晋助はゆっくりと意識を戻した。
辺りを見回すと何もない全面黒い壁に覆われた暗い部屋、一つの窓。
ここは来たことがある。人間界ではなく、その裏の世界。晋助が最も嫌う悪魔の住む世界だ。
逃げようと試みるが、両手は頭の上に鎖で縛られており、動くことが出来ない。

バタンと音をたて、先ほどの銀髪の悪魔が入ってくるといきなり強く晋助の顎を掴んだ。

「っ・・・」
「お前にイイモノを見せてやろう。」

そう言って二人の悪魔が入ってくる。
一人ずつ、片方の腕を持ち、意識を失ったままの十四郎も現われた。

「十四郎!!!」
「コイツはアクマと交わったニンゲンとしてケンキュウ用に使わしてモラウ。」
「なっ・・・!」

十四郎を床に寝かせると先ほど連れてきた悪魔たちが十四郎の服を脱がし始める。
全裸にさせると、一人の悪魔が十四郎の突起を咥え舐め始めた。

「てめぇ十四郎になにしやがる!!」
「アクマと交わったニンゲンのセイエキを調べたいんダ。」
「やめろ・・・っ」

悪魔たちは止める筈もなく、もう一人の悪魔は一物を扱き始めた。
その感覚に十四郎は少しずつ意識を戻していく。

「ん・・・んぁ・・・え・・?」

十四郎は完全に目を覚ましたが、今自分に起きている事実が理解できていない。
自分は全裸にされ恥ずかしいところを触られ、舐められていることがやっと理解できた途端、恥ずかしさのあまり体中が熱くなる。

「なに!?ぅ、うあ・・・ゃ・・・」

悪魔は覚醒し暴れる十四郎の体を押さえながら口や手の動きを速める。
少しずつ勃ちあがり始め、目は羞恥心と苦痛で涙目になっている。

「あ・・・も・・・やめ・・・いや・・・だ!あああ!!」

悪魔が長い爪で十四郎の亀頭をカリっと削るように刺激した。
するとその所為で先端からは血が流れ始めていた。
痛さと扱かれていた快感が共なり、十四郎はまた意識を飛ばす。
その痛々しい姿、泣き喚く姿を見た瞬間、晋助の頭の中の糸がプチンと切れた。

「てめぇら・・・・俺の十四郎に手、出してタダで済むと思うなあああああ!!!!!!!!!」

大きく叫んだ瞬間、両腕に思い切り力をかけると
両腕に繋がれていた鎖はバキバキとヒビが入り、割れた。
晋助の右目は真っ赤な血のように赤くなり、この中にいるどの悪魔よりも恐ろしい姿になっていた。

その場にいた悪魔たちは驚き逃げようとしたが、晋助は悪魔に見向きもせず十四郎に向かい抱き上げる。
そして窓に向かい飛び立ち、ガシャンという音と共に壊し、その窓から逃げていった――。






人間界に戻ると十四郎の家では危険だと感じた晋助は、洞窟を見つけ出し、そこで一旦休むことに決めた。
真夜中、全裸のまま連れてきてしまった十四郎。このままでは凍えてしまう。
晋助は意を決した――。




「ん・・・・」

光で目が覚める。どうやらその光は朝日のようだ。
昨晩のことを思い出しハッと我に返る。
ここはどこだ。晋助は?
そう思い体を起こすと何かに自分は包まれているのが分かった。
下を向き自分の体を見ると黒い羽が重なり毛布のようになっており、それが包むように十四郎の体を暖めていた。
その時自分は裸なのだと認識する。


「起きたか・・・?」
「晋助・・・!!!!」

声の主の方を向くと、一番会いたかった姿。
晋介は十四郎に近づき抱きしめる。
それに答えるように十四郎も強く抱きしめた。
が、晋助の背中に疑問が浮かぶ。

「・・!・・お前・・・もしかして・・・」
「ん?・・あぁ。全裸で連れてきちゃったからな、俺の羽で凌げるかと思って。」
「でも・・・お前の羽は・・・もう・・・っ」

黒い大きな羽は、晋助の体には生えていなかった。
昨晩意を決した晋助は十四郎の為、羽を犠牲にしたのだ。

『コノ羽ヲ切り落としテ悪魔の能力をなくしてヤル。』

自分達を襲ってきた悪魔は確かにそう言っていた。
つまりは羽をなくすと力がなくなるということ。
それは悪魔の能力を捨てるも同然だった。
しかし晋助は何も気にしないというような態度をとっている。

「さっき犬に憑依して村に行って服をかっぱらってきた。どうやら憑依する力はまだ残ってるみたいだ。」

そう言い十四郎の足元に服一式を置く。

「なん・・・で・・・」

十四郎は罪悪感でいっぱいになる。
信じられなかった。自分の為に羽を犠牲にしてしまうなんて。
今にも泣き出しそうな顔をしている十四郎に、晋助は服を着させてあげる。

「俺な、気付いたんだ。もう、人間にならなくても良い。悪魔の力もいらない」
「え・・・?」

盗んできたTシャツに袖を通しながら晋助の意外な話に耳を傾ける。
そんな十四郎に晋助は今までに見せたこともないような優しい笑顔で見つめた。

「実は、さ。悪魔が人間になるのは掟に反することだったんだ。それでも俺は人間になりたかった」

だからあの銀髪の悪魔は晋助を襲ってきたのだろう。
しかしそれは掟を破ってでも人間になりたかったということだ。
なのに、どうして。

「でもな、お前の近くにいられればそれで良い。そう思うようになった」
「晋、すけ・・・」

今まで分からなかった感情。その答えは十四郎に対する愛しい思い。
そう、恋をしていたのだ。

自分に初めて名前を付けてくれた。
あの時はぶっきらぼうに答えたが、内心とても嬉しかった。
『晋助』と笑顔で呼ぶ十四郎。
いつの間にか失いたくないと思うようになっていた。
自分の身を削ってでも、十四郎を守りたい。

「俺は、十四郎のことが好きだ」

いつも卑下されゴミ同然のように扱われてきた十四郎。
自分には生きる価値などないと言うのに、その日の気分で肉便器にされ、荒々しく捨てられる。しかし生きろという父親。
生殺しにされている気分だった。

しかし。
人間になるよりも、悪魔の力よりも、自分と一緒に居たいと言った晋助。
こんなにも自分を必要としてくれるなんて。
涙が止まらず、腕で何回も涙を拭うが、止まる事を知らなかった。

「十四郎?なんで泣いているんだ?」
「ぅ・・く・・・うれし・・・泣きだ・・」

そう言ってもう一度涙を拭い、まだ押さえきれない荒い息を徐々に沈めていく。

「俺、も、晋助が・・・好き・・だ。お前が俺を抱くたびに・・・けど・・それを言ったら・・お前は・・・・だから・・」

上手く言葉に表せない。
この感情は自分だけだと思っていたのだ。
それが同じ思いだと分かり、自分でも抑えられないくらい、鼓動が高鳴っていた。

それは晋助も同じだったのだろう。
十四郎も晋助のことが好きだと分かった途端、強く十四郎を抱きしめた。

「いっ!痛ぇよ・・っ!」
「十四郎、好きだ。大好きだ」
「・・・・うん」
「もう離さねぇ」
「うん」

二人は見つめ合い、口付けを交わす。
人間だとか悪魔だとかそんなものは関係ない。
必要とし、必要とされる。
それは二人にとって、一番欲していたものだったのかもしれない。


その時だった。


晋助の体が、大きな光を放ち始めた――。









Continue.......






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