はじめに。

死ネタです。

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俺にはちょっとした能力があった。
未来を予知する能力。
予知できるといっても大したものではない。
こっちに行くと嫌な予感がするとか、危険な目にあうとか。
予知というより予感と言ったほうが近いかもしれない。
それが100パーセント当たるのだ。
今まではずしたことはなかった。

***


「トシ〜」
「あ、近藤さんおはよう」
「おはよう!な、な、今日は何の日か知ってる??」
「・・・知らない」
「トシのばかああああ!!!」
「冗談だって・・・」

本気で泣きそうになっている近藤さんに驚きながら応える。
今日は近藤さんの誕生日だった。
もちろん長い時間かけて選んだプレゼントだって買ってある。

「今日は近藤さんの誕生日だろ?分かってるって、ちゃんとプレゼントも買ってある」
「ほほほほんと!?!?!?!?わーいトシからのプレゼントだ嬉しい!楽しみ!」
「今持ってこようか?」

そう言って自室に戻ろうとした時、近藤さんに腕を掴まれる。

「プレゼントはトシと夜二人っきりになってからがいいな、だめ?」
「・・・・っ」

普段よりワントーン落とした声で言うもんだから俺は顔が赤くなってしまった。
俺と近藤さんは少し前から付き合っている。恋人同士として。
最初は片思いだと思っていた、いや、実際そうだったんだと思う。
けれど俺が酔った勢いで告白してしまい(酔っていて記憶がない)、その時から近藤さんは俺を意識するようになったらしい。
そしてこの間近藤さんから告られた。
嬉しかった。こんなに幸せなことがあっていいのだろうかって。

「・・分かったよ」
「よし、じゃぁ夜楽しみにしてるな♪」

そう言って去っていく近藤さん。
俺は顔の火照りがなかなか冷めなかった。


しかし今日に限って忙しい。
昼頃から急に忙しくなり休む暇も無かった。
そして夜も。


「局長!先ほど爆破テロがあったみたいです!」
「何!?!?」






どきん。



ドキン。






「よし、今から向かうぞ!トシ、すまんがトシは残ってくれ」
「近藤・・・さん・・・」



なんか、なんかおかしいよ。



「行きたい気持ちは分かる、けど屯所の仕事も今忙しい。総悟と一緒に残ってくれ」



違うんだ、そうじゃなくて。


「じゃぁ任せたぞ!」

そう言って行こうとする近藤さんを俺は名前を呼びながら袖を掴み、大きく叫んだ。

「行っちゃだめだ!」
「トシ?」

嫌な予感。
息が苦しい。心臓がいつもより早く動いている。
今までにない怖い気持ちが悪い。

「近藤さん、行っちゃだめだ、嫌な予感しかしない。いつも異常に感じるんだ」

近藤さんは俺に変な能力があるのは知っている。
俺のことを信用し、いつも俺のいう事を聞いてくれた。
・・・この時以外は。

「何言ってるんだ、行かないと」
「だめだ、俺の予感は外れたこと無い」
「大丈夫」
「だめだって言って・・・!」

もう一度大きな声で叫ぶと近藤さんは俺を力強く抱きしめた。
いきなりのことで驚いて俺は抱きしめられたまま動けない。

「大丈夫。俺は必ず帰ってくる」
「近藤さん・・・・」
「だから、待っててくれ」
「・・・・」

俺から身体を離し、今度は真っ直ぐな目で俺を見る。
こうなった近藤さんはもう止められないだろう。

「・・・分かった」
「よし、じゃぁ言ってくるな」
「近藤さん」

一度背を向けた近藤さんが振り返る。

「プレゼント持って待ってるから」
「おう!楽しみにしてる!」



そう言って笑顔で消えていった近藤さんはもう戻って来ることはなかった。





***

近藤さんの死によって、真選組は崩壊、そして解散となった。
刀を持つ意味を無くした元隊士たちは幕府から刀を奪われた。
そしてこの事件を好機に、恨み続けていた攘夷志士たちが元隊士斬りを始めていた。
刀を持たない隊士たちは逃げることしかできなかった。
・・・俺もその一人。


「はぁ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

夜中。
大雨の中、今日も攘夷志士に追い掛け回されている。
正直、こんな惨めなことはない。
間一髪で逃れているが、次はもう分からないほど身体は衰弱していた。
もう雨だか自分の汗だか血だか分からない。
路地裏に隠れ座り込む。
そして隊服の中から一つの袋を取り出す。
渡せなかった、近藤さんへのプレゼント。
俺はそのプレゼントを抱え込み顔をそのプレゼントにうずませる。

「近藤さん・・・」

小さく愛しい名前を呼ぶと、いっきに目から涙が止まらなくなってしまった。
嗚咽を漏らし続ける。
守るモノがなくなった俺にはもう戦う意欲なんてない。


ジャリ・・・

近くで砂の擦れる音。
誰かがいる。
しかし逃げる気力はなかった。
近くにくるまで気配が分からなかった。
結構出来る奴なのだろう。
それに何故だろう、嫌な予感がしないのだ。
殺されるというのにそれはないだろうと心の中で笑う。
だから、そんな奴になら殺されても良いかもしれない。


「おい」

声がして上を見上げる。
夜中、大雨、そして疲れきった身体。
その所為で視界がぼやけ誰だか全く分からない。

「お前、大切な人の仇、討ちたくないか?」

慣れてきたのか少しずつ視界のぼやけがなくなっていく。
しかし顔は分からない、けどシルエットは分かってきた。
包帯に煙管、前髪は左目を隠すように長い。
こいつは、もしかして・・・

その男はやっとこの時が来たと呟きその後こう言いながらニヤリと笑った。


「お前、俺の仲間になってみないか?」





END
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あとがき。

勲ごめんなさい!!!!
誕生日なのに・・・苦笑
そしていいとこ全部あの男にもっていかれましたすいません(笑)


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