おかしい。
最近、十四郎の様子が変だ。
メールも返さない、学校でも無視。
これじゃぁ前と同じ。
一体どうして。
「おはよ!」
教室の自分の机に座りながら十四郎に話しかける。
だめだ。やっぱり無視じゃん。
「十四郎?・・・!」
名前を呼びながら隣に座る十四郎の顔を覗き込んだ瞬間驚いた。
表情がまるで無い。
「とうし「おーい席に着けぇ〜」
言い終わる前に銀八が教室に入ってきた。タイミングの悪い。
俺は十四郎の手を掴み教室を出た。
「来い!」
「!!」
俺と十四郎は勢いよく教室から姿を消す。
銀八はその二人を見、不敵に笑ったという。
「・・・っ!」
校舎から出、校庭に出た辺りで土方は自分の腕を掴んでいる高杉の手を振りほどく。
「待てって!」
校舎に戻ろうとする土方を呼び止めたが、止まる気配も振り向く気配も無い。
クソッと言い放ち土方をもう一度捕まえようと走り出すと、校舎から銀八が出てきた。
二人はピタっと歩みを止める。
「全くだめじゃない高杉くん」
だるそうにこちらに近づいてくる。
「土方くん、高杉くんなんかほっといてこっちにおいで?」
何言ってやがる。銀八のとこに行く訳ないだろ。
俺と銀八の丁度中間の位置ぐらいに十四郎はいた。
そして、歩き出し、歩み寄ったのは・・・銀八のもとだった。
「良い子だ」
銀八の隣りについた十四郎は頭を撫でられていた。
しかしやはり十四郎には表情がない。
「なんでっ・・・!」
なんで俺じゃなく銀八なんだ。なんで。
俺、何かしたか?
そう思っても心当たりが何一つ思い浮かばない。
「もう十四郎の近くに寄ってくるんじゃないよ、高杉くん」
真剣な目で訴える銀八。
急に十四郎なんて下の名前で呼びやがって。
十四郎はこちらを向こうともしない。
一体、なんだっていうんだよ!
俺はクソッと思い切り叫び、二人とは反対方向へと歩き出した。
***
家へ帰ると高杉は携帯に貼ったプリクラをずっと眺めていた。
なんでこんなことになったのか、全く分からない。原因はなんだ?
考えれば考えるほど答えは遠のく。
もう、考えるのはやめた。
貼ってるプリクラを勢い良く取り去り、ゴミ箱へと捨てる。
ベットに寝転び大きく息を吸った後、深い眠りに付いた。
気が付くと時計の針は夜の8時を指していた。
かなり眠っていたみたいだ。
高杉は起き上がりキッチンへと足を運ぶ。
冷蔵庫を開けペットボトルのお茶をそのまま口飲みし、冷蔵庫へと閉まった。
するとガチャっとドアの開く音。
銀八が帰ってきた。
「ただいまー」
「・・・・・」
高杉は険しい視線で睨んだ。銀八は苦笑する。
「なんでこうなったか知りたいでしょ」
「・・・・・・」
「教えてあげようか?」
「・・・なんでお前なんだ」
いきなり出てきて俺から十四郎を奪いやがって。
怒りが高杉の体を支配する。
そういえば、俺が十四郎とメールをしてると表情が変わっていた気がした。
あれは気のせいなんかじゃないってことか。
一体・・・
「土方くんは晋助を危険人物として見てる。もう前みたいな生活は望めないよ」
「どういうことだ」
「どうもこうも、晋助の父親が土方くんの両親を殺した張本人だからね」
「は・・・?」
先ほどの大きな怒りが消える程の驚き。
こいつは何を言っている。
「だから、土方くんの両親を殺したのは晋助の父親。あの人は秘密裏に子供を売ってたんだよ。これで行方不明な理由が分かるでしょ?」
「親父が・・・・そんなの、お前の妄想だろうが!」
「GS-1005」
「!!!」
「知ってるよね?土方くんの別名」
「なんで・・・」
何故こいつが知っている。しかも、外から見ただけでは十四郎の別名なんて分かるわけがない。
「土方くんの貰い手はね、俺だったんだよ」
「なっ・・!!」
銀八は高杉に近づき、ニヤリと笑った。
「本当は晋助を買い取る予定だったんだけどねぇ」
「何言って・・・」
「でも親父さんがそれはダメだって。そしたら土方家の暗殺計画の話されて十四郎の写真見たんだ。一目惚れしちゃってね」
「最低だな・・・」
親父もコイツも最低だ。
人の死を、悲しみを、なんだと思ってやがる。
「まぁ晋助も結果的に俺の家に住んでるし?結果オーライってやつ」
「!なにする!」
高杉はいきなり床に押し倒され両手首を掴まれる。
抵抗しようとしてもまったく動かなかった。
「俺さ、昔から晋助のことヤラシイ目で見てた」
「なっ・・・」
「でも土方くん見てから彼も欲しくなって、じゃぁ二人とも頂戴しようって思った訳」
「離せ・・・・」
銀八の舌が高杉の首筋を舐める。
「でも晋助も土方くんもなんか良い感じになってきちゃってさ、どうしようって思ったとき、土方くんに晋助の親父さんのこと話したんだよねぇ。そして高杉と親父さんは繋がってるだろうって」
「お前・・・」
だから十四郎は俺に背を向け話すこともしなかったのか。
分かってて嘘をついた銀八にも腹が立つが、それより・・・
「離せ・・・」
「嫌だって言ったら?」
「離せって言ってんだよ!!!」
銀八の頭に思いっきり頭突きをした。
相当痛かったのか、銀八は額を両手で押さえよろめく。
その隙に銀八から抜け出し、高杉は外へと出って行った。
「痛いなぁ、全く」
銀八は苦笑をしながら高杉が出て行った玄関のドアを眺めていた。
Continue.....
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