はじめに

春。夏。の続編です。
この小説だけでも読めるようにはなっていますが、
先に春。夏。を読むことをオススメします。
春。は過去拍手文にあります。


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夏休みが終わり、学校生活が再会される。
あの事件から、俺は一切近藤さんと話していなかった。
メールさえしていない。

あの事件。そう。夏休みに仲のいいダチで泊まりと夏祭りに行った。
そしてその祭りの帰り、何故か近藤さんがキスをしたのだ。
俺は近藤さんに1年の頃から好意をもっていた。
もちろん恋愛的な意味で。
おかしいのは分かってる。なんども考えた。相手は男だぞ。と。
けど、変な妄想とかしちゃったりして、もう俺の思考回路はおかしいことになっていた。
その近藤さんにだ。キスされた。
普通なら嬉しいと思うかもしれない。
けど近藤さんには好きな人がいた。
それはもちろん女で。
その女は近藤さんに暴力ばっかふってて、なんでそんな奴が良いのか俺にも分からない。
俺が近藤さんと知り合う前から近藤さんはその女の子とが好きだった。
もう入る隙なんてないって思ってた。けど、あの日の夜。あんなことされて、

・・・よく、分からなくなった。
近藤さんは俺で遊んだのだろうか?どんな反応するか試したかったのだろうか。
そしてキスされた夜、もちろん頭の中は近藤さんでいっぱいで。
そんな時携帯の着信音。
近藤さんからだった。
一言、【今日はごめん。】と。

俺は返信しなかった。
そしてそれ以降なにも連絡せず今日を迎えた。
正直もの凄い気まずいのに近藤さんの後ろの席が俺という最悪なパターンだ。
近藤さんの顔は見えないが、多分俺と同じく気まずく思ってるに違いない。

「はいこの紙配るんで適当に記入しろー」

ホームルームが始まりそう言って銀八が配った紙は進路希望の紙。
おい、これを適当に書けってどういう意味だ・・・
そう思いながらシャーペンを握るが、なかなかペンが走らない。
正直、将来のことを何も決めていないのだ。

「おーい、もう決めないとやばいぞぉ。どれくらいやばいってすっげぇやばいぐらいやばい」
「先生、意味が分かりません」

キャンディーを舐めながらめんどくさそうに俺の机の横に立っている。
俺は冷静に突っ込みを入れると銀八はふっと笑い、そして真剣な顔になる。

「就職か進学かも決めてないのか?」
「・・・・進学しようとは思ってます」
「まぁ多串くんぐらいの頭があれば結構進学先も選べると思うが」
「・・・・・・」
「問題は親、って感じかな?」
「っ・・・・!」

俯いてた俺はガバッと顔を上げた。
銀八には、何もかも悟られる。

「今日の放課後、ちょっと残れ、進学について話すぞ」
「・・・・はい」
「ところでゴリラ」
「先生!ゴリラじゃなくて近藤です!」
「あぁそうか、近藤ゴリラくん」
「先生!ゴリラが名前みたいに呼ばないで下さい!」
「お前は就職だったよな?」
「はい!俺は警察官になりたいです!」
「警察官・・・」

俺はついぼそっと呟いてしまった。
その呟きに近藤さんがこちらを振り返る。

「そう、警察官!」

そう言ってニカッといつもの笑顔を俺に向ける。
俺は恥ずかしくて咄嗟に下を向いてしまった。
その笑顔だ。その笑顔に俺は・・・・

「先生は全力で応援するぞ!ゴリラの脳でどこまで出来るかは分からんががんばれよ!」
「はい先生!最近ストーカーが多いとか聞くんで、そんな女性を助けてあげたいです!」
「いや、ストーカーはお前だろ・・・!」

銀八は近藤さんの頭をスパーンと叩くと、あれ?っと呟く。

「でもそういや最近志村からなにも聞かねぇな・・・。何かあったのか?前は休みの日とか学校で会わないから休みの日は被害が凄いとか聞いてたんだが」
「いやぁ〜最近ちょっと色々ありまして〜」
「え〜何?もしかして病んでたりしてたの〜?ぷぷぷっ!ゴリラでも病んだりするんだね〜」
「はは・・・・」
「え・・・・、もしかしてガチ・・?」


