ザー・・・ザー・・・


「雨、か・・・」



7月7日、大雨。


「こりゃひでぇ雨だなぁ・・・」

近藤が屯所の縁側から外を眺めながら言う。
それを隣りで土方は聞いていた。

「そう、だな・・・」




***

「なぁ、7月7日は何の日か知ってるか?」
「七夕だろ。それぐらい知っている」

高杉と土方は何処かの宿泊所で寄り添いながら話していた。
敵同士の二人。しかしいつしか芽生えた恋。
誰にも見つからないように隠れて二人は会っていた。
しかしそんなに頻繁に会えるようなものではない。
会えたとしても、月に一度あるかないか。

「彦星と織姫は7月7日だけ会うことを許された。が、その日雨が降ると天の川の水かさが増し、渡ることが出来ない」
「・・・今日は沢山喋るんだな」
「なぁ、かけをしようぜ?7月7日、俺達は会えるか会えないか―」


***




ザー・・・ザー・・・



高杉は会えると賭け、土方は会えないと賭けた。
土方は空を見上げる。


―この賭けは俺の勝ちだな。


大雨。
7月7日に降る雨は催涙雨と呼ばれ、会うことの出来ない彦星と織姫が流す涙だと言われている。
この話は高杉から聞くまで知らなかった。
あいつは本当にこういう話が好きだなと、ふっと笑いながら土方は思う。

「近藤さん、俺は部屋に戻って書類片付けとく」
「おぉ、いつもすまんな、よろしく」



ザー・・・ザー・・・



いつもより雨の音が気になり集中が出来ない。
始めたばかりだというのに、灰皿には沢山の吸殻。


―腹立つ・・・


土方は吸っていた煙草を灰皿に押し付け、頭を抱える。
自分に、腹が立っていた。
本当は晴れて欲しいと思っていた自分に。
そして、会えないと思うと急に寂しくなってしまった自分に腹が立って仕方が無かった。

「たかすぎ・・・」

名前を呼んで、後悔した。
愛しい名前を呼ぶと、もっともっと会いたくなってしまう。
会いたい。会って、高杉に触れて、重なりたい。

「呼んだか?」

いきなり聞き覚えのある声が聞こえ勢い良く振り向く。
そこには、会いたかった人物が。

「なん・・・で・・・」

頭がついていかず土方は座ったまま固まる。
高杉は雨でびしょびしょになった体のままずかずかと土方に近づき抱きしめた。

「俺の勝ちだな」
「意味・・・わかんねぇ・・・」

ここまでどうやって来ただとか、ここをどこだと思ってるんだとか言いたいことは沢山あった。
でも土方にそんな余裕はなくて。

「雨降ったんだから俺の勝ちだろ・・・」
「ああん?雨が降ったからって土方が勝つとは限らねぇだろ」
「・・・っ」

土方は俯きそのまま高杉の胸板に頭をひっ付ける。
嬉しかった。本当に嬉しかった。
こんなにびしょびしょになって必死になって自分のところまで来てくれたんだろうか。そう思うと急に視界が滲み出す。



ザー・・・ザー・・・



「土方?泣いてんのか?」
「泣いてねぇっ・・・」
「泣きてぇのは織姫と彦星だろ?・・・あ、じゃぁ土方は織姫か?」
「意味分かんねぇよ・・!姫とか言うな気持ち悪い!」

叫んだと同時に高杉は土方の顎を掴み自分の顔へと向かせる。

「ほら、やっぱり泣いてる」
「・・・・うるせぇ」

近づく唇と唇。
高杉が舌で土方の唇に触れると、それを合図に土方の口が開く。
そのまま舌を進入させ、土方の舌と絡ませあう。

「ふ・・ん・・」
「ひじかた・・・俺の、勝ちだよな?」

唇を離すとニヤリとした高杉が土方に問う。
土方は目を伏せながら自分から高杉の唇に触れた。



―俺の負けだよ、バーカ。





ザー・・・ザー・・・


ザー・・・



7月7日、雨は止むことなく降り続けた。






END
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あとがき
七夕は高土にもってこいなネタだと思います!!


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