「(目、腫れてる・・・)」

昨日泣き続けて朝起きると両目が腫れあがっていた。
隈も酷い。
こんな顔で仕事に行かなければならないのは憂鬱すぎる。
それに、隣りの席は高杉な訳で。
あぁ、もう最悪。



***

「おはようございます・・」
「おう、おはよ・・ってなんだどうしたその死んだような顔!大丈夫か!?」
「はは・・大丈夫です・・」

課長が心配そうに俺を見る。
やっぱり酷い顔してんだなぁ俺。
心の中で苦笑する。
席に着こうとすると、高杉と目が合う。
一瞬体を後ろに引いてしまったが、力を振り絞る。

「おはよう・・・」
「・・・・・・あぁ」

ぎこちない挨拶。
それは他の社員も気付いたみたいで皆顔を合わせて首を傾げていた。



お昼休み。
高杉は何も言わず出て行った。
やっぱり、もう一緒にいることは出来ないのだろうか。
まぁ、当たり前か・・・。

「あれ?今日は高杉と一緒じゃねぇの?」
「えぇ、まぁ・・」
「出勤したときからおかしかったよなお前ら。喧嘩でもしたのか?」
「いえ、そういう訳じゃないんですけど・・・」

俺が告白して振られたなんて言えるわけない。
同僚に声をかけられたがなんとか誤魔化す。
外に出ることは止め、この場で昼食を取る。
最初に戻っただけじゃないか。
けど、なぜだろう。食べ物が喉を通らない。
そして、涙も止まらない。

「・・・うっ・・・」
「土方!?どうした!?!?」

近くにいた同僚が俺の異変に気付いて近づく。
情けない。失恋して会社でも泣いて、同僚に迷惑をかけてしまってる。

「だいじょうぶ・・・です・・・」
「そんな訳無いだろ!・・・あ、高杉!」

高杉という言葉を聞いて俺の体はビクンと跳ねる。

「土方の様子がおかしいんだがなんでか分からないか?」

食事を終えて戻ってきたのだろう高杉が、入り口の前で俺と同僚を驚いた表情で見ていた。
高杉の顔を直視出来なくて、顔を伏せる。

「・・・・知らない」

そう言って高杉はまたどこかへ言ってしまった。

「うっ・・おえ・・・」
「ひ、土方!?まじで大丈夫か!?」


『知らない』

苦しい。気持ち悪い。吐きそう。
高杉の言葉が、胸に突き刺さる。
俺には関係ないと、完全に拒絶された言葉。
結局俺は、同僚が上司に伝えて早退させて貰う事になった。





家に着きベットに寝転ぶ。
仕事に影響が出るなんて、最悪だ。
このままだと皆に迷惑がかかる。
いつまでもうじうじしてられない。
沢山泣いたら少しすっきりした。
俺は両手で両頬をバチンと思い切り叩く。
気合入れろ、俺。


『別に。男が好きだろうが女が好きだろうがそいつの勝手だろ』


あの日、高杉に言われた言葉。
そうだよ。俺の勝手だ。
高杉が俺のこと嫌いでも、俺は高杉のことが好きだ。それで、いいじゃないか。






―次の日―

「おはよう!」
「・・・お、はよ・・」

俺は元気良く高杉に挨拶した。
かなり驚いた様子だったが、きちんと挨拶してくれた。


昼休み、俺は隣りの高杉に声をかける。

「高杉、一緒に飯食いに行かねぇか・・・?」
「・・・・!」

真剣に、俺は高杉を誘った。
またも高杉は心底驚いた顔をし、そして


「・・・良いけど」



***


「なんで、誘った?」

いつものように公園のベンチに座り食事する。
高杉は俺の顔を見てそう問うた。

「・・・やっぱり俺は、お前のことが好きだ。だから高杉が嫌じゃなければ一緒にいたいって思った。ただ、それだけだ」
「・・・・・」

高杉は何も言わなかった。
食事も終わり、二人して煙草を吸う。


「初めてだよな」
「?」

急に話し始めた高杉に少し驚きながら高杉の方を見る。

「お前から誘ったの」
「あ・・・」

そういえばそうだったかもしれない。
いつも高杉から誘ってくれてた気がする。

「声、震えてたぜ」
「・・・!」

やっぱり、震えてたんだ。
本当は挨拶したときも、誘った時も、返事がないんじゃないかって断られるんじゃないかってドキドキして不安で。

「すげぇよ、お前は」
「え?」

そう言って高杉は笑った。
あぁ、ようやく見れた、高杉の笑顔。


「土方」
「ん?」

高杉は煙草の煙を吸い、俺の顔に吹き付けた。

「げほっ・・・!なにす―」













「いつか俺を惚れさせてみろや」





小悪魔のように笑う高杉。
心臓が大きく高鳴っていくのが分かった。




「・・・望むところだ」








END
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あとがき

色々と説明不足な気もしますが、高杉は土方と一緒にいて楽しいけど恋愛感情はなくて、でもだんだんと好きになっていってくれたら良いな・・・!
今回は高杉がノンケっていういつもと違う感じで書いてみました。
あまり・・ってか全然?書いたことなかったから新鮮だった*





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