キーンコーンカーンコーン。
学校のチャイムが教室に鳴り響く。
銀八はチャイムが鳴り終わると「はいホームルーム終わり〜」と教室から出て行った。
進路希望の紙回収してねぇし。やる気あんのかよ。
けどそんなことよりさっきの近藤さんと銀八との会話だ。
あの近藤さんが悩み事で志村のストーカーまがいの行為をしてないなんて・・・。
自意識過剰かもしれないけど、もしかして俺の所為・・・・?


***

放課後。
結局あの後も近藤さんと話すことは無かった。
やはりそういうことは珍しいのか、総悟も「喧嘩でもしたんですかぃ?」と聞いてきたが
別に喧嘩をしている訳でもない。かといってあの日の出来事を説明する訳にもいかない。

「トシ」

色々と考えてると不意に聞こえてきた声。
近藤さんだ。

「なに?」

冷静に返事をしたつもりだったが、声、裏返ってなかっただろうか。
心臓はバクバクと音を鳴らしている。

「今日、一緒に帰らないか?」
「え・・・・」

少し申し訳なさそうな顔をしながらそう言う。
これで、元通りになるなら。
きっと近藤さんだって俺に話しかけるのは勇気のいることだったかもしれない。
それなら、近藤さんに応えよう。

「今から銀八とちょっと話しなきゃならないんだけど・・・それからでも良いなら・・・」
「あ、そういえばそうだったな!おう!じゃぁ待ってるな!」
「分かった」

近藤さんが激しく手を振り俺はそれに手を上げ返しながら職員室へと向かった。
大丈夫、きっと前みたいに戻れる。忘れたらいいだけの話だ。きっと、近藤さんだって忘れようとしてるんだ。
そう思うと急に足が止まってしまった。
・・・忘れようとしている。あの出来事を。
なんだか、悲しくなった。
きっと近藤さんはあの日のことを忘れようとしてるんだ。
けど、これでいんだよね。
俺は頬を両手でパチンと叩くと気持ちを切り替え職員室へと足を運んだ。

「で、どうすんの?」
「・・・・・」
「親には良い所に進学しろと言うが本当は嫌ってとこか?」
「・・・!」

図星だった。
俺の両親はこの世の中で生きていくのなら学歴だと何回も言い聞かされた。
そんな両親に嫌気をさして、ストレスがたまって、酒を飲んだ、煙草も吸った。
学校ではそこそこ頭の良い人で通っていた。今でもこの事実を知っているのは近藤さん、総悟、そして銀八ぐらいだろう。
銀八に至っては先生のくせに俺と一緒に煙草を吸うぐらいだ。
こいつは本当に先生の自覚があるのだろうかと何度も思ったことがる。
けどこういうときコイツは鋭いところをついてきて―

「俺がどうこう言う問題じゃないが、お前の好きなようにすればいいと思うぞ」
「え・・・・?」
「親の機嫌伺いながら生きていって何が楽しいよ?お前にだって我はあるだろ。ロボットじゃねぇんだ、人間だろ。だから好きなことしろ。その代わり、決めたことは責任もってそれを貫き通せ」
「銀八・・・」
「俺は土方くんの選んだ道を全力で応援するさ」

