「副長!エイリアンvsヤクザの公開日ですよおお!!」
「はっ・・・!!そうだった俺としたことが!!よし、行くぞ原田!」
「はい!!」


***

俺は十番隊隊長原田だ。
このむさっくるしい屯所だが唯一の癒しがある。
それが、副長だ。
副長は屯所の中でいわゆるアイドルだ。
ほかの隊士が副長に思いを抱いているのは他でもない。
敵はたくさんいるが俺にはこれがある。
そう、趣味が合う、ということ。
俺も副長も大のエイリアンvsヤクザのファンである。
いつも一緒に見に行ってそして一緒に泣く。
副長の泣き顔なんてめったに見られるものではない。
案外、副長は涙もろくて可愛い。
そんな可愛い副長を見れるのは俺だけだと思うと嬉しくなってしまう。

パトカーに乗り俺はアクセルを踏む。
赤い光を放ちながらサイレンを鳴らし映画館へと向かった。

***

「いやぁ〜面白かったですねぇ〜やはり最高でした・・・」
「もうまじかっこいい・・・やっばい・・・最高・・泣けた・・・」

映画観を出、パトカーに戻った俺達はパンフレットを見ながら号泣。
やはり名作だ・・・・!!

「しかしあれだなぁ・・」

涙を拭った副長は助手席の背もたれに身体をあずけながら呟いた。

「この名作の良さが分かるのってお前ぐらいだもんなぁ、屯所にお前がいてよかった」
「い、いえ・・・」

急にそんなこというもんだから俺は顔が真っ赤になって副長の顔がまともに見れない。
・・・ん?しかしちょっと待て。

「あの、『屯所に』ってことは、屯所以外にはいるんですか?」
「ん?あぁ、まぁな。でもあいつとは絶対一緒に見たくねぇ・・・」

その人はもしかして。
なんとなく、いや、確信に近いぐらいその人が誰だか分かったが、怖くて確認できなかった。
あの人には勝てない。そう思う気持ちがあるから。

「それにさ」

少し落ち込んでいると副長は話を続けた。

「お前のこと信頼してるからこうやって涙流して感動できるんだよな」

煙草を咥えライターで煙草に火をつけながらさらっと言った言葉。
その何気ない言葉が嬉しくて。

「ああああありがとうございます!!!」

大きな声でそういうと副長はかなりびっくりしたみたいだ。

「んあ?なんか礼言われるようなこと言ったか・・?」
「はい!」
「・・・?まぁいいけど」

俺は少しでも二人の時間を延ばしたくて、いつもよりゆっくりなスピードで運転を始めた。


END


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