―ヤニ吸いてぇな・・・

銀八との同居が始まって一ヶ月。
自分を売るのはもうやめた。彼に傷をおわせた男子達はというと・・・・




―またか。

教室へ来ると土方の机はまたも暴言が殴り書きしてある。
今度は黒いマジックだった。
土方は何も言わず教室の雑巾を水道で濡らしゴシゴシと落書きを消していく。
背中からはクスクスと笑う声が聞こえる。

「土方くんどうした?」

ふいに後ろから聞こえてくる声に驚き振り向く。
するとそこにはいつもならチャイムが鳴ってから来るはずの銀八が立っていた。
土方の背中から机を覗き込み事の状況を理解すると、ぽんぽんと軽く土方の頭を叩き、銀八も雑巾を濡らし一緒に消し始める。
その行動に驚いたのは土方だけではなく教室にいた生徒達。
文句いわず無言で消す二人に”もしかすると売春など嘘なのではないか”という疑問が浮かび上がる。

「なぁ、土方の噂って嘘なんじゃねぇの?」「でも見た奴いるって」「人違いとかあるかもよ」「多分人違いだよ」

そんな言葉が行きかう。
そして生徒達が見つめる先には落書きをした犯人に視線が集まる。

「な、なんだよ・・・・」

疑いの目で見られる視線に堪えれなくなった男は教室から出て行った。
そして、その後土方の机に落書きされることは無くなった。





―銀八は俺のしてたこと先生達に言わないでくれてるし、これ以上迷惑かけたくないけど、
―ヤニ、吸いてぇなぁ・・・
―屋上ならバレねぇかな


元々ヘビースモーカーな土方。
一人暮らししてた時はよく吸っていたし、銀八の家で吸わしてくれるのだが、たまに学校でも無性に吸いたくなる。
しかし学校にバレると銀八が悲しむ。そんな姿は見たくない。
それでも依存というものは怖く、吸いたい欲がどんどんと増幅していく。
我慢の限界に達した土方は授業が始まる直前だというのに屋上へと足を運んだ。


―カギかかってない。ラッキー。

ギイイと古びた音が誰も使っていないことを表していた。
適当な場所に座ると煙草を取り出し火をつけ、吸う。
そして煙を吐き出す。

「うめぇ」

至福の時間。
あと1本吸ったら戻ろう。そう思い2本目の煙草を取り出し火を付けた瞬間、扉の開く音がした。

「!?」

口から急いで取り出し消そうとしたが間に合わず。誰かに見られてしまった。

―ヤバイ、退学かも

先生だとばかり思っていた土方だったが、服装が学ランなことに気付く。
上を見上げ顔をみると、そこには見たこともない学生が同じようにこちらを見ていた。

「誰・・・・?」
「いや、それこっちの台詞なんだけど」

そう言ったのは目つきの悪い上に片目だけしか見えておらず、しかも眼帯までしていてヤンキーのような学生。

「ここ、俺の喫煙所なんだけどさ」
「俺のってここ屋上だろ・・・」

先生じゃなかったことに安心し煙草を咥えなおす。

「・・・・・お前名前は?」
「土方」
「ふーん、俺は高杉。なぁライター貸してくんね?忘れてさ。そしたら俺の喫煙所共有してもいいぜ」

さも屋上が自分のものだとでもいうように話す高杉という男に呆れながらもライターを手渡した。

―・・・ん?ていうか、高杉・・・?

どこかで聞いたことある名前に記憶を探り出す。

「・・・もしかして高杉って3−Zの高杉?」
「おうよ、一度も顔出したことないがな」
「同じクラスだ」
「まじでか」

体調不良かなにかで学校に来てないのかと思っていたが、どうやらただの不良らしい。
同じクラスという意外な共通点に二人は驚きを隠せなかった。

「じゃぁ同じクラスのヤニ厨同士仲良くやろうぜ☆」

確実に語尾に星マークがついたであろう言葉に寒気さを感じながら、土方には喫煙仲間が出来たのだった。


***


高杉という喫煙仲間ができて数日が経つ。
あの日から土方は毎日のように屋上へ煙草を吸いに行くようになった。
あまり会話がはずむ訳でもなかったが、会話がなくても気まずくない、むしろ落ち着く。
いつしか高杉の隣りは居心地のいい場所になっていた。

