待ちに待った日曜日。
結局昨日は一睡も出来なかった。
乙女すぎんだろ俺・・・・
待ち合わせ場所に行くと、既に十四郎が立っていた。

「悪い、待ったか?」

そう言うと頭をふるふると振った。
待ってないということだろうが本当だろうか・・・

「とりあえず昼飯食うか。ファーストフードでいいか?」

こくりと頷く。
俺たちは近くのファーストフード店で昼飯を食べることにした。



「言いにくかったら言わなくてもいんだけどさ、両親が亡くなってからは一人暮らしなのか?」

4人席の椅子に対面するように座り、一息ついたとこでおそるおそる質問する。
すると十四郎は白紙のメモ帳とシャーペンを取り出し、すらすらと書き出した。

【本当は施設に行く予定だったんだけど、俺を助けてくれた警察の人が「俺の家で住め」って言ってくれてその人の家で世話になってる】

「まじで!?その人すげぇ良い人だな」

そういうと嬉しそうに笑った。
お世話になっている人とは上手くいっているみたいだ。
しかし、その警察の人は全然血の繋がってない十四郎をよく引き取ろうとしたな・・・ほんと良い人なんだろうな。

【元々その人と俺の父さんは知り合いだったから】

「へ〜。あ、そういや十四郎の父さんって警察官だったな」

そう。後から聞いたが、十四郎の父親は凶悪犯を捕まえようとして、その犯人に家族が狙われた。
その犯人は子供を売買していたという。だから十四郎は殺されず、売られそうになったって訳だ。

【今度、俺の家に来るか?その人近藤さんっていうんだけど、紹介するよ】

「行って良いのか?是非行かせてくれ!」

その人がどんな人かも気になるし、十四郎の家に行けるなんてこれは逃したくない。

【俺も質問していいか?】

「ん、なんだ?」

向こうから話題をふるなんて珍しい。
1枚目のメモ帳がいっぱいになり、十四郎はビリッと破って2枚目にまた書き始める。

【銀八と同居してるのは本当?】
「げ、なんで知ってんだ・・・」
【学校中のうわさになってる。同じマンションに出入りしてるって】

まじかよ・・・
てかなんで家知られてるんだ。
知られたくなかったことなのに、学校に広まっていることに愕然とし、事情を話すことにした。

「実は俺も両親がいないんだ」

そう言った途端十四郎の目が見開く。
俺は話を続けた。

「お袋は最近病気で死んだ。親父は生きてるか死んでるかすら分からねぇ。行方不明なんだ。母親が死んでからは親戚の銀八の家に住んでる。本当はアイツと一緒なんて嫌なんだが他に行くとこもないししょうがない」

銀八の話をすると、顔を思い浮かべてしまった。
いつも俺を見下し嫌な笑い方をしてムカツク奴。

【そうなんだ。てっきり二人って・・・】

その続きを書くのに戸惑ったのか、手が止まる。
続きがなんとなく予想できた俺は全力で否定した。

「俺と銀八は親戚ってだけで、あんな奴嫌いだから!俺が愛してるのは十四郎だけだか・・・ぐえ!」

話の途中でシャーペンを思い切り投げられた。
芯が喉に刺さったんですけど。痛いんですけど。
涙目になりながら十四郎の方を向くと、顔を真っ赤にして怒っている。恥ずかしがってるのは顔で分かるぞ。
十四郎のこの表情が凄く好きだ。逆にいじめたくなるのに気付け。
床に落ちているシャーペンを拾い渡すと、おずおずとシャーペンをとり、メモ帳にまた文字を書き始める。

【なんか俺たち環境が似てるな】

そう書いて俺に微笑んだ。
確かにそうだな。俺たちはどこか似てる。
最初から俺たちは相手の何かを感じ取っていたのかもしれない。




食事をとった後はゲーセンで遊びまくった。
格ゲーはかなり強い方だと思っていたが、十四郎にボコボコにされた。強ぇ・・。
物凄く嫌がっていたが無理矢理押し込みプリクラも撮った。これ宝物にしよ。
ゲーセンを出た頃は日も傾き始め、オレンジ色の光が俺たちを照らす。
もっと一緒にいたい。でもそろそろ時間だ。
そう思っていると十四郎に袖をクイっと引かれ、携帯を見せられる。本文には文字が打ってあった。

