「土方ぁ。いっちまうのか。」

今宵満月が美しく輝く日。
寂しそうに俺の服の裾をつかみ問う姿は危険人物と言われているとは思えない姿だった。
優しく伸ばされた腕が俺を抱きしめる。俺はその腕に身を任せた。


正真正銘俺と高杉は敵同士。そして秘密の恋人。この複雑な関係を何度恨んだことか。なんで攘夷志士なんだ、止めちまえば良いのに。そう何百回と思った時もあったが、高杉の話を聞くようになってこの世界を壊したくなる気持ちが少し分かった気がした。でも、俺は真選組副長として見逃すわけにはいかない。高杉が攘夷志士として、俺が真選組として出会った時は、その時は斬らなければならないのだ。

けど今は。

攘夷志士や真選組といった看板にとらわれず恋人として傍らにいる。それだけで俺は十分だった。
俺は高杉から離れ、うんと頷く。すると高杉はそっぽを向きながらそうか。寂しくなる。と言った。その言葉は本当に寂しげで、胸がきゅうっと苦しくなった。俺は考えるが先に高杉の胸ぐらを掴み、そして・・・


強引にキスをした。高杉は呆気にとられたようで、なんとも間抜けな顔をしている。そんな顔を見てプッと笑ってしまった。笑われたのが嫌だったのか、ちょっとムッっとした顔でこちらを向いている。しかしすぐにいつものヤラシイ笑みに戻り、

「お前からキスするなんて珍しいな。」

そう言われて急に恥ずかしくなった。確かに自分からキスするなんて今までにあっただろうか。顔を見ることができずうつむいてしまう。自分でも顔が赤くなっているのが分かった。
だって、あんな寂しそうな顔されたんじゃ、しょうがないじゃないか。それに…



「寂しいのはお前だけじゃないんだよ…バカ杉…。」


高杉は幸せそうな顔をし、俺に顔を近づけた。そして二人の唇が近づく。今度は深く甘いキスを。








END


2009.12
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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