はじめに。
死ネタです。
沖田が死にます。流血表現有り。
大丈夫な方のみどうぞ。
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きし・・・きし・・・
真夜中。
縁側から床板の軋む音が静かに響く。
その音は真選組局長、近藤勲の個室の前で止まる。
静かに襖を開けるとすやすやと眠っている近藤の姿。

「近藤さん・・・」

今にも消えそうなか細い声で近藤を呼ぶ。
その小さな声でも近藤は気付き手で目をこしこしとこする。

「トシ・・・?」

むくっと起き上がり土方の顔を見ると死んだような目。
近藤は死にそうな顔をしている理由は分かっていたが、どうした?といつもの笑顔で何も分かっていないというように土方を招き入れる。
土方はふらふらと近藤のもとへ歩み寄り、近藤へ崩れ落ちる。
頭を近藤の胸に預ける。近藤は優しく抱きしめると土方の体は震えていた。きっと泣いているのだろう。
近藤の服を両手でぎゅうっと掴み嗚咽を漏らす。

「俺の・・・所為で・・・総梧が・・・・っ・・・」
「トシの所為じゃないよ。」
「俺が・・・っ」




――昨日、凶悪な指名手配犯のアジトに乗り込んだ真選組。
やっと頭を見付け切りかかろうとしたその時、下に潜り込んでいた敵が背後から土方に襲い掛かる。

「土方さん!!!あぶねぇ!!!」

ズブッ!!
人間が斬られるリアルな音。
土方が後ろを向いたとき、襲い掛かってきた敵は死んでいて、沖田は血だらけになって倒れていた。

「総・・・梧・・・?」

目の前に倒れている沖田を抱きかかえる。
沖田は土方を庇い、左肩から右腰までざっくりとやられ大量の血が流れていた。
もう助かる道はない。

「なん・・・・で・・・・」

どうして総梧は俺を助けたのだろう。総梧なら俺にかまわず近藤の命を第一にするはずだ。
いままでもそうだった。いつも俺を殺してでも副長という座から引きずり落とそうと目論んでいるような男だ。なのに、どうして。

「あんたは生きなきゃならねぇ・・・あんたは、真選組の副長だろ・・・?」
「そ・・ご・・」
「近藤さんの隣りにはあんたが必要なんでさぁ・・・近藤さんを、、よろしく頼みますぜぇ・・・」
「総梧、逝くな・・死ぬんじゃねぇ!今から救護藩呼ぶから、それまで目を開けとけ!!」

必死に大声で目を閉じないよう叫ぶが、もう沖田に聞こえているのか聞こえていないのかよく分からない。
目は生気を失い、朦朧としている。

「てめーの体はてめーで分かってまさぁ。土方さん、俺ぁ、あんたのことが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「総梧・・・・?目、開けろよ・・・おい、いつもみたいにムカつくこと言ってこいよ・・・いつもみたいに、無邪気な笑顔で話しかけろよ・・・・おい・・・なんとか言えって・・・・・総梧!!!!!!!」


沖田の目はもう、開くことはなかった。



――そして沖田の葬式を終え、今に至る。
土方は近藤の胸で泣き続け、近藤は抱きしめることしか出来なかった。

「俺がちゃんとみんなのこと見てたら、こんなことにはならなかった。トシの所為じゃないよ。これは局長である俺の責任だ。」
「違う!近藤さんは悪くない。俺が・・・へましたから・・・・俺が・・・」

いつまでも泣き続ける土方に近藤は両肩をがっと掴み自分から引き剥がす。
土方はびっくりしたように近藤の顔をみる。

「トシ、いつまでもそんなんじゃ、総梧が怒るぞ!」
「近藤さん・・・」
「トシ、トシは誰だ?」

そう言われて土方はハッとする。
俺は・・・・



「俺は・・・・・俺は・・・・・真選組副長、土方十四郎だ。近藤さんの背中を命を懸けて守る男だ。」

ニカッと笑う近藤。

『あんたは生きなきゃならねぇ・・・あんたは、真選組の副長だろ・・・?』

沖田の言葉が土方の脳裏に浮かぶ。
その言葉を胸に秘め大きく深呼吸し近藤を見る。
近藤も沖田の死は相当辛い筈だ。
それなのに自分を励まそうとする近藤の姿に土方は尊敬する。

土方の凛々しく戻った顔を見、安心して近藤は口を開く。

「トシ、辛いとき哀しいときがあった時は、またいつでも俺のところに来い。トシの辛い哀しいこと全部俺が飲み込んでやるから。」

優しく微笑みかけると、土方はまた泣きそうな顔をして近藤は苦笑する。
鬼の副長なんて言われてるけど、本当は強がりで寂しがりやな愛しい人。



「ん・・・・ふ・・・」

近藤は土方の腰を手繰り寄せ口づけをする。
土方の哀しみを全て自分が吸い取るくらいに優しく、激しく。
土方も自分の哀しみを吐き出すようにキスに食らい付く。

「近藤さん、俺は、命をかけてアンタを守る。だから、ぜってぇ俺から離れるな。」
「・・そのままそっくりその言葉、トシに返す。」






――数日後。

「マガジン以外の漫画、局中で読むことなかれ・・・・お前ら全員切腹だああああああ!!そこに直れええ!!!」
「副長おおおおおお!!!すいませええええん!!!!!」

ドタドタと縁側を走り回る隊士達と土方。
その姿を見ながら近藤は豪快に笑っている。
いつもの風景。が、やはり沖田のいない屯所は少し寂しい気もする。

土方は追いかけていた足を止めふと空を見上げる。
何かを思い浮かべているのか上を見上げたまま静止して。
そして空に向かい笑顔を向け、また隊士達を追いかけていった――。




END


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あとがき。

死ネタでも、暗いまま終わりたくなかったので
少し心が強くなった土方のお話を書いてみました。
初期の段階では明るい甘々な話にするつもりが
一体なぜ総梧が死んでしまったのか・・・苦笑

読んで頂きありがとうございました!


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