家に帰り俺は早速メールをした。

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件名:高杉
本文:
下の名前十四郎っていうんだな。
これからは十四郎って呼んで良いか?
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すると1時間後ぐらいにメールが返ってきた。

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件名:Re:
本文:
別にいいけど
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短っ!一時間経ってこれかよ!
まぁいい。無視された時よりはましだ。なんて返そう。とりあえず話題振らないとメールが終わってしまう・・・。


「なんだニヤニヤして。いいことでもあったのか?」
「・・お前の方がニヤニヤしてキモイんだよ銀八」

仕事が終わり帰ってきた銀八にそう投げつける。
全くなんでこいつと一緒に住まなきゃいけねぇんだ。

「ていうかお前生徒から話しかけにくいって女子からも男子からも苦情がきてるぞ」
「別に誰とも話したくねぇ」

前の学校でも自分は浮いていた。
怪我の所為で左目に眼帯、授業には出ない、ましてや学校に行くことが珍しかった。
そしてこの目つき。上の学年には目をつけられ見つかるとすぐ喧嘩。
まぁ負けたことねぇけど。
だから独りには慣れている。

「携帯をカチカチといじって、誰かとメールしてるんだろ?珍しい。誰なんだ?」

そう言って携帯を覗き込まれた。

「土方・・・?」
「ばか!見るんじゃねぇよ!」

一瞬銀八の顔色が変わった。

「何?晋助、土方くんとメールしてるの?」
「悪いかよ」
「いや・・・」

明らかに態度が変わっている。そんなに意外だったのか?
不審な目で見ていると、銀八はニヤリと笑った。
・・・やっぱ嫌いだコイツ。



翌日。

昨日は結局あの後メールはしたが、素っ気無い返事ばかりだった。
それでもメールでだが会話できたことが嬉しい。

「おはよう」

いつものように教室に入り十四郎の姿を見つけると挨拶する。
すると十四郎は俺の方を向き、ふっと笑った。

わら・・・・

笑ってくれたあああ!!!
やばい嬉しいどうしよう。この嬉しさをここにいる奴全員に伝えたい。
そんな馬鹿なことを考え、凄く十四郎が好きな自分に苦笑する。
今、十四郎の笑顔を見た時、俺は十四郎が好きなんだと確信した。
もしかしたら一目惚れだったのかもしれない。


【やっぱ俺、お前のこと好きだわ】


授業中十四郎にメールする。
目があったので携帯をぽんぽんと叩く。
携帯を見ろというジェスチャーに気付いたのかごそごそと携帯を出しメールを見た。
すると顔をボッと真っ赤にし、携帯をすぐしまう。
可愛い奴め。

肘をつき十四郎を見ながら顔が綻ぶ。
全く俺の方を見ようとはしないが、顔は赤くなったままだ。
うーんこれは脈アリ?


***
体育の授業。
いつも十四郎は出ない。
どこに行ったかも分からないし、十四郎が出ないなら俺も出る意味は無い。
とりあえず保健室で寝るかと思い保健室のベットのカーテンを開けると、そこに十四郎がいた。
眠ってはいず、俺と目が合いかなりびっくりしている。

「よぉ。こんなとこにいたのかよ」

ベットに座り話しかけると、凄い勢いで十四郎は起き上がった。

「なんでお前体育の授業出ないんだ?」

そう聞くと、少し困惑した顔をする。
しばしの沈黙の後、十四郎はいきなり服を脱ぎ始めた。

「えええ!!ちょ、十四郎!?そんな積極的に・・・って・・え?」

上半身の服を全て脱ぐと、左胸に火傷の痕がくっきりと残っていた。
その火傷は普通の火傷ではなく、焼印の痕。
“GS-1005”という文字が十四郎の胸に焼き付いていた。

「なんだよ、これ・・・」
「土方さんがその痕を見せるなんてよっぽどなんですねぇ・・・」

焼印の痕に目を奪われていると、隣りのベットから嫌な声が聞こえた。
なんでお前までここにいるんだ。

「沖田・・・」
「その痕を見せた奴は俺以外に初めてでさぁ。よっぽど信頼されてるんですねぇ・・・」

納得がいかないという風に頭をぼりぼりと掻きながら話す。
信頼されてると言われて嫌な気はしないが、それよりも十四郎の焼印の方が気になって仕方が無かった。
きっと、他の奴には見せたくないから、体育を休んでいたのだろう。
着替えるときに、どうしても見えてしまう。

十四郎はなにか訴えるような目で沖田を見ていた。
その視線に気付いた沖田は、はぁとため息をつき俺のほうに向いた。

「俺の代わりに説明しまさぁ。その代わり、絶対に他言しないこと」
「分かった」
「土方さんの両親は、中学生の時両親を亡くしてる」
「え・・・」

中学生。そう、確か声が出なくなったのもその時からのはずだ。

「両親は・・・目の前で殺されたんでさぁ」
「!!!」

目の前で、両親が・・・・
沖田は唇を噛み締め悔しそうに話し始めた。
その内容は信じがたいものだった。




夜、いきなり大勢の男が家に乗り込み、家族全員を誘拐した。
どこかも分からない暗い廃墟で、土方は両親を目の前で殺された。

「後はお前だな」
「おい、動くな」

必死に逃げようとした土方だったが、足は竦みなかなか自由に動いてくれず、簡単に男達に捕まる。

そして、無理矢理犯された。
叫ぼうとしても声が出ない。
抵抗しようとしても恐怖で力が出ない。
両腕を床に押さえつけられると、じゅうっと焼けた音、焦げた匂い。左胸に激痛が走った。

「ああぁ・・・っ!!!」
「GS-1005。それがお前の商品名だ」
「結構良い顔してるからな、高く売れるんじゃねぇか?」
「あぁ。かなり高額で売れたよ」
「もう買い手がついていたのか。流石だな」

意識が朦朧とする中、土方は自分が売り飛ばされるんだと認識した。

嫌だ。痛い。誰か。助けて・・・・

その時

ドカーンという破裂音と共に、何人もの警察が駆け込んできた。

「やべぇ!逃げるぞ!」
「おい、こいつはどうするんだ!」
「そいつと自分の命、どっちが大事だ!行くぞ!」

そう言って男達はその場を後にした。


「おい、君!大丈夫か!?」

助けが来た・・・?
警察に抱きかかえられながら、土方は意識を遠くした―。



「―それから土方さんは目が覚めるとショックで声が出なくなってなった。その犯人は今だ捕まらず逃走中。コレが全てでさぁ」
「・・・・」

十四郎を見ると、ベットの上で体育座りをし、体を出来るだけ小さくするように丸くなり震えていた。
あの時のことを思い出しているのだろう。
なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

「ごめんな、十四郎・・・」

そう言うと大丈夫だというように頭をふるふると振る。
しかし十四郎の目からは一滴の涙が流れていた。
拭ってやろうと手を顔に近付けると、思い切り沖田の手が俺の腕を引っ叩く。

「そろそろ授業が終わるんで、高杉は教室戻ってくだせぇ」

十四郎を抱きこむように俺から守り、睨みつけられる。
くそ、ほんとコイツ嫌いだ。

暫しの睨み合い。
でも、ここは長い間一緒にいる沖田に任せるのが一番なんだろう。
小さく舌打ちした後、俺は教室にはもどらず、家へ帰った。



Continue.....


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