『今から俺んち来るか?今日近藤さん非番なんだ。夜飯食ってく?』
「良いのか!?」

もうお別れだと思っていたが、予想外の展開に胸が躍る。
十四郎は頷き笑った。

そういえば、俺に笑顔を見せることが多くなったな。
勘違いするぞばか。




学校から一駅離れたぐらいの場所に十四郎の住むアパートがあった。
おじゃましますと中へ入ると、ゴリラがいた。

「トシお帰り!びっくりしたぞ、トシからのメールで『今から友達連れてくる』ってきたときは」
「どうも」
「お、君がその友達かい?友達を連れてくるなんて総悟以来だな」

そう言ってニカッと笑う。
ゴリラじゃなかった、人間だった。いやしかしまるでゴリラ・・・。
沖田は来たことあるのか・・・まぁそうだよな。
少し悔しさを覚えつつ、近藤にもう一度会釈した。

「高杉晋助っていいます」
「高杉・・・!」

俺の名前を聞いた瞬間、厳しい顔つきに変わる。
訳が分からず反応に困っていると、先ほどの優しい表情に戻った。

「あ、ごめんごめん。高杉くんね!夜ご飯はもう作ってあるからじゃんじゃん食べて!」



他愛もない話をしながら、夕食をご馳走になった。
近藤って人は凄く面白いゴリ・・・人だな。
十四郎が近藤を見る目が優しい。本当にこの人のことが好きなんだな。
良い人に救ってもらったものだ。
夕食を終え、長くいるのも悪いと思った俺は帰ることにした。

「ありがとうございました」
「とんでもない!また来てくれ。あんな楽しそうなトシを見たのは久しぶりだ。これからもトシをよろしくな」
「はい」

そう言ってドアを閉める。
今日は本当に楽しかったな。また誘おう。


家に帰って、今日撮ったプリクラを見てみる。
俺すんげぇ楽しそうな顔してんな。十四郎はめちゃくちゃ嫌がってる顔してるけど。
撮っている時のあの焦りようを思い出し笑う。
携帯に貼ろ。
携帯の裏に1枚貼り眺める。
もうお前に絶対寂しい思いはさせねぇから。
そうもう一度強く思い携帯を置き、瞳を閉じた。


―けれど、こんな幸せな日々が続くのもそう長くはなかった。






***


一人、下校するため学校の廊下を歩く土方。
すると携帯のバイブが震えた。
画面を見ると高杉晋助の文字。
立ち止まり携帯を開く。
最近は受信箱が高杉の名前で埋め尽くされている。

-----------------------------------------
From:高杉晋助
本文:
なぁ、今度の休みこそデートしようぜ!
ていうかデートしてること認めろよ!
-----------------------------------------

そして内容は毎週のようにデートのお誘い。

(だから俺は男だっつの。)

そう思いつつも何故か高杉のメールを見ていると顔が綻ぶ。
結局は何かと文句をつけながらも誘いにのってしまう。
返信は帰ってゆっくり返そうと思いポケットに携帯をしまった。

転校してきて俺に何かと話しかけてきた高杉。
最初見た時から不思議なオーラが出てる奴だとは思った。
でもまたきっと皆と同じで俺の事情を聞くと、高杉も遠くに離れて行ってしまうものだと思っていた。
けど、違った。
声が出ないことを知ってもずっと話しかけてきてくれた。
嬉しかった。でも話をするのが怖かった。
俺は携帯や筆談で話をする為、会話するのに時間がかかる。
相手を待たせ、イライラさせてしまうのではないか。
もしかしたら面白半分で話しかけてきてるのではないか。
心配だった。

でも、アイツはずっと待ってくれた。
他の奴らとは違う。

俺は高杉のことどう思ってるんだろう。
好きだと言われたことを思い出し顔が熱くなる。
あいつは本気で俺のことが好きなんだろうか。
俺は・・・・

そう思いながらまた歩き始めると、反対方向から銀八が歩いてきていた。
確か、高杉と親戚で一緒に住んでいるんだっけ。

(良いな・・・・)

・・・え、良いなって何言ってんだ俺。
ちがうちがう。
そう頭の中で思い両手をグーにし頭をポコポコと叩く。
違う。そういう意味じゃなくて、・・・あれ、どういう意味だ。
あぁなんかもう訳分かんねぇ・・・

混乱しているといつの間にか銀八と距離が近くなっていてすれ違う。
その瞬間。



「   」





今、なんて・・・?
耳元で囁かれた言葉を聞いた瞬間体に電気が走ったように心臓が揺れた。
動けなくなり銀八の方を向く。
するとニヤリと黒い笑みを浮かべながらこっちを見ていた。

「何で知ってるか知りたい?ここの教室、人来ないからここで話さない?」

そう言って教室に指を指す。そこはどうやら空き教室のようだった。
なんで、銀八がそのことを・・・・?
俺は言われるがままその教室へと入っていった。



Continue.....



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