「……民衆には確かな形で示さないと今更納得はしない」
そう言って赤の騎士は手にした剣を王の首へと振り下ろしました。
***
「……んで、なんでこんな事になってしまったの……」
目の前には赤い絨毯の上に横たわる王の姿。
もう声を聞くことも、体温を感じることも出来ません。笑顔は随分前から見なくなっていましたがそれを模る顔すら今の彼には残っていないのです。
『幸せにしてあげるから』
以前、まだ私があの暗い部屋にいる頃から彼は太陽のような笑顔とともに私に何度もそう言いました。幸せ、――私にとってそれはあの狭くて暗い場所から出られた事でも、外の世界を見れた事でもありません。
独りでいることが淋しくて淋しくて辛かった私にはそばに居てくれる彼の存在が、ただそれだけの事が一番の幸せだったのです。
「……レンの……嘘つき」
あなたがいなくなったこの世界で幸せになんかなれるわけがないのに。