03


 
 
夜更けのネアポリスの海岸線にある、タコスが有名なとあるバルの中で、目鼻立ちの整った男は目の前の美女に、自分の身に起きた話を面白おかしく身振り手振り交えながら披露していた。
 
「でよ?そん時に俺が言ったんだよ、そんなんだからお前は童貞だって!」
 
「あっはは、ほんともう、やだミスタ、最高!」
 
「だろう?」

 その日、ジョルノの誘いを断ったなまえは友人であるミスタとの食事を楽しんでいた。
ポップな装飾の店内によく似合う明るい色合いの服装のミスタと、真っ赤なルージュをアクセントに、ブラックワンピースを着こなすなまえは、周囲から見れば不思議な組み合わせに見えるが、実は二人は大変仲が良いのだ。
 
「あー、もう本当にミスタって最高ね、なんでガールフレンドがいないか不思議でたまらないわ」
 
「お?今更俺がイイ男だって気づいたか?だが言っておく、余計なお世話だ」
 
笑い過ぎて目尻に溜まった涙を人差し指で拭うなまえを見て、ミスタは嬉しそうに笑う。
 
「お前はな〜、そういう顔のほうが似合うのにな〜。なんでいっつも澄ました顔すんだか。」
 
もったいねぇ女、とこぼしながらビールに口づけるミスタに応えるようになまえは先ほどの笑顔の余韻を残した顔から少し緩んだ苦笑いを作り出した。
ミスタのこういう率直で、ぶっきらぼうで、それでいて面倒見のいいところが、なまえが男友達としてミスタを好む理由の一つだ。
 
元来、ミスタもなまえも男女間の友情は成立しないと思うタイプだった。
それは、経験や実績を含めて二人が異性に不自由しない顔立ちであることも理由の一つだが、それ以上にお互いに遊び人の素質があり、デートに行ってお酒を飲もうものなら、すぐさま一夜限りの為に相手を口説いてしまう、軽さが原因であった。
 
だからこそ2人が初めてデートをした時、当然ベットインをすると思ってい、そのつもりで食事をした。
 
だが予想を反し、2人は情事に更けることはただの一度もなかった。
 
何故か。明確な理由を2人は考えた事はないが、強いて言えば、互いに性格や感性があまりにも似ていて相手に対する性欲が萎えたのだ。
感性、思考、話せば話すほど自分に似た人間は、情事だけの関係で終わらせることはもったいない、だが、自分の面倒くささを自覚している2人はカップルとして付き合おうと思うこととなく、単純に男女の関係には向かなかったことが理由らしい理由と言える。

だが、先程述べた通り性格の似た2人は、友人としては最高の組み合わせである。
かくして、2人は不思議な友情を育むこととなったのだった。
 
「んで?最近はどーなのよ。片思いのほうは」
 
「そんなの見ててお分かりでしょう?」
 
「めんどくせーな。誘えばいーだろ、デートに」
 
「…誘えないのよ、チャンスが無くて…」
 
「チャンスぅ?お前、ジョルノのアシスタントなんだからいくらでもあるじゃぁねぇか。チャンス。」
 
「確かにあるけど、仕事の話ばかりだし、ボスがいる中で仕事に私情持ち込むほど馬鹿じゃないのよ、私。」
 
「あー、ジョルノな。」
 
そう、ジョルノに限った話ではないのだが、我らがボスがなまえを口説いているのはパッショーネの中ではもはや常識に近い。
だからこそ、彼女の意中の相手であるボスに忠実で真面目な部下、ブローノ・ブチャラティはボスに気を使い彼女にビジネスでしか話しかけないのだと、ミスタは思っている。
だとしたら、彼女から誘えばいいのではないか。
そう思いモーションをかけるように進めるミスタだが、なぜか本命には引っ込み思案ななまえはそれが出来ない。
そして、そんな彼女の解決しない相談をミスタ仕方なく聞き続けているのであった。
 
「だって、私のボスよ、ジョルノは。上司の前で誘うだなんて、」
 
「いや、俺なんか両方ボスだけどな。ブチャラティが好きだって言やぁいいだろ」
 
「無理よ、言えないわ」
 
そんな風に思うのであればジョルノに限らず、好きな男以外に気のある素振りなんて見せなければいいだろう、と思うミスタだが、なまえ本人はそんな立ち振る舞いをしている自覚は無いことを知っているし、無意識で愛想を振りまく彼女の性格は治らないと諦めている。

そんな彼女に今日もまた、相談という名の愚痴で朝まで付き合わされるのを覚悟して、ミスタジョッキに残ったビールを飲みほした。
 
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