「はぁ〜」

高杉は大きなため息をついた。
3年になってから京都から東京へと引越し。
なんて中途半端な時期に引越しなんだ。
めんどくせぇ。

親父は行方不明、そして先日母親が死んだ。
行く当てもなく親戚の坂田銀八の家に居候することになった。
俺はあいつが嫌いだ。
いつも俺を馬鹿にしたように見下しやがって。

銀八は高校の先生をしている。
そして銀八も俺と同じくこの日3年Z組の担任が産休に入った為、この学校に移動することになったらしい。
全く、何故こんな奴に習わないといけない。

「登校1日目からため息ですか〜?高杉くん」

3年Z組の教室に向かうため、並んで歩く銀八が話しかけてきた。

「黙れ。それから高杉くんとかきもい」
「ここでは先生と高杉くんでしょ」
「銀八を先生だと思ったことはない」

ひどーいと嘆いている銀八をよそに教室にたどり着いた。


「はーい静かに。今日からここの担任になった坂田銀八でーす」

やる気のない声で話しながら、黒板に坂田銀八と書く。

「そして、同じく今日からこの学校に転入してきた高杉晋助くんです。みんな仲良くするよーに」

坂田銀八の隣りに高杉晋助と書いた。
くそ、隣りに書くな。

この時期に転校生が来たのが珍しかったのか教室がざわざわと騒ぎだす。
うざい。
イライラしていると、廊下側一番後ろ端の席に座っている男と目が合った。
綺麗な顔立ちの黒髪短髪少年。
向こうは目が合っているのに気付いているのかいないのか、こちらの視線から外そうとしない。

「じゃぁあの空いてる席に座って」

銀八に言われてその席を見るとちょうどその男の隣りの席だった。
少し嬉しい気持ちになりその席へと座る。
その男の方を見ると、俺を見ようともせず前を向いていた。
なんだか横顔も綺麗だな。

「よろしく」

その男に話しかけるとこちらを向いたかと思えばぷいと顔を逸らされてしまった。
なんだ、愛想ねぇ・・。


ホームルームが終わると俺の周りに人だかりが出来る。

「どこから来たの?」
「なんで眼帯してるの?怪我?」
「高杉君ってかっこいいね」

女子が物凄い勢いで話してくる。
勘弁してくれ。
だから女は嫌いなんだ。

「でも大変だよね〜土方君の隣りになって」

全て話しを流していたが、その言葉が気になった。

「土方?」
「隣りの男の子のことだよ」

ふと隣りを見ると土方という男はいなかった。
ホームルームが終わりすぐどこかへ行った見たいだ。

「そういやさっき挨拶したら綺麗にスルーされたな」

先ほどのことを思い出す。感情の無い顔だったな・・・

「土方君は喋りたくても喋れないんだよ」
「え?」

意外な言葉に俺は耳を疑う。

「中学生の時に何かあったみたいでそれから声が出なくなったみたい。詳しいことなら沖田くんに聞いてみたらいいよ」
「沖田?」
「あそこで変なアイマスクして寝てる人」

女が指差した先にいたのは、窓側の一番後ろ端で奇妙なアイマスクをして寝ている男。
あのアイマスク、なんか腹立つ。

「小学生の時からずっと一緒みたい」
「へぇ」

中学生の時に何かあった、か。声が出なくなることってよっぽどのことだったんだろう。

噂をしてると土方が教室に帰ってきた。
目が合う。
しかしまたすぐ逸らされた。
声が出ない・・・か。
コミュニケーションを取るのは難しいかもしれない。
けど俺はコイツと友達になってみたいと思った。
なんだか知らないけどコイツには惹きつけるオーラがある。

予鈴がなると生徒達が自分の机へと戻って行く。

授業が始まり俺は綴ったノートを破り、土方に渡した。

【お前土方っていうんだってな。声が出ないことも聞いたよ。だったらこの紙でやりとりしようぜ。俺のことは晋助って呼んでくれ。下の名前はなんていうんだ?】

とりあえず土方のことをもっと知りたい。
土方はその綴られた紙を読んでいる。
ドキドキしながら返事を待っていると、土方は紙をぐしゃぐしゃにし、ぽいと机に置いてしまった。

おいいいいい!!!!!
酷いことするじゃねぇか。
でも諦めねぇからな・・・。


昼休み。

「おーい土方ァ!一緒に飯食わねぇ?」

無視。

午後授業。

「消しゴム貸してくれねぇ?」

無視。

放課後。

「一緒に帰らねぇ?」

無視。


・・・・諦めねぇええええ!!!!!!!




数日後。

未だに無視をくらい続けている俺だったが、毎朝の挨拶はかかさなかった。
こんなことするのは土方にだけ。
その為だけに学校に来ているようなものだ。
しかしなんでこんなに向きになってるのか自分でも分からない。

放課後、いつもなら土方は沖田と帰っていたが、今日は一人みたいだ。これはチャンス。

「ひーじーかーたー!一緒に帰らねぇ?」

後ろから声をかけると、不機嫌そうにこちらを向いた。
う、やっぱダメか?
そう思っていると、土方はいきなり携帯をとりだし、なにやらカチカチと打っている。
俺はどうしていいか分からず。そのまま待っていると、バッと俺の目の前に携帯を差し出した。
本文には文字が打ってある。

『なんでそんなに俺に構う?』

なんだか初めて話せた気持ちになれて、俺の心は宴会状態。

「ええぇっと、なんだろ、お前のことが好きだから?」

あれ、何言ってんだ俺。
興奮していた為訳の分からないことを言ってしまい後悔する。
しかし、絶対引かれると思っていたが土方の反応は意外なものだった。

「〜〜っ!!」

頬を真っ赤にさせ、恥ずかしいか怒っているのかよく分からない顔。
引かれてない・・・?

「ってか、そういやこういうやり方があったな!携帯!」

胸を躍らせながら自分の携帯を取り出す。

「メールでなら話せるか?良かったらメアド交換しようぜ」

土方は何か考えているようだったが、俺に携帯を投げた。
慌てて受け取る。
いきなりは断られるかと思ったがこれはメアドを交換しても良いということか?

「携帯にアドレス入れとくぜ?良いな?」

何も反応しなかったが嫌がってもいないようなので赤外線で送受信した。
登録状況を見る。
どうやら土方十四郎というらしい。やっと名前が知れた。

「土方さーん、待ちましたかぃ?」

後ろを振り向くと沖田がこちらにむかってきた。
目が合うと睨まれた気がしたので睨み返す。なんなんだコイツ。

「じゃぁ帰ったらメールするから!」

沖田がいるなら一緒に帰るのはやめておこう。
俺はその場を後にした。


「土方さん、あいつとメアド交換したんですかぃ?」
「・・・・」

沖田が意外だという目で土方に問う。
少し顔を赤らめながら土方は頷いた。

「珍しいですね〜・・・俺はなんかあいつ嫌いだ」

そう言いながら沖田と土方は並んで学校を出て行った―。




Continue.....


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