「銀ちゃーん、今日は出かけないアルか?」
「あ?別になんもねーよ」
「いつもは出かけるくせに!なんかあるでショ!」
「ああん?なんなんだよさっきから出てけと言わんばかりの・・・」

そう言って神楽の方を見ると、紙袋を抱きかかえ、そこには隠しきれていないクラッカーの山。
あぁ、そうか今日は・・・

「あー・・・思い出した。長谷川さんにDVD返しに行かねぇと」
「良かった!行ってらっしゃい!今すぐ行くアル!!」
「へーへー」

神楽に押し出されるように外に出る。
夕方ぐらいに帰った方が良いかな。

「めんどくせぇ・・・」

そう呟いたが内心嬉しかった。
やはり誕生日を祝ってくれるのは嬉しい。神楽は不器用すぎるけど。

「さて、と」

どこに行こうか。
急に土方に会いたくなった。
俺は早足で屯所へと向かう。

なんなく門を通り抜け、何度も行って覚えた土方の個室。

「ひーじーかーたーくーん」

返事がない。・・・・のはいつもの事だ。
もう一度名前を呼びながら襖を開ける。

「あれ?」

部屋はガランとしていて人の気配はなかった。

「土方さんならいませんぜぇ」

急に声がしてその声のした方を振り向くと。

「沖田くん」

そこには面倒だといわんばかりの表情をした沖田くんがいた。

「今日は忙しいみてぇで帰ってくるのは明日らしいです」
「へぇ・・・」

なんだ、今日土方いないんだ。
そう思うと胸が苦しくなった。
こんなこと無かったのに。今日のこの日。誰に祝われなくったって寂しいとか思わなかったのに。

「残念でしたねぃ。今日旦那誕生日なんでしょ?」
「・・・・え、なんで知ってんの」
「近藤さんが言ってましたぜ?」
「・・・・・・・あ」

そういえば思い抱いた。
たまたま夜中に出会ってそのまま居酒屋行って、気分良くなって誕生日の話したんだっけ。

「土方さんに祝って貰えなくて残念でしたねぃ」
「・・・は!?べべべ別にそういう訳で来た訳じゃないし!!!」
「ふーんそうですかい。ま、とりあえずは土方さん今日は帰ってこないんで」
「そっか。分かった」

そう言って俺は屯所を後にした。

あぁ、万事屋に戻る訳にもいかねぇし、どうしたものかね。
考えているとお腹がぐるるるると鳴る。
腹減ったな。



「おっさんいつもの」
「へい、宇治銀時丼おまち!」

やっぱこれだよな〜。
黙々と食べながら思う。
そして、ここに来たらあいつに会えるんじゃないかななんて期待する。
来るはずないのは分かってるのに。

「おっさんいつもの」
「へい、マヨ丼土方スペシャルおまち!」



・・・・・まじで?


「土方・・・?」
「あん?お前か、奇遇だな」

うわっ・・・・やばい・・・なんだろこれ、・・・・・嬉しい。

「今日って忙しいんじゃねぇの?」
「あん?別に。つか何ニヤついてんだよキモイ」

そう言って土方はガツガツとマヨ丼を食う。
沖田の野郎騙しやがったな・・・・!!!

「ごちそっさん」
「はやっ!!」

あー、もう行っちゃうのかな。
もう少し一緒にいたい。

なぁ、土方、今日なんの日か知ってる?
今日な、俺の誕生日なんだぜ。

・・・・なんて言えないよなぁ・・
言っても「あっそ」で終りそうだし。

「おい」

不意に声をかけられ帰ろうとしている土方に呼ばれる。

「お前暇だろ、ちょっと付き合え」
「え?え?」

なんだろ、急に、土方から誘われることなんてあっただろうか。
ちょっとびっくりしたけど直ぐに二つ返事で付いていくことにした。

付いたのは人気の無い路地裏。
え?これって、え?

