら刀に堪えていた。

「土方・・・目ぇ覚ませよ・・・!!土方あ!!!!!」




「銀・・・・時・・・・・・?」

睨みあっていた二人だったが、一瞬土方の目の色が戻ったように思えた。

「土方・・・?」

その変化に銀時も気付いたのかもう一度名前を呼ぶ。
銀時が土方に触れようとした瞬間。


「隙見っけ」

土方の後ろから神威が飛び出す。そして銀時の腹に自分の持っている傘を突き刺した。
丁度死角になっていた場所から現われた為、なんとか急所は避けることができたが直に攻撃を受けた。
傘を引き抜くと、腹からは大量に血が流れ始めた。

「ぐ・・っ・・」
「どうして力緩めたのさ、ちゃんと殺さなきゃ」
「あ、あぁそうだな、すまん」

一度取り戻したかに思えた記憶は神威の妨げによって、またも記憶は奥深くに沈められる。
大量の出血は体力を奪い、銀時は顔を痛みで歪ませ手で腹を押さえながら地面に膝をつく。

「逃げろ土方・・・お前は間違ってる。俺のことは殺せばいい、だが真選組を殺すなんてお前はしちゃいけねぇよ・・・。神威から離れろっ・・・」
「・・・・」

その言葉を聞き、土方の目はゆらゆらと戸惑いで揺れていた。どうしてそんなことを言うのか、コイツは憎い奴じゃないのか。頭の中が混乱する。

「十四郎に殺してもらおうと思ったけど、やっぱ俺が仕留めよう。なんか腹立つ」

神威は珍しく不機嫌な声でそう言った。そして手を大きく振り上げ―

「・・っ!」


逃げることは出来た。けど逃げるより土方とちゃんと向き合いたかった。きっと想いが心に届いてくれると信じて。
銀時は死を覚悟し目を閉じた。しかし、痛みは先ほどと変わらない。
ゆっくりと目を開くと、予想だにしなかったものが眼前に広がっていた。

―ゴフッ

口から大量に血を流す。神威の腕が人間の体を貫通している。その人間は・・・土方だった。銀時を庇い自らを犠牲にして。

「十四郎・・?」

神威も予想出来なかった行動に驚き腕を引き抜く。その反動で土方はがくっと崩れ落ちた。

「土方!!!!!」

倒れた土方を銀時が両腕で支える。

「お前・・・なんで・・・・!?」

呼吸も薄くなってきている土方に涙を浮かべながら怒る様に叫ぶ。

「分かんねぇ、けど、体が、勝手に、さ。・・・俺、昔の記憶を思い、出せないんだ。ただ、お前が憎いって思う気持ち、だけあって。けど、何か、大事なことを・・・」

途切れ途切れに話していたが、また口からガバッと血を吐く。

「もう喋るな!!病院へ・・・!」

そう言って抱き寄せる。

「なんか、お前、に、抱きしめられると、安心、する・・・」
「だから喋るなって!!!」
「喋らせてくれ、もう、きっと、時間がない・・・。ぎんとき







お前は、俺のこと、好きか・・・・?」

銀時は覚悟を決めたように力いっぱい土方を抱きしめた。

「当たり前だろ!!!!お前がどんなに俺を嫌おうが、俺は土方を嫌いになんてならねぇ!!!!」
「・・・そうか」

微笑みながら土方は力ない腕で銀時の背中をぎゅっと抱きしめ返す。

「嬉しく思うの、は、何で、なんだろうな・・・・」
「それは銀さんのことが好きだからなんじゃないの?」
「・・・そう、なのかも・・・な。俺、は・・・・―」

抱きしめていた腕が力なく下ろされる。瞼も閉じ、口も開くことはなかった。

「土方・・・・?」

名前を呼ぶが返事はない。

「あーあ、もしかして死んじゃった?」

つまらなさそうに神威がため息混じりに話す。

「阿伏兎―、つまんなくなったから帰る」

何人も押し寄せる隊士たちと互角に戦っていた阿伏兎が足を止めた。

「死んだのか・・・?」

抱きかかえられている土方を見、言葉を漏らす。
その言葉に誘われるように隊士たちも動きを止め銀時たちを見る。

「トシ・・・・?トシいいいいいいいいい!!!!!!」

刀を放り投げ血を流し動かなくなっている土方に皆駆け寄った。
それを見ながら阿伏兎と神威はその場を去って行く。

「俺の玩具壊れちゃったよ、残念。また新しい玩具探さないと。ま、替え時かなとは思ったけどさ」
「・・・・それにしては泣きそうな顔してるように見えるが」

神威は俯き顔は見えなかったが、阿伏兎には表情が見えているのだろう。
図星をつかれ、神威は悲しそうに笑った。

「愛は人を動かすんだ。良いようにも、悪いようにも、ね」





END
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あとがき

「犬、洗脳。」を書いてたら銀時と土方を絡ませたくなりまして。
こういう話は全く書く予定ではなかったのですが勢いで書いてみました(笑)
勢いすぎて何を書きたかったのかよく分からなくなってしまった;



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