「ふ・・んぁ・・高杉・・たかすぎっ・・・!」
「はっ・・ひじかた・・も、出すぞ・・」
「ん・・」


屋上に煙草を吸いに行けば、奴はいる。
そしたら確実に襲われる訳で。
・・・・しかしこれらは言い訳にしかならない訳で。
屋上に行く足が、自然と速く。屋上へと近づくにつれ、鼓動も早く。
土方は気付いていた、本当は高杉と体を重ねたいと。
いけない事とは分かっている。けれど体は止めてはくれない。
拒んでいた体も、気付けば高杉の背中にがっしりとしがみついている。
今日は丁度保健室の先生が出張で不在。
その機会を逃すまいと早速保健室でセックス。
行為を終えたのにも関わらず、高杉は土方に抱きついたまま。

「・・離せ、重い・・」
「やだ。このまま寝そう・・」
「ばかっ服着替えろ!つか俺も着替えなきゃヤバイから!」

そう言うと高杉はブーブーと文句を言いながら土方から体を離す。

「もうすぐ授業が始まるから戻る」

土方は急いで着替え教室へと戻って行った。
その後姿を見ながら高杉は微笑むと、煙草を取り出し始めていた。





―放課後―


「雨かよ・・・・」

昼間では晴天だったはずの天気が、今ではザーザー降りの雨。
傘なんて持ってきているわけもなく下駄箱で立ち尽くす。

「土方ァ、今帰りか?」

後ろから聞こえてきた聞き覚えのある声。

「まぁな」

振り向くことなくそう言うと、ぬっと後ろからビニール傘が現われる。

「!?」
「入れよ、一緒に帰ろうぜ」

そう言って無邪気に笑う高杉を断る気にもなれず、土方は高杉の傘に入れてもらうことにした。

「つかよく今日傘持ってきたな」
「ん?これ俺のじゃねぇよ」
「は・・?」
「傘置き場から拾った」

それ、拾ったって、盗んだの間違いだろう・・・!
そう突っ込みをいれたくなった土方だったが、全く悪気のない言動、表情に呆れ突っ込む気が失せてしまった。
他愛もない話をしながら帰っていると、分かれ道にたどり着く。

「あ、俺家こっちだから」
「家どこだ?送ってくって」
「え、いや、いいよ」
「なんで?遠慮すんなって」

家まで案内するのには勇気のいることだった。
今銀八と同居中なのがバレてしまう。
しかし、高杉が銀八の家を知っているとは限らない。
マンションだし、入り口の前までならバレないかもしれない。
高杉ともう少し一緒にいたいのもあって、土方は少し躊躇したが、結局家まで送ってもらうことにした。

「ここ俺んち。ありがとな」
「・・・おう。お前このマンションなのか?」
「あぁ」
「何階に住んでるんだ?」
「5階だけど・・・」
「・・・・もしかして、501?」
「え・・・・」

どうして分かったのだろう。確かに高杉の言うとおり501に住んでいる。
高杉の様子が少しおかしい。もしかして、銀八の家を知っていたのだろうか。
いや、もしかしてではない。確実に知っている雰囲気だ。
土方の背中からひ汗が流れたのを感じた。

「お前の彼氏ってもしかして・・・・」
「・・・うん」
「まじかよ・・・」

沈黙。

複雑な表情をしながら俯く高杉に違和感を覚えた。

―普通こんな表情するものなのか・・・?

付き合っていたのが先生だった。ただそれだけだ。なのに、誰かに怒りを向けているような表情はなんなのだろう。
自分に向けてではないことはすぐに分かった。
じゃぁ誰に?

―銀八と何かあったのかな・・・・。

やはり一緒に帰るべきではなかったかもしれない。
後悔していると、高杉は顔を上げ土方を見る。

「じゃぁ・・俺帰るわ」
「うん、ありがとな・・・」

気まずいまま別れる。
土方には嫌な予感しかしなかった。
そしてその予感は現実となる―。



***

「土方さん、ちょっと話があるんですが」
「ん、なんだ?」
「ここではちょっと・・・」

放課後、沖田が土方に話しかける。
普通の雰囲気ではない感じに土方は頷き、人気の無い教室へ入ることにした。

「どうしたんだ?」

空き教室へ入ると、沖田は携帯をいじりだし、俺の方へその携帯を見せた。

「これ、どういうことですかい?」
「なっ・・・・!」

携帯の画面には屋上で土方と高杉が性行為をしている真っ最中の写真がある。

「なんで・・・」
「”浮気しちゃだめでしょう”。あんた、”銀八と付き合ってるのに”」
「!!!」

どうして。土方は銀八と付き合っているということは誰にも口にしていない。
銀八も言うと面倒なことになるのは自分のはずだ。言うわけがない。それなのに、どうして。
土方は全身が震えた。
沖田はニヤリと笑うと学ランの内ポケットから茶封筒を取り出す。
そしてその中身を笑いながら上へ投げるようにぶちまけた。
ひらひらと何十枚もの”写真"が土方の頭上から落ちてくる。
土方はその一枚を拾いその写真に写っている人物を見て驚愕した。
他の写真を見る。やはり必ず写っている人物。
その人物とは土方十四郎。つまり自分自身が必ず写っているのだ。
学校の日常、屋上での出来事、帰ってからの外出・・・この写真だけで土方十四郎という男がどのような人物なのか分かってしまうぐらい沢山の写真が散らばっている。

「なんで・・・これ、家じゃねぇか・・・!」

土方の入浴している写真や着替えの写真、そして銀八と土方がベットでセックスしている写真まで。
どうして家の中まで撮られているのだろう。
それよりも何故沖田がこのような行動をとっているのか分からなかった。

「なんで・・・俺に、何か恨みでもあんのかよ・・・」
「恨み?まぁそれも間違っちゃいねぇですが」

ゆっくりと土方に近づく。
土方の足はガクガクと震え、今にも崩れてしまいそうだ。
沖田はガッと力強く土方を抱きしめる。

「!?」
「俺は土方さんを愛してまさぁ。世界中の誰よりも。なのに」
「ぐ・・!」

沖田は土方の背中を爪で思い切り深く傷をつける。

「銀八や高杉が俺の邪魔をしやがった・・・。許せない・・・!土方さんは俺のものだ!」

沖田はずっと、土方を愛して愛して愛していた。
想いは誰にも言わず、自分の心に秘めたまま。
ただ土方だけを見つめる。ずっと、ずっと。
それはだんだんと歪んだ愛へ、ストーカーへと変わっていって。
だから土方が体を売っていたことは前々から知っていた。
そしてそこに現われたのが銀八。
憎かった。経済が安定している大人。
自分では土方を経済面で助けることは出来ない。だから、我慢した。
でもそれが崩れたのは高杉の件。
高杉は土方と出会ってまだ数日だというのにいわゆるセフレになっている。
自分が高杉よりずっと前から土方のことを愛していたのに。

「総悟・・痛い・・離せ・・」
「・・・この写真、銀八に見せますがいいですか?」
「・・っ!」

沖田は土方から離れると、一枚の写真を手に取り土方に見せる。
そこには高杉とセックスしている土方の写真。
意図していることは分かる。

「何が、目的だ・・・」
「流石土方さん、察しがいい」
「!?」

沖田は土方にかぶり付くようにキスをする。

「俺の言うことはなんでも聞け土方」

―やはり、そうなるのか。

分かってはいたがいざとなると怖くてしかたがない。
これから何が起こってしまうのか。


「じゃぁズボン脱いでくだせぇ」


ごくりと唾を飲み込み、土方はゆっくりとズボンのチャックに手をかけた。



Continue.......


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