「おい、時間がない、直ぐに応えろ」
「・・?何・・・?」
「何されたい?」
「へ?」

言ってることが理解できず声が裏返る。

「何されたいって聞いてる」
「いや、意味がちょっと分からな・・・」
「・・・・・」

一体土方くんはどうされたのですか?
顔がマジなんで余計分からなくなるんですけど。

「えーっと、じゃぁチュウして、とか?」
「分かった」
「えっ!?!?」


ぐいっと胸ぐらを掴まれキスされた。
冗談で言ったつもりだったのに。
ほんと今日どうしちゃったの?

「ひじかた・・・そんなに積極的だと銀さんの息子が元気になっちゃうんですけど」
「・・・ふんっ」
「鼻で笑うなっ・・・・!?」

もう一度キスされる。
俺は我慢の限界。

「・・・!?」

今度は離してやんない。
キスされたまま土方をがしっと抱き寄せる。
そしてそのまま土方の咥内に舌を入れた。

「んん・・・」

さっきの強気はどこへやら。
俺の背中をぎゅうっと掴んで必死に堪えてる。可愛い。
ディープなキスをしたまま手を土方の股間に持っていく。

「あ、おまっ・・・」
「土方が誘ってくるのが悪いんでしょー」

土方の一物をズボンの上から触ると少し勃ち上がっているのが分かる。
ズボンのチャックを下げ脱がそうとした途端。

「ストップ!止めろ!」
「え!?」

がんっと押し返され行為がストップしてしまった。

「もう仕事に行かなきゃなんねぇ」
「はぁ!?ここで!?」
「じゃぁな」
「え、ちょい、待てって!」

この抑えきれないムラムラはどうしてくれんの!?

「悪かったな、何も出来なくて」
「え?」

最初言った意味が分からなくて何秒か考えた。
あれ?

「もしかして土方・・・・」
「べ、別に知らねぇからな俺は!何にも知らねぇから!!」

土方は顔を真っ赤にして叫ぶ。
もしかして土方、知ってた・・・?今日が、俺の。

「土方」
「なんだよ・・・」
「もう一回チュウして良い?」
「嫌だ」

そう言うけど俺の方を向いたまま動こうとしない。
本当に嫌ならどっか行くけど、こういう時は『OK』の意味だって最近分かった。
俺は土方に近づいてキスをする。

「へへ・・・」
「なんだよキモイ」
「いやぁ今日は幸せだなぁと思って」
「今日はなんかあるのか?」
「なんだと思う?」
「・・・・さぁな」
「へへ・・・」
「だからキモイ」




***



『銀ちゃん(さん)お誕生日おめでとー!!!』

土方と別れ家に帰ると色んな奴が俺に向かってクラッカーをパンパンッと放った。
いや、ここ俺んちなんだけどね。勝手に入られてるよねコレ。
けど内心嬉しいのも確か。

「旦那ぁ酒もありますぜぃ」
「・・・なんで沖田くんまでいんの」
「いやぁ今日は愛しの人に会えなくて寂しがってんじゃないかと思いやしてねぇ」
「・・・会えたよ」
「え、まじで?」
「てか沖田くん土方今日いないとか嘘じゃん普通にいたよ!?」
「・・・・・」

沖田は何も言わず驚いた顔をしている。
え?その反応は何?

「別に嘘なんかついてやせんぜ」
「え?でも普通に・・・」
「あーそういえば」

ひょこっと沖田の後ろから現われたのはジミー君。
なんで山崎までいるんだ・・・。

「なんか局長が言ってましたよー、一秒も休まず働いて半分以上終ったとこで急に『ちょっと出てくる』って言ってどこか行ってたらしいけど・・・。もしかして旦那のとこに?」
「いやいやいや!!そんな訳無いじゃん!会ってすぐどっか行ったし!」
「ふ〜んそうですか。一体何をそんなに急いでたんですかね」

やばいやばいやばい。
どうしよう嬉しすぎで顔がにやける。抑えきれない。
土方のバカ。




来年は一緒にいられるかな、なんて考えながら幸せな今日を終えた。




END
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あとがき。

銀ちゃん誕生日おめでとう!
乙女な銀ちゃんと不器用な土方が好きです。


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