「ぁ・・・も・・・イ・・・く・・・」

ぎしぎしとベッドの軋む音が響く夜、十四郎の一物からは白い液体が飛び出した。

毎晩のごとく十四郎は晋助に抱かれていた。
最初抱かれた時は荒々しく、ただ苦しみに耐えていただけだったが、最近は優しくされているように感じた。
あの時は優しくなんてしないと言っていたのに。
親との関係を知られ、同情でもされたのだろうか。しかし、悪魔が同情なんてするのだろうか。
いろいろな考えが十四郎の頭を混乱させる。
今まで必要とされていなかった自分。しかし今は晋助に必要とされていることに、幸福感を感じていた。



「いつになったら俺は晋助の中に入れるんだろう?」

行為が終わり、2人は向き合いベッドの中で寄り添っていた。

「さぁな。こればかりは俺にも分かんねぇ」

交われば人間になれる。それは分かっている。しかし、どれだけ交わればいいのかは全く分からないのだ。

「ふぅん。でもさ、人間になったら逆に弱くなるんじゃねぇの?」
「いや、それはない。人間になれるといっても本体はこのままだ」
「?」
「簡単に言うと今の俺は俺のことが見える人間にしか触れることが出来ない。俺が見れない人間に触れることのできる時は動物に憑依した時だけだ。だが喋ることも力を使うこともできない。しかし人間の力を手に入れると完全な人間そのものにいつでも変身できるということだ。人間の形のまま力を出すことができるようになる」
「なるほど・・・」

十四郎は少し考え込み、そしてずっと思っていた疑問を投げかけてみた。

「・・・でも、どうして晋助は俺を選んだんだ?俺はお前が見えるからか?」

最初に会ったときから思っていた疑問。
晋助の姿を見れるのはまれだが、十四郎以外にも見れた人間は何人かいたというのを十四郎は聞いていた。
それなのに何故自分を選んだのか。その答えを知りたかった。

「まぁ、それもあるが・・・お前と会ったのはあの夜が初めてじゃないんだぜ?」
「え?」
「あの夜の前日、お前は執事と外にいただろう」
「あ・・・」

そういえば。と十四郎は思い出した。
執事が気をきかし引きこもっている十四郎に、たまには外に出てみては。と誘ってくれたのだ。
そうして大きな庭園に顔を出した。外に出るのも三ヶ月ぶりだったのではないだろうか。

「その日俺は黒猫に憑依していた」
「・・・・!!もしかしてあの時の猫!?」
「そうだ」

庭園で黒猫を発見した。
全身真っ黒な猫で、右目は青、左目は赤でなんとも不思議な猫だったのを覚えている。
猫を見たのも久しぶりで、ずっと眺めていると近づいてきた。

『お前は自由で羨ましいな』

そう言って十四郎は黒猫の頭を撫でた。
その時の黒猫が晋助だったのだ。

「お前を見た瞬間なにかを感じた。きになって次の日お前の部屋に行くと俺のことが見えていた。その時『コイツだ』と思ったんだよ」

撫でる十四郎を見た時鼓動が早くなった。
もっとコイツを見たい知りたいと。
人間に対して今までに無い感情。
これこそ交わるに相応しい人間だと晋助は思った。

「そうか・・・。俺は晋助に会えて嬉しかった。もう一人じゃないし、晋助の中に入れるということはこれからもずっと一人じゃない。・・・・けど」
「けど?」
「・・・いいや、なんでもない」

けれど。
自分は晋助に好意を持ち始めていることに気が付いた。
毎晩抱かれるたびに愛しいと思う気持ちが強くなる。
もっと触れられていたい、と。
しかし、相手は自分に何も感情を持っていないだろう。
早く食べたい気持ちでいっぱいなはずだ。
だからこの気持ちを伝えても意味は無い。気持ち悪がられるかもしれない。
そう思った十四郎は言うことを止めた。

コンコン。

執事がやってきた。
今日もご主人様が呼んでいるとのこと。
十四郎は震える体を抑え執事と共に部屋を出て行った。

一人残される晋助。
2日に1度は父に呼ばれ出て行く十四郎。
見ないで欲しいと言われ、あの日からは十四郎の部屋で帰りを待つ。

こんなことする必要があるのかと聞いたことがあった。
すると十四郎は
『自分が役立たずだからお父様に呼ばれるのならそれに従うことしか出来ない』
と言った。

しかし、このモヤモヤはなんなのだろうか。
父に呼ばれるたびに抱く感情。
何か言いたくなるのだが何を言えばいいのか分からない。

カタリ。

十四郎が帰ってきた。
口には殴られたような痣。
たまに、痣を付けて帰ってくる。その姿はなんとも痛々しい。

とぼとぼと晋助に向かっていき、ただいまとにっこり笑顔を向ける。
しかしその笑顔には疲れ果て、哀しさが沢山詰まっているように見えた。
晋助は本能のまま十四郎を抱きしめる。

「しん・・・すけ・・・?」

突然のことに戸惑い高鳴る鼓動。
なかなか離そうとしない晋助にそっと背中に両手を回す。

「もう・・・行くな」
「え?」
「もう行くな。あんなとこ」

モヤモヤとしていた気持ち。
これが言いたかった言葉のだと晋助は思う。
何故こう思うのかは分からない。
しかし、行って欲しくない、行く度に段々と距離が遠くなる気がするのだ。
離れて欲しくない、近くにいて欲しい。自分の欲求が大きくなっていく。
この気持ちは、もしかして・・・・・


その時だった。


ガシャン!

ガラス窓が割れ大きな音が響く。
晋助はガラスの破片が刺さらないよう、十四郎に覆いかぶさる。

そこに現われたのは晋助と同じような姿の悪魔。
しかし晋助とは違い、表情の無い顔で晋助よりも大きな羽、牙。
銀髪が風でゆらゆらと靡き、目は赤く光らせ2人を睨み付けている。
その姿に十四郎はゾッとした。

「ヨウヤクミツケタ。」

そう悪魔が言った途端、鎖が現われ、晋助の体は鎖で羽交い絞めにされた。

悪魔はスタスタと晋助に近づき髪をグッと掴み引っ張る。

「掟を破っタお前にはコノ羽ヲ切り落としテ悪魔の能力をなくしてヤル。」
「晋助!・・・てめぇ晋助に何しやがる!」
「ばか!やめろ!」

何が起きたのか分からない。
けど今分かるのは晋助が危ないということ。
十四郎は震えるからだを押さえ込み、悪魔の方へ殴りかかる。
晋助は止めようとしたが、遅かった。

「・・・・!」

悪魔が手を伸ばした瞬間、手のひらから大きな光を放った。
その光にやられた十四郎はその場に倒れ意識を失う。

「おい!十四郎に何かしたらぶっ殺すぞ!」

そう威嚇するが、鎖が巻き付いている所為で全く動くことができない。
力いっぱい悪魔に叫ぶことしか出来なかった。

しかし悪魔は臆することなく晋助の額に指を置く。

「う、が、ああああああ!!!」

額に置いた瞬間その指から強い電気が流れ、晋助の体全身を痺れさせた。
大きく叫び、痛みに耐えることができず、晋助も意識を無くした。












Continue.......



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