「祭りだー!!!」

海で散々遊んだ次の日、俺達は夏祭りに来ていた。
皆浴衣で・・・近藤さんはかっこよさ3倍アップだな。
それにしても・・・


「人多いな・・・」

そこもかしこも人、人、人。
人に酔いそう。
こんな人が沢山いるなかでも皆関係なく楽しんでいる。
俺はどうも人混みは苦手だ・・・。

「お妙さああん!!!」

今日も近藤さんの叫びは絶好調。
近藤さんはお妙のもとへと走っていった。
俺はため息まじりの笑いをした後近藤さんのもとへ行こうと一歩踏み出した。が、

「うおっ!?」

近藤さんが向かった方向はどちらかといえば人に逆らうような道。
俺は人に負けそのまま飲み込まれ逆に反対方向へと流される。

「ちょ、ちょ、ま、」

と、とりあえず、どっか、道を外れなくちゃ・・!
俺は前に進むことを諦め、屋台の後ろ、人が通らない道へと逃げる。

「はぁ・・はぁ・・すげえ人。人怖ぇ・・・」

両膝に手を置き荒い息を整える。
少し息が整ったあと背伸びしてきょろきょろ見渡す。
うん、完全に逸れた。

「ま、いっか」

総悟や山崎は一人でも楽しむタイプだし、女子はみんな一緒にいるだろうし、近藤さんは・・・お妙に夢中だろうし。

「・・・・・」

はぁ。帰りたい。
もう帰っても近藤さん気付かねぇんじゃ・・・。
そう思うと悲しくなってきた。
このままいても楽しくなんかない。
帰ろ。家に帰って、調子悪くなったって適当にメールでも打っとこう。
そして家の方向へ足を踏み出した時だった。

「トシ!!!」

背中から聞こえた、一番聞きたかった声。
その声が、俺の名前を呼んでいる。

「近藤さ・・・」
「良かったー!どこいったかと思って探してたんだぞ!」
「ごめ・・っ」

息を切らしながら俺の目の前までやってくる。
近藤さんは一人みたいだった。

「きっと人の波に飲み込まれたんだろ?大丈夫だったか?」
「う、うん・・・」

がしがしと俺の髪をぐしゃぐしゃにしながら撫でる。
お、俺、なんか子供みてぇ・・・。

「みんなは・・・?」
「・・・あ」
「・・・?」
「トシ探すのに必死だったからどこにいるか分からん」
「え・・・」

それって・・・。

「ごむええん!どうしよう総悟達置いてきちゃった・・・」

そんなに余裕なかったぐらい探すのに必死になってたってことか・・?

「ん」

近藤さんは俺に差し出すような形で手を出す。

「もうはぐれないように、手、繋ご」
「!!」

差し出された手にゆっくりと自分の手を添える。
すると近藤さんはぎゅっと俺の手を掴み、人ごみの中へと入って行く。
顔、赤くないだろうか・・・。
ドキンドキンと心臓が大きく鳴って、近藤さんにまで聞こえそうだ。
けどこの人混みの中にいたらきっと大丈夫。

「あ、いたいた!総悟〜山崎〜!」





***

「近藤さん、ごめんな」
「へ?何が?」

無事皆と合流し沢山祭りを満喫し、各々家路へと向かっていく途中。
俺は近藤さんと一緒に帰りながら謝った。

「・・・お妙と、あんま一緒にいれなかっただろ、俺がはぐれたばっかりに」

探しに来てくれたのは凄く嬉しかった。
けど、近藤さんは楽しめなかったんじゃないだろうか。
せっかくの機会だったのに、なんだか申し訳ない気持ちが押し寄せる。
そう思って言ったのだが、近藤さんは豪快に笑い、またぽんと俺の頭に手を置いた。

「気にするな。トシと一緒にいる方が楽しいよ、俺は」
「・・っ!」

なんでそんな言葉を簡単に言えるんだよ・・・!
恥ずかしくないのか・・!?

「・・トシ?」

顔を覗き込まれ俺は更に顔を赤くしてしまった。

「うあ!いや、なん、え、あわわ・・・」

もう自分でも何言ってんのか分からない。
恥ずかしさを紛らわす為にバタバタと手をバタつかせ必死になる。

「お、俺、家、こっち!じゃ、じゃあま、またメールす――!」



一瞬、何が起こったのか分からなかった。
腕を近藤さんに引っ張られて、視界が、真っ暗になった。
そして、唇に、柔らかい感触。



「え・・・?え・・・・?」


その感触が離れていって、目の前には近藤さんの顔。
頭が付いていかない。これは、これは・・・

「・・・なんか、トシ見てたら、可愛くて、キスしたくなっちゃった」
「か、かわ、可愛いって・・・」
「じゃぁまたな!」
「え、ちょ、近藤さん!?」

手を伸ばすが近藤さんはもう小さくなっていて。
その手を自分の唇にそっと当てる。
今、近藤さんに、キスされた・・・・?



***


なんで俺はトシにキスしちゃったんだろう。
顔を赤くしてあたふたしてるトシを見たら、可愛いって思って、キスしたいって思った。

「〜っ!!」

キスした時のこと思い出して顔が熱くなる。
うわあぁ俺やっちゃったよ。夏休みで良かった・・・。
逃げるように帰ってきたけど、トシ、俺のこと嫌いになったかな・・・・。









END
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あとがき。
中途半端でごめんなさい!
まだ近藤さんは十四郎が好きなのを自覚してません。そして秋編に続きます。
秋頃また続き書きます(笑)


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