1階に降り食卓へと足を運ぶと総悟と母は向かい合ってホットココアを飲んでいた。
先ほどの行為を伝えたのだろうか。
口の中が緊張でカラカラ。
その渇きを少しでも癒そうとゴクリと唾を飲み込む。
俺の気配に気付いたのか、二人がこちらを向いた。
さて、どうやって言い訳をしようか・・・

「あらー、銀起きたの?トシはまだ寝てるのかしら?」
「え?えーっと、うんまぁ・・・・」

少し予想外の言葉に戸惑う。

「総ちゃんが二人は寝てるから起こさず戻ってきたって言ってから」

まぁ・・・確かに色んな意味で寝てたけどさ・・・
総悟をちらりと見ると、こちらに顔を向けておらず、ココアを飲んでいた。

―言わなかったのか・・・。

母親には言っていないことが分かり安堵のため息をつく。

「トシはまだ起きてないみたいだから銀に言っとくわね。実は明後日から急遽旅行に行くことになったの」
「明後日!?誰と?」
「お父さんと高杉さんちの両親よ」

急なことに驚いていたが、同行する名前を聞いてあぁなるほどと思った。
高杉さんちの家には俺と同い年の息子がいる。あの憎たらしい晋助だ。
ようは幼馴染。家族ぐるみで仲がいい。・・・いや、違うな、仲がいいのは親だけか。
晋助とは会うたびに喧嘩をしている。そのくせ十四郎を気に入ったみたいで十四郎にはなにかと世話をかけている。
あそこの家は何事も急なのだ。
いきなり旅行に誘うこともしばしばあった。今回もそんな感じだろう。

「だから3日間家を空けるから銀とトシに総悟の世話よろしくって言おうと思って」
「なるほどね、じゃぁ上にあがったら十四郎に伝えとくよ」

そう言って俺はその場を離れ2階へと戻っていく。
部屋のドアを開けると、十四郎はベットに座ったままで、俺が入ってきた途端勢い良く顔を上げる。

「総悟はどうやら言ってないみたい」
「そうなの・・・?」

硬直していた顔が少し柔らかくなる。

「それとどうやら母さん、高杉んとこの両親と明後日旅行なんだってさ」
「明後日!?高杉さんちはいつも急だね・・・」

そう言って苦笑する。
それでも何故かいつもと違う違和感。
十四郎との距離がやはり遠くなった気がした。
気まずい、緊張した空気が流れている。

「だから総悟をよろしく頼むってよ」
「そっか、分かった・・・あ、じゃぁ部屋戻るね!」
「お、おぉ・・」

十四郎は立ち上がると、俺の部屋から出て行った。
バタンとドアが閉まる音と共に急にこの部屋が寂しくなったように思える。
俺ははぁとため息をつきながらベットに寝転ぶ。
親がいないってのは良いような悪いような・・・
もうこうなったら―



***

土方は二段ベットの下で仰向けになりながらどうしようかと焦っていた。
総悟はまだ部屋に戻ってきていない。戻ってきたら、なんと言えばいいのだろうか。
銀時が襲ってきたのは間違いではない。だがしかし、十四郎は抵抗出来なかった訳ではない、抵抗しなかったのだ。
嫌ではなかった。銀時に体を触られること、キスをされること。
でもこれは異常な”兄弟愛”だと十四郎は思っている。

―自分はきっと異常なんだ。

銀時が一人暮らしを始めると言い出したとき、十四郎は猛反対した。
だが銀時の意思は強く、引き止めることは出来なかった。
そして1年ぶりに会えたのだ。だからこそあんなことをされても嫌な気持ちにはならなかったのだと十四郎は強く思った。

「トシ兄・・・」
「総悟!?」

考え事をしていて総悟が入ってきたことに全く気付かなかった。
驚いて飛び起きる。
総悟は下を向いたまま十四郎に飛び込んできた。

「総悟・・・?」

胸の中にうずくまったまま喋ろうとはしない。
すると小さく嗚咽を漏らす声が聞こえる。泣いているのだ。

「トシ兄は俺のでさぁ・・・誰にも渡さねぇ・・・」

顔を上げた総悟の目には涙が溜まっていたが、その目は強く鋭く、獲物をみつけたような野生の目。

「そ・・・」

名前を言い終わる前に口で口を塞がれる。
いきなりのことで驚いた十四郎は先ほどのように動けなくなってしまった。

「銀兄ともこんなことしてたんだよね?他に、どんなことしてた?」

そう言ってもう一度口付けられる。
銀時よりも下手だったが、必死で噛み付くようなキス。
猛獣のようにくらい付く総悟を十四郎は止めることが出来なかった。
しかし、口を離した一瞬の隙を突き、総悟を体から離す。

「総悟・・!だめだって・・こんなこと・・・」
「銀兄とはしてたのに?トシ兄は俺のこと嫌い?」
「そんなこと・・・」

総悟のことも銀時と変わらないくらい大好きだった。
でも今は恐怖の方が勝っている。
急に変わった総悟と、こんなことを兄弟でしてはいけないという二つの恐怖。
それは顔にも現われていたみたいで、その顔を見た瞬間我に返ったのか、総悟は「ごめん」と言ってベットから出た。

「俺はトシ兄のことが大好きでさぁ。銀兄なんかに渡したくない。・・・おやすみ」

そう言ってベットの二階に上がっていく。
一日にして二人に告白された十四郎は頭がパニックになっていた。それも実の兄弟に。
自分の兄弟への愛は異常だと思っていたが、それよりも二人の方が異常なのではないか。
二人を見ていると自分は正常なんではないかという考えに陥ってしまうぐらいだ。
明日からどうやって接すれば良いのだろう。
不安が十四郎の体をよぎる。それに逃げるかのように十四郎は布団をかぶり、瞳を閉じた。



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