数日後。

高杉と土方は一緒に登校していた。

「あー学校めんど。なぁ十四郎?」

すると土方は苦笑いをした。



あの日、土方が喋った日。
声はすっかり戻ったと思っていた。
しかしその次の日、また声が出なくなっていたのだ。

―あれは夢だったのか?

喋れない土方を見て高杉はそう思ったが、土方もあの日のことを覚えている。どうやら夢ではない。
じゃぁどうしてあの時・・・。
あれは二人が生み出した一瞬の奇跡だったのかもしれない。

校門に差し掛かった時、ふいに土方が高杉の手首をぐいっと掴んだ。
驚いた高杉は土方の方を向く。
すると土方はニカッと笑った。

【今日はサボるか!】

「十四郎?・・・おわっ!」

そのままずいずいと学校とは反対方向へ進んでいく。

・・・声が、聞こえた気がした。
十四郎の心の声。
このまま喋ることは無くても、俺には聞こえる。十四郎の声が。
声なんか出なくても、心は繋がっている。


「ったくいつから俺よりサボり癖がついたんだよ・・・おら行くぞ!」

先頭にいた土方が気に食わなかったのか、土方の手を掴み走り出す。
土方はバランスを崩し、こけそうになりながらも高杉に付いて行く。
高杉は振り返ると慌てた顔の土方と目が合う。
いじわるな顔をして土方に笑いかけた。
そして前を向き、もう離さないと握る手に力を入れた。


「・・・・ありがとう・・・・しんすけ・・・」


小さく呟くようにいった土方の言葉は高杉に聞こえることはなく、ひゅううっと吹いた風にさらわれていった―。









「あーあー。また二人はサボりですかコノヤロー」

校舎の窓からタバコを吸いながら二人を眺めている。

「銀八〜。学校でタバコ吸うのはやめてくだせぇ」
「沖田くん、これはタバコじゃありません。レロレロキャンディです」
「嘘つけ。タバコの匂いがプンプンしてますぜ」
「バレたか」

沖田は銀八の隣りに立ち、同じように窓の外を眺める。

「沖田くん聞いてよ。高杉くんと土方くんにふられちゃった〜」

しくしくと下手な嘘泣きをする。

あの日高杉が出て行って、数時間後に帰ってきた。
帰ってきた高杉は先ほどとは全く違う凛とした表情だった。

『十四郎は俺のだ。十四郎はお前のモノになんてならねぇし、ましてや俺もお前のもんにはならねぇ』

ビシッと銀八に指を指し、そう言って部屋へと入った。
唖然とする銀八。そしてなんだか急に笑いがこみ上げてきた。

やっぱ晋助もその親父もそっくりだ。
俺の尊敬した親父さん。
親父さんは俺が殺したと言っておけなんて言ってたけど。

(本当のこと、言うべきだな。土方の両親を殺したのは、本当は親父さんなんかじゃない)

銀八は高杉の部屋のドアをノックし入っていった―。






「そりゃ無理でさぁ。高杉と土方はラブラブですからねぃ」

考え事をしていると、ふいに沖田がはぁとため息をつきながら話す。

「なんだ、知ってたのか」
「何年土方さんの隣りにいたと思ってるんですか」
「お前もしかして・・・」
「・・俺は土方さんが幸せになれば、それでいんでさぁ」
「・・・・」

幸せになればそれで良い、か。

「先生もあの二人が幸せだったら幸せだよ」
「ほんとに言ってるんですか?それ」
「ん、ちょっと見栄はってみた。本当は少し悔しくて寂しい」

そう言って笑った。
沖田も誘われたようにふっと笑う。

「そろそろ授業始まるんじゃないですかぃ?」
「おーそうだな。じゃ、行くか」


二人は3年Z組の教室へと歩き出す。



授業の始まりのチャイムが学校中に鳴り響いた――











END


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あとがき。
こんな長かったのに入れたいことが全く入れれなかった。
本当に小説の難しさを思い知らされた気がします。
銀ちゃんいっつも悪者なので最後は良い人で終わらせたかった(笑)
ここまで読んで頂き大変感謝です!!


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