高杉と別れて数日。
それにもかかわらず最近、銀八からの暴力はエスカレートしている。
総梧や近藤さんに食べることを勧められるが、食べる元気も生きる気力も、もはや無いに等しい。
俺は大丈夫だと言って、やはり食べることをしなかった。

ある日の放課後、廊下で高杉と鉢合わせた。
廊下の窓から夕日にてらされた高杉はかっこよさが二倍になっていた。
驚き立ち止まり、そして高杉に助けを求めるか迷ったが、もう目も合わせてくれない高杉に、そんなこと言える筈が無い。
俺は下を向き歩き出す。高杉とすれ違った瞬間、力がすっと抜け床に倒れる。

「おい、土方!大丈夫か!?」
「しんすけ・・・・」

高杉が俺に話しかけている。これは夢なのか。夢じゃないことを願い、愛しい名前を久しぶりに呼ぶ。
保健室に連れられ学ランを脱がされる。拒否する気力もなく高杉の目が驚きで揺れていた。

俺は動かない体を必死に動かし高杉の手首を掴む。そして誰にも言わないで欲しいと必死に声を出す。
そんな姿を見た高杉は何か決心したような顔をし、俺の家に来いと誘う。
歩けるかと聞かれ肯定し、高杉の家へ向かった。


高杉の住んでいるマンションへ、そして部屋に入る。
初めて入る高杉の部屋。なんだかドキドキする。
高杉の部屋はすごくシンプルで必要最低限のものが置いてあるだけのように思えた。
そしてふと疑問が浮かぶ。

「高杉ってもしかして一人暮らし?」
「あぁ。一人の方が楽だからな。親に無理言って一人暮らしさせてもらった。」
「そうなんだ・・・」

初めて知らされる高杉の私生活。
俺は高杉のことを何も知らないんだな。そう思うとどうして今までなにも聞かなかったのか後悔した。
コップに注がれたお茶を渡され一口飲む。
すると高杉は言いにくそうに、何故こうなったのかと問うてくる。


俺は全て話した。高杉は話を聞き終えとても哀しそうな顔をした。
そんな顔をみて後悔でいっぱいになる。全て俺が悪いから。そういうと高杉は俺を優しく抱きしめた。
その暖かさが懐かしく、体を委ねる。
すると高杉は震える声で何度も謝ってきた。泣いているんだと思った。
俺はなにかの糸が切れ、涙が止まらなくなった。

「しんすけ・・・おれ、晋助のこと大好きだから・・・でも晋助を嫌な思いさせて・・・ごめ・・・ね」

本音を晋助にぶつける。晋助はお前は全然悪くないなんて言うけど、それは全部晋助の優しさで、全ては俺の所為にある。なんて情けないんだろう。
すると晋助が意外なことを口にした。

「十四郎。俺、銀八と戦う。こんな目に合わすなんて許さねぇ・・」
「しんすけ・・・・」
「俺と一緒に戦おう。明日、一緒に銀八に会って、俺達がそんなんで壊れることはないって言うんだ。大丈夫。俺が助けてやる。」

嬉しかった。晋助は俺と一緒に戦ってくれると言ってくれた。
俺は大きく頷く。
すると晋助はふっと優しく笑うと今日はここにいろと言ってくれた。
俺は嬉しくて笑顔になり頷く。一緒にいられる。そしてこれからも一緒にいたい。
晋助は俺の頭をなでキスをする。そのキスは俺を溶かすような甘いキスで、銀八との行為を洗い流してくれているようだった。
そのままベッドに連れられくっ付き合う。
晋助の体温が気持ちよくて抱きしめる。
すると晋助は俺の頭をずっと撫でてくれ、心地よい眠気がきて、そのまま意識を遠くした。




ブブッブブッ
ポッケに入れていた携帯のバイブが鳴る。
バイブの音で晋助を起こさないよう取りあえずすぐ適当にボタンを押す。
ふと晋助をみるとすやすやと眠っていた。
そんな寝顔を見ると自然に笑顔がでる。
そして先ほど鳴っていた携帯を見て、一瞬にして目が覚めた。
差出人は銀八からだった。



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本文
今どこにいるか知ってるよ。
逃げられると思った?
そんなことして、土方くんはおろか、高杉くんの身にも何か起こるかもねぇ〜
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もう一度晋助を見る。銀八は何をするか分からない。
俺が助けてやると言ってくれた。それだけで俺は十分助けられた。
今度は俺が助ける番だ。俺は晋助の頬にキスをし、もう戻ってくるか分からないこの部屋を惜しみながら銀八の元へ向かった――。








――俺は銀八の車に乗り十四郎がいるという場所へと向かっていた。
車内はずっと無言でちらっと運転席を見るとニヤニヤしながら運転をしている銀八。気持ち悪い。

車が止まりここだよと降ろされる。どうやらここは廃墟みたいだ。
こんなところに十四郎がいるのかと思うと早く助けたい気持ちでいっぱいになる。
廃墟の中に入ると広々とした部屋。そこに手術で使うようなベッドが置いてあり、その上に全裸の十四郎の姿を見つけた。
両足両腕共に鎖で繋がれていた。

「十四郎!!!!!!」

叫び近づこうとすると腕を掴まれる。
離せともがくもその手は離れない。大人と子供の差。その力はあまりにも違うことを知らしめられる。

「ちょっとここにいて、ね。」

そう笑いかける銀八にゾクリと背中に悪寒が走る。
コイツ狂ってやがる・・・。
俺は大人しく立ち止まる。銀八が十四郎に近づく。何かしたら殴りかかってやる。
銀八に気が付いたのか、ジャラっと鎖の音を立てながら顔を上げる。

「せんせ・・・も、むり・・・早く・・・抜い・・・て・・・」
「はいはい。全く十四郎は淫乱だねぇ。」

そう言って十四郎のアナルから何かを取り出す。
それは男性器の形をしたバイブだった。
それを抜き銀八は俺に向かって手招きする。
俺はフラフラしながら銀八と十四郎の下へ行く。
十四郎の目は生気を失い、焦点もあっていなかった。その姿はまるで何かに取り付かれているよう。

「十四郎、ここに愛しの高杉くんがいるよ、助けに来てくれたんだって。」
「しらな・・・早く、せんせぇの・・ちょうだいよぉ・・・・」

それを聞き銀八は笑う。
俺の中で全てのものが崩れ去った気がした。

もう今までの十四郎はいない。
自分の意思なんてないような、生気を失った目で銀八を呼び続けている。
俺のことなんて見えてもいない。


もう、遅かった・・・
助けると、絶対に助けてやると思っていたのに、十四郎をこんな姿にしてしまった。
俺はその場に崩れ落ち、十四郎の喘ぎ声を聞きながら、ごめん、ごめんと泣き続けることしかできなかった―――。












END
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あとがき

なんて暗い・・・苦笑
ドロドロしたもう昼ドラみたいな話が大好きなんですが、
書きながら胸が苦しくなりました苦笑
途中希望を見つけたけど、そう簡単に物事は進まないんだってことを書きたかった。
少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。

最後まで読んで頂き有難う御座いました!

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