はじめに
拍手文「春。」の続編です。
春。を読まなくても大丈夫な内容になっていますが、
読んだほうがより分かりやすいです。

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「一泊二日の夏休み企画!一日目は海!二日目は夏祭り!どうよ!?」
『さんせー!』
「一泊だけなら俺らでも払えるくらいの安いホテルありそうだし探しとくよ」
「ありがとうトシ!じゃぁ、メンバーは俺、トシ、総悟、山崎、お妙さん、九ちゃん、神楽ちゃんで決定でいいかな?」
「猿飛は?」
「銀八がいないなら行かないって」
「・・・あいつらしいな」
「じゃぁホテル決まったらまた予定たてよう!トシ、ホテル見つかったら教えてくれ!」
「了解」




・・・・・・・・・
・・・・・
・・・





『海だー!!!』


雲ひとつない空。
海で泳ぐにはもってこいの天気だ。
俺達は夏休み、一泊二日でちょっとしたお泊り会を計画した。
そして今日がその日。
皆水着に着替え、海を楽しむ。もちろん俺も。

「お妙さーん!なんてお美しい!!」
「ゴリラに言われても嬉しくねぇよ」

相変わらず近藤さんはお妙に夢中で、海で神楽たちと遊んでいるお妙に話しかけていて。
それに嫉妬してる自分がいる。

「土方くんでいいのかな?」

初めて話しかけられたあの日から、俺はもう好きになり始めていたのかもしれない。
あの日から2年が経ち俺達は3年生になった。
きっと夏が終わればこうやってバカする余裕もなくなってるんだろうな。
そして俺は2年も近藤さんに片思い・・・。
近藤さんはお妙のことが好きだし、俺は・・・男だし。
きっと叶うことはない恋で、辛いことは沢山あるけど、でもそれなりに楽しい毎日を送っている。

「(近藤さんの体ってがっちりしてるよなぁ・・・)」

海から少し離れたパラソルの下、砂浜に座りながら近藤さんを見て思う。
同い年には見えない体格。がっちりとしていて、男らしい。
自分の腕を見るがひょろひょろだ。全然違う。
近藤さんと呼び続けているのも、なんだか俺よりも上に見えて。呼び癖が直らないまま3年間近藤さんと呼び続けている。
あの体で俺を抱きしめて欲しいな。とか、結構変態なことを考えてしまう自分が恥ずかしい。

「なぁに女の体見て顔赤くしてんですかい?」
「は!?」

上からする声に勢いよく顔を上げると、そこには総悟の姿。

「ちがっ・・!俺は近藤さんを見てたんだよ!」
「近藤さん・・・?」
「あっ・・・!」

いや、逆に近藤さん見てて顔赤くしてるとかヤバくないか!?
そう思ったが後の祭り。総悟はにやにやしながら俺のことを見ている。

「へぇ・・近藤さんにねぇ・・・へぇ・・と、いうことは土方さんは近藤さんのことが―」
「トシい!総悟!こっちこないのかあ!?」
「い、行く行く!!」

総悟が言い終わる前に俺はその場から逃げ出した。
近藤さんが話しかけてこなかったら今頃どうなっていたんだろう・・・。








「はーっ!楽しかったー!ねー!お妙さん!」
「はいはい」

日が傾き始め、思う存分海を楽しんだ俺達は着替え下宿先へと向かう。
ホテル・・ではなく、合宿所のようなところを借りた。
だからかなり安い価格で寝る場所が確保できた。
男は10畳、女は8畳の和室。
男女で別れ自分達の部屋へと足を運ぶ。

「なんか修学旅行に来てるみたいっすね!!」

目をキラキラさせながら山崎が言う。
「確かにそうだな!なんかわくわくする!夜はコイバナしよう!」

楽しいそうにしている近藤さんを見て俺も自然と笑顔になる。
確実に夜は近藤さんだけが語りつくすんだろうなぁ。
ずっと近藤さんが女の話をするのは正直嫌だけど、嬉しそうに語る近藤さんを見るのもそれはそれでいいかな、なんて。