そして、こうやってハッとさせられる言葉をかけてくれる。

「あのっ、俺さ!・・・うわ!?」

自分の中の奥底にあった思いを伝えようと一歩銀八に近づこうと前に出た瞬間、足元がぐらついた。

「おっと、大丈夫か?」

咄嗟に俺は銀八の胸元の服を掴み、銀八は俺を抱きかかえるように受け止めた。

「だ、大丈夫です・・・!」

これはたから見たら教師と生徒が抱き合ってるように見えないか・・・!?
しかも男同士!!は、恥ずかしい・・・!!
俺は顔が真っ赤になって、銀八から離れようとした。

「・・?」

けれど銀八は俺をぎゅっと抱いたまま離さない。

「せんせ・・?」

理由が分からなくて上を向き銀八の顔を見ると、寂しそうな、けど微笑んでるような、なんともいえない表情をしていた。

「どうしたんだよ?」

俺が首を傾げながら聞くと、銀八の腕に力が入ったのが分かった。

「十四郎」
「・・・・え?」

今、銀八、苗字じゃなくて名前を――



ガラガラガラッ

「トシぃ〜?まだぁ〜?・・・・・・!」
「こ、近藤さん・・・!!」

なんて最悪なタイミングだろう。
こんなときに来なくても・・・!

「あ、ごめん、取り込み中だった?し、失礼しましたああああ!!」
「ちょ、待てって!近藤さん!!」

呼び止めたけど近藤さんは走って消えて行ってしまった。
・・・絶対勘違いされた・・・。

「銀八!いい加減離せって・・・!」

もがいてももがいても銀八は離そうとしない。
一体なんだっていうんだ。

「なぁ・・・土方くんは、近藤のこと好きなんだよな?」
「あぁ、そうだよ!・・・て、あ・・・いや、その・・・」

早く近藤さんを呼び止めたくてイライラしてたらつい本当のことを言ってしまった。
それにしてもさっきから銀八の様子がおかしいのはなんなんだ。
そのおかしな様子に少し心配になってきた俺は暴れるのを止めて銀八の顔を覗きこんだ。
すると銀八は俺と目が合うと慌てて視線を逸らす。
少し顔が赤かったのは気のせいだろうか。熱でもあんのか?
そして銀八は俺を引き離す。
もう一度顔を見ると、いつもの気だるい顔に戻っていた。

「ほれ、早く近藤のとこ行って誤解といてこいよ」
「え、あ、ああ!」

しっしと手を動かし早く行けという銀八に俺は頷き職員室を出た。
さっきのは一体なんだったのだろうか。
そう思ったが今は近藤さんに誤解をといてもらうのが大事。
俺は全速力で学校の出口へと向かった。

「近藤さん!!」

近藤さんは丁度門から出ようとしていたところで俺は必死に大きな声で呼び止めた。

「おぉ、終ったのか?」
「あ、あぁ・・。あのさ、さっきのことなんだけど」
「あ、あれね!うん、内緒にしとくから!」
「そうじゃなくて!もし変なこと思ってるなら違うから!誤解だから!」
「大丈夫だって!別にそういうの偏見ないし、むしろ逆に良いと思うよ、うん」
「俺と銀八はそんなんじゃ・・・・!」
「じゃぁ俺帰るな!また明日!」
「え、ちょっと待って・・・!」

・・・行ってしまった。
俺はその場から動くことが出きなかった。
誤解も解けなかったし、しかもさっきの会話で距離を置かれた気がした。
・・・涙を、我慢することが出きなかった。
どうして、どうしてこうなってしまったのだろう。
誰の所為でもない、全て俺が・・・・。


***

あれから何週間か経った。
教室から窓をみると紅葉が風に揺られ、何枚かは地面に落ちていく。
あの日から誤解は解けないまま、まともに近藤さんと会話すらしていない。
けれど、心はぐらついていない。
けじめをつけるんだ。そう決心した。
そして、進路も決めた。
相談をしにもう一度銀八の元へ行く。


【お前、まじで言ってんの?】
『はい』
【・・・目が本気だな。・・・よし、応援する、がんばれよ】
『ありがとうございます』
【そのかわりここに入るなら今よりかなり勉強しねぇと受からねぇぞ】
『あぁ、死ぬ気で頑張る』


銀八も理解してくれて、あとは―



「近藤さん」

俺は放課後近藤さんに話しかけた。

「ん、どうした?」

話しかけると普通に返事が返ってくる。
けれども微妙な距離感は変わらないまま。
そんななか俺は口を開いた

















「俺、近藤さんが好きだ」









Continue.......



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