「ひあっ!」
「(捕まえた!?)」

森の中、銀時は落とし穴を仕掛けた罠の近くで隠れていた。
するとら大きな音と共に悲鳴が聞こえ、すぐさま落とし穴の所へ駆け込む。

「いったあ・・・」
「ウシ・・・?」
「トラ、さん・・・?」

中を覗くと自分より数歳年下だと思われるウシが穴の中に入っていた。
涙ぐみながらウシは銀時を見上げる。

「(なんだ、子供か。小さな食料だな。ま、何もないよりましか)」

もう少し大きな獲物を狙っていた銀時だったが、無いよりましだと諦める。

「トラさん、トラさん、おれ、穴におっこっちゃったの。出るの手伝ってくれない?」

このウシは危機感というものがないのか。
今から食べられるというのにトラに助けを求めている。
きっと「食べられる」ということ自体考えていないのだろう。
少し驚いた銀時だったが、いい作戦を思いつきニヤリと笑う。

「いいぜ、ほら、手、貸せよ」

手を差し出すとその手をぎゅっと掴みウシは穴から出ることに成功した。

「ありがとう!トラさん、名前は?」
「え、あ、銀時・・・」
「ぎんとき!おれ、とうしろう!」

そう言ってニッコリと笑う十四郎にドキリと胸が高鳴る。
名前なんて言ってもすぐ食べるから意味無いのに咄嗟に名前を言ってしまった。なんでだろう。
しかし銀時は頭を横に振って今感じた感情を押さえこんだ。

「なぁ、助けてやったんだからお礼ぐらいしてもいんじゃね?」
「!!そうだね!出来ることならなんでもするよ!」

何も分かっていない十四郎をあざ笑いながら銀時は口を開いた。

「トラって何食うか知ってる?」
「?なんだろ、わかんない・・」

やっぱりそうなのか。親に教えてもらっていないのだろうか。
そう思いつつ銀時は続けた。

「ウシを食べるんだよ」
「え・・・?・・・・!!」

そう言って銀時は十四郎を押し倒し、首筋に思い切り噛み付いた。

「い、た・・・!」
「お礼はお前の身体だ」
「!!やだ・・・」

噛み付き血が出、その血をちゅうちゅうと吸う。美味い。

「や、だ・・・おねがい・・やめ、て・・・」

涙を流しながら必死に懇願する姿に銀時はピクッと身体が固まってしまう。
どうしてだろう。獲物なのに。今から食べると言うのに、十四郎の涙を見ていると、食欲が無くなってしまった。

「ぎんとき・・・?」

銀時は食べるのをやめ十四郎に覆いかぶさるように倒れこむ。

「くそ・・・特別だからな、見逃してやる」
「ほんと・・・?」
「その代わり、違うお礼して欲しい」
「何・・・?食べられるのは嫌だよ・・・?」

恐る恐る聞くと、銀時は顔を赤らめ俯きながら話した。








「友達になろ?」


END
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あとがき。
寅丑大好きなのになんで今の今まで書かなかったんだろう。
書いててめっちゃ楽しかった!


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