***


一息つき皆で浴場へと向かう。
浴場は案外広くて他に人もいないし貸切状態だ。

四人並び体や髪を洗っていく。
ちゃっかりと近藤さんの隣りに座り、たわいもない話をする。
近藤さんだけ大事なところにタオルをかけてなくて・・・・アレが丸見えな訳で。
やばい、でかい。自然と息を飲む。
近藤さんのあれを自分に入れて欲しいなとか、色々といけない妄想しちゃってる俺が嫌だ、バカだろ。

「トシ?」
「うわっ!!」

近藤さんがいきなり俺の顔を隣りから覗いてきて心臓が飛び出すんじゃないかってぐらい驚く。

「大丈夫か?さっきからぼーっとしてるけど」
「あ、あぁ、大丈夫だ、ありがとう」

心を見透かされてるのかと思った・・・。

「どーせエロいことでも考えてたんでしょう?大抵の男はぼーっとしてるときはエロいこと考えてるんでさぁ」
「そうなのかトシ!?」
「ち、違う!!んなわけねぇだろ!!!」

いや、当たってるんだけどね、言えるわけねぇよ近藤さんのちんこみてエロいこと考えてたとか。
にやにやしながら見てくる沖田に殺意を覚えながらも、俺は平然としたふりをする。

「もしかしてお妙さんとか狙ってるんじゃないよね!?」
「ちげぇって・・」

ズキンと胸に重い何かがのしかかる。
近藤さんの頭の中に俺はどのくらいあるのだろう。

「トシはかっこいいんだから絶対取られちゃう・・」
「・・え、俺、かっこいい・・か・・?」
「何言ってんの男前じゃないどうみても!羨ましいよほんと」
「〜っ!」

近藤さんにかっこいいって言われた・・。
どうしようそれだけでめっちゃ嬉しい・・。

「トシ?」

近藤さんにかっこいいって、近藤さんにかっこいって・・・近藤さんかっこいい・・

「トシ〜〜???」
「!!!」

目の前で手を振られハッと我に返る。

「なんかまたボ〜ットしてたが本当に大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」
「だ、大丈夫だから・・・」
「土方さん、めっちゃアホ面してましたぜ」
「ううううるさい!!!」




どうにか堪えながら入浴を済ませ、自分達の部屋へと戻る。
海ではしゃぎ過ぎた所為か、俺達は適当に(かなりの適当に)布団をひき、コイバナをする余裕もなく、すぐに寝てしまった。
皆布団の中におさまるということを知らず、好き勝手に寝ている。
俺も直ぐに意識を遠くしてしまった―







「んん〜おしっこ」

トイレに行きたくなって起きると、皆気持ちよさそうに寝ている。
今回の企画してよかったな。
隣りですやすやと眠っているトシの頭を撫でながら思う。

「う〜ん・・・」
「(あ、起こしちゃったかな?)」

顔を覗き込むとまた寝息を立てだした。
良かった、起こしてないみたいだ。

「むにゃ・・・近藤さん・・・」

俺の夢でも見てるのかな?なんだか嬉しいような恥ずかしいような・・・

「近藤さん・・・好きだ・・・・」
「え・・?」

ん?俺のことが好き?いや、あれでしょ?友達としてってことだよね?

「俺と・・・付き合って・・・」
「えええ?!」

思わず大きな声で叫んでしまい、ハッと手で口を押さえる。
なにそれどういうこと???
いや、まて、これは夢を見ている最中であって、本当にそういう風に思ってるってことはないし、それに・・・
いやいやいや・・・ないでしょ、それはないでしょ。
よし、寝よう、聞かなかったことにしよう。

おやすみっ


――



変な夢を見てしまった・・・
俺が近藤さんに告白する夢。
返事を聞く前に目が覚めた。
でも夢から覚めても隣りで近藤さんが寝てたからびびった。
一瞬夢が現実で一緒に寝てしまったのかと・・・。
ちょっと寂しい気もしたけど、そのまま俺はもう一度眠りについた。


――




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