――

雨がザーザーと降っている。

ピンポーンとベルが鳴り土方はドアを開けた。
するとそこにいたのは

「!!!」

驚いた土方は咄嗟にドアを閉める。
しかし細い隙間に足がガンッと入り込んできて閉めれない。

「おい、十四郎!話を聞け!」

細い隙間に手も入ってきて、力ずくでこじ開ける。
そこにいたのは、雨の所為でずぶ濡れになっている高杉だった。
土方はしりもちをつき、高杉を見上げる形になった。
戸惑いと恐怖が混ざり合い、その場から動けない。

「銀八から全部聞いた。俺の親父のこと、とか」

俯いたまま高杉は話し始める。
それを土方は静かに聞いていた。

「信じてもらえるかは分かんねぇけど、今日、銀八に親父のこと初めて聞いたんだ。その・・・犯罪者だったってこと」

初めて?それが本当なら高杉と高杉の父親は今繋がっていないことになる。
土方の頭の中は大きく揺らいでいた。

「俺と親父が繋がってるって思って十四郎は俺を避けてたんだな・・・ごめん!」

バッと90度に体を折り詫びる。
その姿に土方は驚いた顔をする。

「親父が、そんなことしてたなんて全く知らなかった・・・お前の人生めちゃくちゃにしてしまった。本当にごめん・・・謝っても謝ってもお前の苦しみを和らげることなんてできないと思う」

高杉は唇を噛み締め、涙を流していた。
高杉は悪くない。そう言いたいのに声は出ない。

「でも」

そう言いながら顔をあげ土方を見た表情はとても悲しそうだった。

「十四郎は、いままで俺たちの積み上げたものが嘘だって思ったのか?」
「!」
「沢山メールして、沢山遊んで。銀八に言われて、すぐそれが全部嘘だと思ったのかよ!」

高杉は土方に飛びつき胸ぐらを掴む。

「俺は、そんなに信用なかったかよ・・・」
「・・・っ」

掴む力を緩め、縋るようにずり下がる。
土方の目は泳ぎ、困惑していた。

銀八に全て聞いた時、高杉は悔しかった。
自分の父親が罪の無い十四郎の両親を殺したこと。
そして。
俺よりも銀八を信じた十四郎に。
信頼を気付けなかった自分に。

「それだけ言いたかった。・・・俺は十四郎のこと本気で好きだった。でも、俺はお前の両親を殺した犯人の息子。俺と十四郎は一緒にいちゃけない。今まで楽しかった。・・・じゃぁな」

高杉が帰ってしまう。
もう会えなくなる?
そう思うと勝手に手が伸びていた。
高杉の袖をぎゅっと掴む。
行かないで。


「なんだよ」

土方は服の袖を掴み、何か訴えるような顔をしている。
その姿に高杉はイライラしてしまった。

「何なんだよ!喋らなきゃ、分かんねぇんだよ!」

いつの間にか叫んでいた。そして自分の言ってしまったことにハッとする。
なんてことを言ってしまったんだ、俺は・・・

「悪い・・・・」

土方は驚き、そして泣きそうな顔をした。
掴んでいた手をゆっくりと離す。

「じゃぁな」

ここから逃げ出したい。
もう一度背を向け歩き出そうとした瞬間だった。












「・・・すけ・・・しんすけ・・・いかな・・・で」

不意にか細い声が聞こえてきた。
声のした方を向く。
そこには土方の姿しかなかった。
ボロボロと泣き出した土方は口を開く。
今度は高杉の目を見て。

「しんすけ・・・いかない・・で・・」
「とう・・しろう?」

それは紛れもなく土方が発した声。
頭よりも先に体が動いていた。
高杉は土方のもとへと駆け寄り力強く土方を抱きしめる。

「お前・・・声が・・っ!」
「ごめん・・ね・・・ごめんね・・・しんすけ・・・」
「十四郎っ・・・」
「おとうさんとかカンケイないよ・・しんすけは、しんすけだから・・・ごめんね・・・」
「謝るな!悪いのは俺だ。お前はいつも自分を責めすぎだ」
「しんすけだって・・・」
「十四郎」
「?」

真剣な顔をして土方の顔を見ていた。
その顔にドキリとする。



「お前、声可愛いな」
「・・・!」

急に何を言い出すのかと思えば。
見つめあいながら真面目に言う高杉に土方は顔が熱くなる。

「ば・・か・・・」
「お、十四郎の声で『ばか』って言われるのなんか新鮮」

そう言った瞬間高杉の脳天に衝撃が走る。
思い切りグーで殴られた。
右手で頭を押さえ、顔を歪める。
その顔に土方はふっと笑った。

「なぁ、十四郎」
「?」

頭を押さえていた手を、土方の頬へと場所をかえる。

「もっと、俺の名前を呼んで?」
「!!!」

ずっと、ずっと聞きたかった。
メールでも高杉って言ってた癖に、こんなときに卑怯だ。
十四郎の声で、もっと。


「晋助・・・」
「もっと」
「晋助」
「もっと」
「晋助っ・・・!」

唇と唇が触れ合う。
一瞬土方は驚いたが、そのまま高杉に身を委ねた。

「・・んん・・」
「十四郎、俺我慢できねぇわ」

濃厚なキスを続けていると高杉が余裕のない声で話す。

「だ、め、近藤さんが、帰って・・・!」
「無理、我慢出来ない」

そう言って土方のズボンを脱がそうとしていた。

「!!!だめ、だって・・・!」

脱がそうとする高杉を思い切り両脚で蹴り飛ばす。
ドンっと高杉は玄関ドアにぶつかる。

「あ、ごめ・・」
「いって〜・・・ったくバカ力め。分かったよ、また今度な」
「こんどって・・・」
「俺たち、ずっと一緒にいてもいんだよな?」

笑顔で土方に優しく問いかける。
その言葉にまたボロボロと涙を流した土方は、こくこくと頷いた。

「また明日、学校でな!」
「うん・・・また明日」

高杉がドアノブに手を掛けた時、土方が「晋介」と呼ぶ。
振り返ると土方は微笑む。



「好きだよ」



「っ!」

初めて言われたその言葉。
高杉は初めて土方の言葉に赤面した。


「そ、そそそそそんなこと知ってるっつーのーーーーーー!!!!」

そういい残し、勢い良くドアを開けバタンと閉めた。
外に出、壁によりかかる。
まだ顔が熱い。
先ほどの笑顔が頭から離れない。

―『好きだよ』だってよ・・・ククッ

歩き出した高杉はふと空を見上げる。
先ほどの雨は止み、どこまでも続く青い空。
すると虹が薄っすらと顔を出し、徐々に濃く強調し始める。
その景色はまるで高杉と土方の復縁をおめでとうと喜んでいるようだった―。



Continue.....


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