「おい、お前・・・!」

僕は大江戸ストアの帰り、後ろから誰かに呼ばれた。

「あ、土方さん」
「お前は確か万事屋の・・・」
「志村新八です」

後ろを振り向くと走ってきたのかゼェゼェと荒い息をしている土方さんだった。

「どうしたんですか?」
「これ」

そう言って僕の手に小銭を投げるように置いた。

「大江戸ストアでお前落としていってたぞ。気付かなかったのか?」
「え、ほんとですか!?ありがとうございます!」

全然気付かなかった。
だからゼェゼェ言ってたのか。きっと走って僕のとこまで来てくれたんだろう。
大きくお辞儀をして御礼を言う。

「あぁ。・・・そういやお前んとこの天然パ「土方十四郎と御見受けする!」

きっと銀さんのことを言いたかったのだろうけど、それは誰かによって遮られてしまった。
土方さんと同時に後ろを振り向くと、ざっと10人はいるだろうか。
土方さんに向かって刀をむけていた。

「こ、こいつらは・・・攘夷志士ですか!?」
「あぁ・・どうやらそうらしいな・・・楽しい喧嘩になりそうだぜ」

刀に手をそえ、戦闘準備万端な土方さんは少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
いつも以上に瞳孔が開いている。

「おい、メガネ、ここは危ねぇ。早く逃げろ」
「わ、分かりました!!」
「幕府の狗め、殺っちまええええ!!!!」
「はっ!雑魚は消えろ!」

背中で刀のぶつかり合う音を聞きながら、走って僕は万事屋へと帰った。



万事屋へと帰り、はぁっと一息つく。
真選組はいつもああやって命を狙われているのに、平然としている土方さん達が凄い。
きっと僕はああいう仕事は向いていない。
こうやって家事手伝いをしている方が合っている。
まぁ給料貰えてないんですけどね。

中へ入ると銀さんがいつもの場所であぐらをかき鼻くそをほじっていた。
・・・まったくこの人は・・・

「只今帰りましたー」
「おー」

いつも以上にやる気のない返事。
ほんとこの人は土方さんを見習って欲しい。
走って落し物を届けてくれたり、攘夷志士よりもうんと強くて・・・ってあれ?

「銀さん・・・」
「あ?」
「土方さんって、かっこいいですよね」
「はぁ!?!?」

あまりにも意外だったのか、先ほどまであぐらをかいていた銀さんが飛び起きた。

「いいいきなりどうしちゃったの新八くん!?」
「さっき会ったんです。凄くかっこよくて・・・」
「え、何!?新八くんそっちの趣味!?お母さん許しませんよ!!」
「誰がお母さんだ!!・・・違いますよ、尊敬するんです」
「あ、尊敬ね、ソンケイ。なぁんだ銀さんびっくりしちゃった」

普通かっこいいと言ってそっちに結びつくのだろうか。
あの慌てようなんだかおかしい・・・・


ガラガラガラ

「おーい」

玄関から聞こえてきた声は先ほど聞いた声と同じだった。

「あれ、土方さん!大丈夫だったんですか!?」
「あぁ。あのくらいなんともねぇよ。それよりマヨネーズあるか?」
「へ?」
「さっきの喧嘩で隊服汚れたから着替えにいったらマヨネーズ置いてきちゃって・・・団子屋に行ってないの気付いてさ。団子にマヨがないと団子じゃねぇ」

いや、それは違います。
と思いつつもそれは口にせず家へ上がらせてあげることにした。

「ちょとぉ、なんで多串くんが来てるの〜?」
「多串じゃねぇ土方だ!」

顔を合わせると毎回喧嘩をする二人。
でもなんだか銀さんは嬉しそうだ。
もしかして銀さんって・・・

「おーいマヨネーズは?」
「あ、はいちょっと待ってくださいね!」
「ちょっと!何俺の家でマヨネーズたかってるの!?」
「ここが近かったんだよ、別にいいだろ」

「はい、土方さんどうぞ」
「お、サンキュ」

そう言って僕に笑顔を向けた。
その瞬間。
ドクンと、なんだが心臓が破裂しそうなくらい脈打った気がした。
この衝撃はまさか・・・・

「お前もこんな馬鹿の面倒みて大変だな」

串団子にマヨネーズをかけほお張りながら話す土方さんに苦笑する。

「まぁそうですね。でもなんだかんだ楽しいです」
「ふぅん」

ぺろりとたいらげた土方さんは僕の頭にぽんと手を置いた。

「ま、がんばれよ」

ぽんぽんと頭を軽く叩いて出て行ってしまった。
なんだか気持ちが心地よい。

僕も玄関を出て手すりに手をかけ下にいる土方さんに声をかけた。

「またいつでも来てくださいねー!!」
「おー、気が向いたらな」

そう言って手をひらひらと振りながら帰っていった。

今度はいつ来るのだろうか。
胸をおどらせながら姿が見えなくなるまでそこから離れなかった。



END
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あとがき。
突発的に考えた新土。
拍手にしようかと思ったのですが長くなりそうだったのでこちらにupしました。
マイナーなのが書きたいなーと思ってたら浮かんだネタ。
内容的には新→土←銀な感じです。
土方さんは銀さんが好きなのかよく分からない感じで。


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