「お前さ、体売ってたのか?」
「えっ・・」

唐突に、そして一番聞かれたくなかった質問をされる。
やはりそういう話は教室に現われない高杉でも耳に入るようだ。
「売っていた」と過去形になっているということは、今はしていないということもちゃんと噂でまわっているらしい。
高杉の顔を見ると、土方の方には顔を向けず、明後日の方を見ながら土方の答えを待っている。
折角親しくなれたと思っていたが、自分のしてしまったことによって、また友達が減ってしまう。
しかし、過去の自分をどれだけ恨んでも、今の状況から逃れることは出来ない。

「うん・・・」

素直に応えると、「ふーん」と言いながら高杉は煙草の火を消し、
そして土方の方に向き直ると、土方の加えている煙草も取り去り、床に押し倒す。

「ちょ・・!?」
「正直嬉しかったぜ。お前も”そっち側”だったってことに」

そう言うと高杉は土方の唇にキスをする。

「んむ・・っ?!」

目を見開き驚く土方をよそに、高杉は舌を土方の咥内へ入れ、中を犯す。

「ふ・・・ん・・・」

あまりの上手さに土方は自ら舌を絡ませあう。

「ふあ・・・」

高杉が顔を離すと、土方の口からはだらしなく涎が垂れていた。

「うわ・・エロ・・!」

顔も赤くなって潤んだ瞳で見つめてくる土方に思わず声に出る。

「・・まぁなんつぅか俺も”そっち側”だ。別に女も嫌いな訳じゃねぇがどうもネチネチしててあまり好かん。お前みてぇなのがもの凄くタイプなんだけど」

高杉は土方のズボンを脱がしにかかる。

「ちょ、ちょっと、待って、俺、付き合ってる奴がいて・・・」
「・・・・・」

我に返ると拒みながら必死に叫んだ。銀八とは言えないが。
付き合ってる奴がいるという言葉に一瞬高杉は固まったが、それは本当に一瞬。直ぐに手を動かし始める。

「た、たかすぎ・・!」
「だから?」
「へ?」
「だからなんなのさ」

本当に何故拒否している理由が分からないというようにきょとんとしている高杉。
そんな高杉をみて土方は頭の中が混乱する。

「だから・・・って、俺、付き合ってる人がいるから、こんなこと出来ないよ・・・」
「土方は俺とこういうことするの嫌か?気持ち悪いか?」
「それは・・・・・・・・・・・・・嫌、じゃない・・」

否定は出来なかった。急にキスされたときも、気持ちよくて、ふわふわして、嫌だとは全く思わない。

「だったらいいじゃん」

ニカッと笑い土方の一物を取り出すと、ゆっくりと扱く。

「ふ・・・あ・・・・やっ・・・」
「キスだけで勃ってたのか。可愛い」

土方の一物がぱんぱんになってくると、高杉は自分の自身も取り出し、土方の両脚を開かせる。

「ここ、学校・・・!」
「誰もこねぇって」

高杉はゆっくりと一物を土方の中へ入れていく。

「ひぁっ!んあぁ・・・」

自分の中に高杉のモノが入っている。思いもしない光景だったが、そんなことを考える暇なんてなかった。
今はただ気持ちよくなることだけを考えてしまう。
高杉のが全て入ると、一心不乱に打ち付ける。

「やぁあ!そんな、初めから、激しく、しない・・で・・ぁ・・!」
「無理、想像以上にヤバイわ」

そう言うと高杉は自分の欲を吐き出すまで何度も何度も激しく打ち付けた。









―これって、浮気、だよね・・・

屋上で行為を終えてしまった為精液を拭くものがなく、二人仲良くトイレに向かう。
トイレットペーパーで、自身を拭きながらふと疑問が浮かんだ。
「だったらいいじゃん」と言われそのまま流れに逆らえなかった。抵抗を止めてしまった。
これは確実に浮気だろう。罪悪感が押し寄せる。

「またヤろうぜ。じゃぁな」

そう言い残し去って行く高杉。
またなんてもう絶対しない。・・・・絶対しない・・・はずだった。



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